男装令嬢とわがまま王子

里中一叶

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もう一度

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宴の喧騒から少し離れた庭の奥にある小さな東屋は、私たちが王宮で作戦会議と称して幼い頃使っていた場所だ。
泣いてしまった私は、恥ずかしくてレイモンドの顔を見れず、そのまま手を引かれ連れて来られた。
「まずは、ただいま。」
「お、おかえりなさい。」
「5年前、好きだと言ったくせにそのまま居なくなってごめん。」
「そうよ。その後、全く連絡くれなかった。」
「白紙にして、父上にもう一度ちゃんと向き合ってもらえる男になれと言われて離れた。その前に気持ちだけは伝えたいなんて、やっぱり…」
「そうね。やっぱりレイはわがままよね。」
「俺もあとで冷静に考えて俺って酷いやつと思った。ミリアリアを振り回してさ。あれから大使として未熟さを痛感しながらなんとか5年やってきた。まだミリアリアに会えるほど成長出来てはいないと思ったし、ミリアリアにもその…婚約しそうな相手が出来たと聞いた。」
「ラルフ様のこと?ジャルフ伯爵令嬢じゃなければ、結婚したかもしれないわね。でも私はいいも悪いもなくジャルフの一人娘なのよね。それにラルフ様は、頼りになる兄のような友人だし。」
「そうか…良かった。」
ホッとしたようなレイモンドに私は思い出す。
「レイこそ、アイナ王女と…」
「ミリアリアが好きで認めて欲しくて頑張ってきた俺がなんで他の女と付き合うの?」
「それは…」
「父上とジャルフ伯爵と約束したんだ。ミリアリアが学園を卒業するまで会わない。その間、認めてもらえるように仕事を頑張る。もし、ミリアリアに好きな相手が出来たら諦めて2度と国には仕事以外では帰らないって。
ルードと噂になってるって聞いた時は、半分諦めた。でも影のみんながミリアリアは、ルードが跡取りだから絶対断わるから大丈夫だって言ってくれてたんだ。それでも、俺のこと嫌いなら言ってくれ。はっきり諦めるから。」
「ばかね。こんなわがまま王子を好きになった私が、他の人を好きになれるわけないじゃない。」
気がつくとレイモンドに抱きしめられていた。
「頑張って良かった。」
「あ、あのレイ…」
私をすっぽり抱え込んだレイモンドに教えてあげる。
「後ろにすごい殺気感じない?多分お父様だと思うけど…」
レイモンドは、慌てて振り返り、そっと私から少しだけ離れる。
「少しはマシになったと思っていたが、まだまだみたいだな。」
「伯爵、確かにまだまだだと思うが、若者を暖かく見守る…はい。すみません、明日から稽古お願いします。」
お父様の殺気がおさまらないので、レイモンドがぺこぺこしているのが、可笑しくて吹き出してしまった。
「ミリアリア。」
「はい。」
「このバカ王子でいいのか?」
「お父様。でじゃなくが、いいんです。」
「わかった。陛下にはそう伝えてこよう。2人とも戻るぞ。」
お父様のあとを2人並んで追う。
「ミリアリア、ありがとう。ただもうしばらくは、大使の任期があるから、待っていてほしい。」
「レイ。私を誰だと思っているの?待たないわよ。会いに行くわ。」
レイモンドはにっこり笑ってうなづいた。
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