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事情が事情なのと私が一人暮らしで、うるさい家族がいない事もあり、婚約と同時にクリスティアは、ギルフォード公爵邸に来ることが決まった。

性急ではあるが、対面から10日後には、婚約証書に私とクリスティアがサインをし、彼女が未成年なので父親のターナー伯爵もサインをして、陛下…正確には貴族省に提出して婚約が成立した。
万が一、婚約破棄するときにはこの証書を返却されて破らなければ認められない。
結婚すればその証書と併せて保管されるだけだし、そんな心配はないと思うが。

私は浮かれているのか?
いい年なのに、まるで初恋の女の子と婚約できたと喜ぶ少年のようだ。
いや、初恋かもしれない。エイミー以外でこんなに自分から惹かれた存在はいなかったのだから。

書類を提出して、ターナー伯爵と別れて2人で自邸に戻った。

「アルヴィン様、今日からよろしくお願いいたします。」
「クリスティア、今日からここがあなたと家だ。気に入らない事があれば何でも言って欲しい。」
「私は、どうすれば良いのかわからないので、色々教えてください。」
「まずは私のことはアルと呼んで欲しい。」
「アル様?」
「ああ、ティアと呼んでも?」
「はい。」
「ティア、あなたの部屋は南側の隅に用意した。気に入ってくれたら嬉しい。」
「アル様、ありがとうございます。」

侍女に案内されて部屋に向かうクリスティアを見送り、息を吐くと後ろから声がした。

「随分にやけているな。ロリコン。」
「何を…」

振り返って文句を言おうとして、相手がアーノルドと気づいた。

「あ、アーノルド。なんでここに?」
「お前が10も下の女の子と婚約したって聞いたから、からかいに来た。最初はターナー伯爵の事情を聞いて同情して引き取ったのかと思ったが、随分メロメロみたいだな。」

アーノルドは、エイミーとの交際中、色々と邪魔した仕返しとばかりにやって来たらしい。

「まだ手を出すつもりはない。確かに私は彼女に惚れているが、今は幸せに過ごせるように保護したつもりだ。」
「そんな顔で言われても、説得力ないぞ。」
「そんな顔?」
「自覚ないのか。重症だな。」
「あんな天使いないぞ。」
「まあ、見た目はかわいいだろうが、内面はどうかな?」
「どういう意味だ?」
「私はエイミーを幼い頃から知っていたし、素のエイミーが好きになったから気にしていなかったが、普通の令嬢は結構猫を被っていただろう。もう8歳だ、それなりに自分を良く見せようとしてもおかしくはないだろう。」
「アーノルド、クリスティアを悪くいうな。」
「しっかりしろ!お前は将来、私の右腕になる男だ。妻にする女はが、国に利がなければ私はお前ごと切らなければならなくなる。ちゃんと見極めて、場合によってはあの子を切るか教育してくれ。」

アーノルドが、言いたいことだけ言って帰っていくのをただ見ていることしか出来なかった。
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