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幕間 アルヴィン

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***アルヴィンの回想***

私には、2歳下のかわいい妹がいる。生まれた時から家族みんなで大切にして来た。
しかし宰相を父に持つ公爵令嬢の妹は、当然然るべき相手に嫁ぎ次代に血を繋げる役目がある。

最初、グレンスティッドの王子アランとの婚約が成った。しかしこのアホは、エイミーの良さを全く理解せず、ある日突然熱を出して寝込んだ後、アランへの熱が冷めたエイミーが婚約解消を望んでくれたから、すぐに父上が動いてくれた。
うん、あんなアホとは縁を切るに限る。

しばらくして、母上の甥、私達の従兄弟キャンベル王国王子のアーノルドが名乗りを上げた。
あれは、私を兄と慕いエイミーにも優しい。まあエイミーも満更じゃないようだし、結婚まで手を出さなきゃ認めようかと考えていた。併せて私もアーノルドの側近として働くことになった。

ところがアホ王子は、アーノルドと婚約しているとは知らないとは言え、エイミーを手篭めにしようなんて暴挙に出やがった。
すぐさまアーノルドと乗り込み、なんとかエイミーを助けたが、アホの処理に手間取り、夜遅くに王都のギルフォード邸に戻るとアーノルドが、父上と話し合いをしているところだった。

「アルヴィン。あいつは?」
「国王陛下に引き渡し、とりあえず部屋に軟禁になった。エイミーの名誉の為に、あまり吹聴できないからな。ついでにぼこっておいたが。」
「ギルフォード公爵、エイミーはかなりショックを受けている。一応、今は落ち着いてやっとねむったが。私としては数日中にキャンベルに連れ帰って、早目に結婚式も行うつもりだ。アルヴィン、私は決めた。エイミーを守る為には、優しいだけじゃダメだから、切り捨てるものに温情をかけることはしない。そのつもりで私を支える気はあるか?」
「かしこまりました。我が君。」

私もある程度覚悟して、アーノルドいや、殿下を支えていかないといけない。

「まずはアホ王子とついでに邪魔な聖女の処遇だな。」
「聖女についてだが、アランを唆して私を自分のものにし、エイミーをアランにと考えていたらしい。ちょっとやり方が気に入らない。聖女は元々アランと関係があるようだから、2人で仲良く幽閉されてもらうか。ついでにギルフォード公爵家は、私がもらうことにしたからグレンスティッド王には、今回の詫び料とさせてもらう。」

スラスラと次から次へとグレンスティッドへの対応と自国への利益に対しての指示を出していく。
考えてみたら、アーノルドは学園なんかに通わなくても、キャンベルで学校をスキップで卒業して政務をある程度任されていたんだ。こいつが本気になったら、戦争しなくても他国を滅ぼせるかもしれないと恐ろしくなった。

アーノルドの弱点が、エイミーだと改めて思ったのは、その翌日だった。
少し遅く、シャツを引っ掛けただけの王子としては、だらしなすぎる格好で私の部屋に飛び込んで来たアーノルドは、前日以上に死にそうな顔をしていた。

「エイミーがいなくなった!」

誘拐かと慌てる私にアーノルドは、エイミーからの手紙を見せるとしゃがみ込んだ。
どこまでも大切にしてくれていたんだなとこんな時なのに、不謹慎にも嬉しくなった。

「絶対、見つけ出す。」

エイミー、アーノルドは本気だぞ。逃げられるとは思えないな。なんて考えてしまった。

ほとんど寝てないんじゃないか?
毎日、エイミーを探しているアーノルドは、中々の憔悴ぶりでシスコンだと自覚のある私より捜索に多くの、いや全ての時間を使っていた。
先の事を考えて、最低限の人数で探しているとは言え、貴族令嬢で世間知らずのはずなエイミーが、見つからない。まさか騙されて、どこかに連れて行かれてしまったのではないかと最悪の事態まで考えていたなか、やはり執念深いアーノルドがエイミーを見つけたと連絡が来た時には、なんかとても納得した。

ただ驚いたのは、庶民としてうちの領地で仕事をしていたというエイミーのたくましさだった。
そんなエイミーがよくアーノルドと帰ってきたかと思ったが、まさかの子ども発言。いつの間に手を出した?いや、あの日しかないよな。
アーノルドに詰め寄ろうとしたが、あいつはもう私の主だった。付いてくる弟じゃない、ひざまづく主君だ。

こうして、うちのかわいいエイミーは、キャンベル王国、次期国王の妃になり、後継の王子を産んで幸せに王宮で暮らしている

はずだった。
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