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第一章 始まり
11話 赤ずきんちゃん
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「走れ、紫音!」
「うん!」
宿泊館の方へ走る瑠斗君を追いかけるように走り出す。
ふと、瑠斗君が飛び出してきた部屋の方をチラリと見る。
すると……。
⸺⸺大きな斧を抱えて口の周りに血をいっぱい付けた赤ずきんちゃんが、満面の笑みを浮かべながらものすごい勢いでこちらへと走ってきていた。
「っ!?」
私は、あまりの恐怖にその場に腰を抜かした。
「紫音!」
陽翔さんがこっちに駆けてくる。
「陽翔さ……動けな……助け……」
あぁ、私死ぬんだ。あの斧で身体を真っ二つに切り裂かれる。大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちる。
赤ずきんちゃんが目の前まで来て斧を振りかざした。
⸺⸺その瞬間、身体がふわりと浮き上がり、赤ずきんちゃんから遠ざかっていく。
「っ! 陽翔さん!」
陽翔さんは私を拾い上げて全力疾走していた。
抱きかかえられたまま顔を上げると、獲物を仕留め損ねた赤ずきんちゃんがケタケタと笑いながらズンズン追いかけてくる。
「いやぁぁぁぁっ!」
叫んでいないと意識が飛んでしまいそうで、私は泣きながら叫び続ける。どんな絶叫アトラクションでも出したことのないような叫び声。
陽翔さんは私を抱えているにも関わらず、瑠斗君を抜かして宿泊館への連絡通路へ滑り込んだ。自然と床に転げ落ちる私。
助かった……? いや、瑠斗君がまだ……!
「瑠斗! 急げ!」
陽翔さんは引き返して瑠斗君に手を伸ばす。
「陽翔さんっ、うわっ!」
瑠斗君は連絡通路との境で手を取る直前で躓き、前に倒れ込んでいく。
「瑠斗君、後ろ!」
赤ずきんちゃんが斧を振りかざす。ダメだ、瑠斗君が殺られる……!
そう思ったが、またしても陽翔さんがギリギリで瑠斗君の手を掴み引き込んで、赤ずきんちゃんの斧は2人の頭上をブンッと空振った。
陽翔さんがすぐに瑠斗君を引きずって本館から距離を取る。
「アハハハハッ……!」
赤ずきんちゃんは連絡通路のギリギリ手前で立ち止まり、余裕の笑みで私たちを嘲笑った。
そして、急に興味がなくなったかのように来た道を引き返していく。
⸺⸺笑い声と共に、赤ずきんちゃんの姿は闇の中へと消えていった。
「はぁぁぁっ……!」
皆で一斉にその場に脱力する。
「生きてる……私、生きてるよぅ……!」
「僕もです。正直彼女と目が合った瞬間にもう死んだと思いました……」
私と瑠斗君はそう言うと陽翔さんへと視線を送る。
「……っ」
陽翔さんは肩ではぁ、はぁっと息をして顔からは汗が滴り、まだ呼吸が整わずしゃべれないから手で待ての合図をする。
しかし、私も瑠斗君も「陽翔さん!」と彼の名を呼びそのまま2人で彼に抱きついた。
「陽翔さんありがとう!」
「ありがとうございました!」
「分かっ……はぁ、ちょ、待てって……言ってるだろ……!?」
もう私たちをどうにかする気力も残ってない陽翔さんは、ズルズルと私たちに押し倒されそのまま下敷きになった。
「うん!」
宿泊館の方へ走る瑠斗君を追いかけるように走り出す。
ふと、瑠斗君が飛び出してきた部屋の方をチラリと見る。
すると……。
⸺⸺大きな斧を抱えて口の周りに血をいっぱい付けた赤ずきんちゃんが、満面の笑みを浮かべながらものすごい勢いでこちらへと走ってきていた。
「っ!?」
私は、あまりの恐怖にその場に腰を抜かした。
「紫音!」
陽翔さんがこっちに駆けてくる。
「陽翔さ……動けな……助け……」
あぁ、私死ぬんだ。あの斧で身体を真っ二つに切り裂かれる。大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちる。
赤ずきんちゃんが目の前まで来て斧を振りかざした。
⸺⸺その瞬間、身体がふわりと浮き上がり、赤ずきんちゃんから遠ざかっていく。
「っ! 陽翔さん!」
陽翔さんは私を拾い上げて全力疾走していた。
抱きかかえられたまま顔を上げると、獲物を仕留め損ねた赤ずきんちゃんがケタケタと笑いながらズンズン追いかけてくる。
「いやぁぁぁぁっ!」
叫んでいないと意識が飛んでしまいそうで、私は泣きながら叫び続ける。どんな絶叫アトラクションでも出したことのないような叫び声。
陽翔さんは私を抱えているにも関わらず、瑠斗君を抜かして宿泊館への連絡通路へ滑り込んだ。自然と床に転げ落ちる私。
助かった……? いや、瑠斗君がまだ……!
「瑠斗! 急げ!」
陽翔さんは引き返して瑠斗君に手を伸ばす。
「陽翔さんっ、うわっ!」
瑠斗君は連絡通路との境で手を取る直前で躓き、前に倒れ込んでいく。
「瑠斗君、後ろ!」
赤ずきんちゃんが斧を振りかざす。ダメだ、瑠斗君が殺られる……!
そう思ったが、またしても陽翔さんがギリギリで瑠斗君の手を掴み引き込んで、赤ずきんちゃんの斧は2人の頭上をブンッと空振った。
陽翔さんがすぐに瑠斗君を引きずって本館から距離を取る。
「アハハハハッ……!」
赤ずきんちゃんは連絡通路のギリギリ手前で立ち止まり、余裕の笑みで私たちを嘲笑った。
そして、急に興味がなくなったかのように来た道を引き返していく。
⸺⸺笑い声と共に、赤ずきんちゃんの姿は闇の中へと消えていった。
「はぁぁぁっ……!」
皆で一斉にその場に脱力する。
「生きてる……私、生きてるよぅ……!」
「僕もです。正直彼女と目が合った瞬間にもう死んだと思いました……」
私と瑠斗君はそう言うと陽翔さんへと視線を送る。
「……っ」
陽翔さんは肩ではぁ、はぁっと息をして顔からは汗が滴り、まだ呼吸が整わずしゃべれないから手で待ての合図をする。
しかし、私も瑠斗君も「陽翔さん!」と彼の名を呼びそのまま2人で彼に抱きついた。
「陽翔さんありがとう!」
「ありがとうございました!」
「分かっ……はぁ、ちょ、待てって……言ってるだろ……!?」
もう私たちをどうにかする気力も残ってない陽翔さんは、ズルズルと私たちに押し倒されそのまま下敷きになった。
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