王妃候補は、留守番中

里中一叶

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殿下が行方不明になって10日。王宮は、特に目新しい連絡がないためか殿下はもう…という空気が流れている。

陛下から御前会議に殿下の婚約者として参加するように言われ、会議室に向かった。
部屋に入ると丸くなった会議テーブルから外れて椅子がひとつ置いてある。たぶん私の席だろう。

侍従の案内で予想通りの席に座って待っていると出席者である高位貴族の方々が入ってきた。私に気付くと痛ましそうな顔をするおとうさまと同じ様な表情の方が数人。ティーダ公爵は、微妙な感じ。
しばらくして陛下が入室し会議が始まる。

「陛下。今日の議題ですが、王太子殿下のことについてになります。」

議長を務めているおとうさまが切り出した。


「皆もすでに知っていると思うが、我が子フレデリックが直轄領内の災害対策で現地に向かう途中、土砂崩れに巻き込まれ行方不明になった。現在、捜索隊が編成されているが今のところめぼしい情報はない。」

陛下の説明に皆、下を向いておそらく立ち回り方を考えているようだ。

司法長官のサンド侯爵が手を挙げた。

「王太子殿下は未婚で子もいない。陛下には殿下以外に男子はいない。男子継承の我が国で、このまま王位継承者がいない状態はどうでしょうか。」

他の方々も口々に話し始めた。

「王太子殿下が3年前に決めていたら、今頃御子もあっただろうが…」
「王位継承者は、誰がいる?」

ティーダ公爵が手を挙げて話し始めた。

「我が子ジョシュアが陛下の一番近い者になります。」
「確かに。王妹であるイザベラ様の子で、あのエルシィ様の夫でもあるな。」
「どうですか、陛下。ジョシュアを選定いただけますか。」

ティーダ公爵がそう聞くと陛下も考えている。

会議の中が殿下は帰らないから、次という空気に支配されかけた時、おとうさまが発言する。

「皆様、ジョシュアくんを選定するとして、殿下が見つかるまでの暫定ですか。それとも殿下は帰らない前提ですか。」

皆がハッとしたように陛下の方を見た。

「そうだな。宰相の言う通りだ。フレデリックを探すのが第一で、代理としてティーダ公爵子息ジョシュアを私の後継ということで良いか。」
「はっ。」

全員が胸に手を当ててお辞儀した。

会議が終わり、おとうさまが私の近くに来てくれた。

「セリーナ。大丈夫か?」
「はい。ジョシュア様が現場の指揮を取ってくれていますし、エルシィ様がいてくれます。」
「情報は何か来るのか?」
「まだ芳しくはありませんが。ジョシュア様とは隼を使って連絡を取れているので、最新情報が入ります。」
「噂の伝書隼か。あれが使えると速いだろうな。」
「多分、他の人は無理ですけれど。賢くて懐いている隼がいないとできませんね。」
「では、何かあれば連絡しなさい。無理はするな。」
「ありがとうございます。おとうさまもお身体にお気をつけて下さいね。」
「おそらく陛下は、セリーナを同席させることで、殿下が戻った時のために誰がどう行動したか、お前に見せておきたかったと思う。それを忘れるな。」
「はい。」

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