私は悪役令嬢のはずだけどお兄様の小姑役だけ全うしたい。

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夕食中、アーノルドに言われた事を考えながら、クリスティア眺めていた。

「アル様、どうかされましたか？」
「いや、何でも…ティア、いきなりでお互いの事を知らないまま婚約してしまったが、私はもっとあなたが何が好きで何が楽しいのか知りたい。色々と話をしたい。いいだろうか。」
「アル様、私、お母様が亡くなってから、ほとんど部屋から出ることがなかったんです。義母が顔を見たくないと言うので…だから本を読んだり刺繍をする事くらいしかできないんです。私といて退屈なら言って下さい。何でもできるように頑張るから、追い出さないでください。」

あまりの必死さに思わず、席を立ちクリスティアを抱きしめる。

「大丈夫だ。この屋敷の中ならいつどこに出てもいいし、私がいる時は一緒に外にも行こう。」
「アル様、嬉しいです。」

こんな天使が猫を被った女どもと同じはずないだろう。

私はアーノルドの忠告は、杞憂だろうと判断した。

翌日、執務室に行くと既にアーノルドが仕事を始めていた。いくら通勤時間がないとはいえ、働きすぎじゃないかと思う。
真面目なだけじゃないし、広い視野もある、いい王になるだろうが、過労で倒れなきゃいいなと眺めているとアーノルドが書類から顔を上げた。

「アルヴィン、来たか。君のお姫様はどうだったかい？」
「クリスティアは、天使だ。アーノルドの心配は杞憂だろう。」
「そうか。来週からエイミーが、ギルフォード公爵邸に里帰りするそうだ。」
「は？また、喧嘩したのですか。」
「人聞きの悪い事をいうな。それにエイミーは、突然家出はしても、予告家出はしないぞ。」

突然家出は否定しないのか。

「アルヴィン、エイミーの夢というか希望？野望かな、覚えているか。」

あれの野望って…

『私、お兄様が結婚したら小姑になるべく頑張るわ。』

 たしかそんな事を言っていたような…
あの頃は、ずっと嫁に行かずに近くにいればいいと思っていたし、アーノルドとは仲良くやっているから、もうそんな事忘れていると思っていた。
…というか、夫を放って何しようとしているんだ⁈
しかも夫公認で兄の家に乗り込んで小姑やるとか訳がわからん。

とりあえずクリスティアには、注意喚起をしておこうと考えた。

ところが、その日やたら面倒な案件の処理に手間取り、そのあともバタバタしているうちに、すっかり忘れてしまい、週末を迎えた。

今日は、休みだからクリスティアと散歩でもしようかと考えながら朝食後のお茶を飲んでいると玄関の方が騒がしい。
何事かと執事に聞こうとした時に、ノックの後、侍女のひとりが現れた。

「旦那様、エミルフェシア様が到着されました。いつもの部屋にご案内しましたが、よろしかったでしょうか。」

あっ…忘れていた。

小姑エイミーが来襲した。