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第18章:樹龍の愛し子編(2) 龍祀の儀
第255話:無能者
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プリムス・ケファロスは自他ともに認める無能者だ。
教会の教皇派閥に属する名門の氏族に生まれ、【鑑定】という教会の権威付けに活きるスキルに恵まれた。それだけ聞けば有能に違いないのだが、良くも悪くも彼にあるのはその二つだけだった。
幼い頃から続けてきたので、教義の暗唱は得意だ。勉強もそれなりに出来るのだが、賢くはない気がしている。
例えば、プリムスはよく「気が利かない」と言われる。そうかと思って配慮の行動を取ると、今度は「余計なことをするな」と言われるので、最近では言われたことだけをすることにしている。だが、仕事は具体的な指示だけで構成されている訳ではないのが難しい。
プリムスが所属するのは教皇派の中の強硬系の反冒険者派閥だけれど、枢機卿から「冒険者に嫌がらせをしろ」と指示があって行動すれば大抵はやり過ぎてしまう。
その辺りの塩梅が分からなくて、地位の低い者達に陰で笑われていることも知っているが、それを咎めることもなく、淡々と受け止めている。時に感情的になることもあるのだが、多少発散したところで問題にはならない。
教会はレベルの鑑定を行い、それを保証する機能を持っている。これには歴史的な経緯があって、鑑定系スキルを持つ子供達を集めて教育する機構がよく整っている。
そんな中で、元々生まれが良い上にこの系統でも上位のスキル【鑑定】を持つプリムスの地位は不相応に高くなっている。
昔はよく同年代の者達に馬鹿にされた。彼らはプリムスよりも明らかに頭が良く、そしてやる気もあった。
同期で最も頭の良かった者はかなり早くに王都で大司祭となった。だが、教皇派の拡大に乗り出した後に失敗し、今では地方の教会で静かな生活を行っている。
次に優秀だった者は、正義感に駆られて同派閥の大司教の不正を暴いた。それによって大司教は降格してしまったけれど、彼も謎の嫌疑をかけられて、今では国外の教会にいるらしかった。
こんな風にして、プリムスよりも家柄や頭が良かった者達の多くは、自ら行動を起こし、そして去って行った。
気づけば少し前まではバエティカというそれなりの都市の司祭だったプリムスも、今では王都の教会の司教になっている。
教皇派閥の若手の中では上の地位に位置し、有能ではないけれど扱いやすい者として枢機卿達にも目をかけられていた。
プリムスは今の生活に満足していた。仕事では上からも下からも無能だと侮られるけれど、地位が上がったおかげで安定した生活を送ることができている。
妻は頭は良くないが、家柄も見た目も良い。それに何よりプリムスのことを愛してくれている。一人娘もまだ幼く、自分と妻に似て賢くはなさそうだけれど、それがかえって可愛らしく見える。
彼女達のことを思えば、仕事での扱いが悪くともプリムスには関係なかった。
ずっと今の仕事をしているおかげで、【鑑定】スキルのレベルも3になった。王都の司教であれば収入はあるし、良い土地の家に住むこともできる。豪勢ではないが裕福な生活をしながら蓄えも作り、娘に良い教育を受けさせることだって可能だった。
プリムスは幸せだ。無能者と言われることに悩み、悔しさを感じることもあったけれど、今ではそれを受け入れて家族のために働く決心がついている。そのことだけを受け入ればまだまだ先はあり、最近は二人目を作ることだって考え始めている。
そんなプリムスだけれど、娘が成長する様子を見るたびに思い出すことがあった。それはバエティカの教会にいた頃に自分の目の前に現れた二人の少女達のことだった。
彼女達は当時銅級冒険者の資格を取るためにレベルの鑑定に来た。その担当をしたのがプリムスだった。まぁ、その時も加減が分からず問題になったので苦い思い出でもあるのだが、彼女達の堂々とした態度がプリムスは忘れられなかった。
プリムスの娘もあと何年かで当時の彼女達の歳になる。だが、あんな風に自立できるとは思えないし、なる必要もないと思っていた。驚くべき才能だと思うけれど、それは残酷なことであるような気がするのだ。
時たまそんな風に考えたりしながらもプリムスはそれなりの日々を送っていた。
◆
そんなある日、プリムスは枢機卿の指示を受けて、急遽鑑定の仕事をすることになった。
高位聖職者であるプリムスの鑑定は、本来であれば事前の予約がないと出来ないのだが、それを無視して話が進むということは重要案件に違いなかった。
加えて、【鑑定】で得たスキルの詳細情報は共有禁止であり、かなり締め付けの強い誓約まで結ばされることになった。
察しの良くないプリムスもここまでくれば要注意案件だと分かる。そんな危ない案件には関わりたくないけれど、上の人からの指示であれば仕方がなかった。余計なことをしないように乗り越えれば良いはずだった。
神殿の中のプリムスさえも入ったことのないような格式の高い部屋で待っていると、案内されてきたのは少女と少年が四人だった。
相手の情報を事前に知らされもしなかったので高貴な相手だと思っていたけれど、見たところ予想とは違うようだった。
一人の少女が前に出て、口の端と目を吊り上げる。その表情を見て、プリムスは相手が誰なのかを認識した。
「冒険者パーティ『月下の誓い』のマイオルと申します。私を含めた四人の鑑定を司教様がしてくださると聞きました。どうぞよろしくお願いいたします」
プリムスは後ろにいる少女にも見覚えがあった。だが二人はプリムスの顔を見ても表情を変えず、気に留めていない様子だ。かなり昔のことなので覚えていないのかもしれない。
「ほ、本日は教会までおいでいただきまして、ありがとうございます。鑑定を行うプリムス・ケファロスと申します。現在この王都ティノープルの大神殿で司教の地位につかせていただいております」
冒険者は嫌いだけれど、ここでは丁寧な対応をしなければいけないことをプリムスはよく分かっていた。早く仕事を終わらせたいので、相手の表情を伺いながら淡々と進めることにする。
プリムスがまず鑑定を行ったのは、モフという少年だった。なんとなく冴えない少年にしか見えなかったけれど、何とレベルは4で、しかも元枢機卿の祖父を持ち、父親は大典礼官だった。
プリムスの方が少し良い家柄だけれど、かなり名門の出で、冒険者をしているのが不思議な出自だ。だがスキルが【綿魔法】なので仕方がないのかもしれない。それにグラディウス神官は変わり者として有名なので、その血だろうなとプリムスは結論づけた。
次に鑑定した少年はルキウスと呼ばれていた。スキルを使った瞬間、なぜ彼らがここまでの扱いを受けているのかがプリムスには分かった。彼が持っているスキルは【神聖魔法】、新星のごとく教会に現れ、そして姿を消した聖者様は冒険者になっていたのだった。
ルキウスのレベルは4で、スキルの構成はかなり変わっていた。ルキウスは身体能力や知力が高く、魔力もそこそこだった。聖者のことをここまで詳しく鑑定する機会などないため、プリムスは少しだけ高揚した。
その次に出てきたのはセネカだった。彼女は以前と変わらずぽやっとしていたけれど、冒険者の中では実力者だと知られていると昔調べたことがある。
プリムスは先ほどルキウス達に使ったよりも多くの魔力をスキルに込めて、サブスキルも駆使して全力で【鑑定】することにした。
これは昔、ちょっと意地悪してしまったことのお返しだ。何か気がつくことがあれば助言することもやぶさかではないと考えてのことだった。少しは助けになるだろうと思っていたけれど、プリムスはその結果を見て愕然とした。
レベルは4で、莫大な魔力を持っており、何故か魔法が使えそうな風に見えた。それにスキル構成も理解が難しかった。けれど、それ以上に驚いたのは神を思わせるような神聖な加護を身に宿していることだった。プリムスの感覚だとその神聖さは聖者ルキウスに匹敵していた。
スキル【鑑定】の結果は高次の情報になるほど解釈が必要になってくる。特に加護のようなものは簡単には判断できないのだが、セネカが持つものの質は、プリムスですら見たことがなかった。
プリムスは好奇心に駆られて、ルキウスとモフの加護も調べた。するとルキウスはセネカと同等のものを持っていて、モフも二人に準ずるような加護を授かっていた。
プリムスは汗が吹き出していることに気がついた。プリムスは過去に枢機卿の鑑定を行ったことがあるのだが、その時でさえも今のモフよりも加護は薄かった。
「最後はあたしね」
当然セネカと同じように全力でスキルを行使する。もうレベル4には驚かない。
この四人はあり得ない状態の証明を得るためにここに来たのだとプリムスは理解しつつあった。
マイオルのスキル構成は、プリムスがよく知る【探知】とは全く違っていた。[軌跡]、[予知]、[導]なんて全く見たことのない能力だ。それにスキル全体に強い聖属性の気配があった。聖なるスキルではないのにもかかわらずだ。
当然のようにマイオルも加護があった。それはモフのものよりも濃密で、ルキウス達の神聖な加護よりも重くて冷たいようにプリムスは感じた。
レベルの証明書を作っている間もプリムスの汗は止まらなかった。特に聖者ルキウスとセネカが持っていた加護の強さは圧倒的で、頭の中を強い光で照らされたような衝撃が残っていた。
もしかしたら教皇聖下よりも神に愛されているのではないか。そんな不敬な考えが頭をよぎったけれど、すぐに頭の中から追い出した。
「お世話になりました」
彼女達はあくまで丁寧な態度で挨拶をしてから部屋を出ていった。
態度からプリムスに気づいているのかどうかは分からなかったけれど、ひとまず穏便に終わったので、プリムスは安堵を感じた。
それからしばらくボーッとした後で、プリムスも部屋を出た。
「俺は何も見なかったんだ……」
そう言って立ち去り、今日は早く家に帰ろうと決めた。愛する妻と娘がいれば大抵のことは忘れられる。
「俺は無能者でいいんだ」
プリムスの表情は明るく、無能の烙印を押された者には見えなかった。
教会の教皇派閥に属する名門の氏族に生まれ、【鑑定】という教会の権威付けに活きるスキルに恵まれた。それだけ聞けば有能に違いないのだが、良くも悪くも彼にあるのはその二つだけだった。
幼い頃から続けてきたので、教義の暗唱は得意だ。勉強もそれなりに出来るのだが、賢くはない気がしている。
例えば、プリムスはよく「気が利かない」と言われる。そうかと思って配慮の行動を取ると、今度は「余計なことをするな」と言われるので、最近では言われたことだけをすることにしている。だが、仕事は具体的な指示だけで構成されている訳ではないのが難しい。
プリムスが所属するのは教皇派の中の強硬系の反冒険者派閥だけれど、枢機卿から「冒険者に嫌がらせをしろ」と指示があって行動すれば大抵はやり過ぎてしまう。
その辺りの塩梅が分からなくて、地位の低い者達に陰で笑われていることも知っているが、それを咎めることもなく、淡々と受け止めている。時に感情的になることもあるのだが、多少発散したところで問題にはならない。
教会はレベルの鑑定を行い、それを保証する機能を持っている。これには歴史的な経緯があって、鑑定系スキルを持つ子供達を集めて教育する機構がよく整っている。
そんな中で、元々生まれが良い上にこの系統でも上位のスキル【鑑定】を持つプリムスの地位は不相応に高くなっている。
昔はよく同年代の者達に馬鹿にされた。彼らはプリムスよりも明らかに頭が良く、そしてやる気もあった。
同期で最も頭の良かった者はかなり早くに王都で大司祭となった。だが、教皇派の拡大に乗り出した後に失敗し、今では地方の教会で静かな生活を行っている。
次に優秀だった者は、正義感に駆られて同派閥の大司教の不正を暴いた。それによって大司教は降格してしまったけれど、彼も謎の嫌疑をかけられて、今では国外の教会にいるらしかった。
こんな風にして、プリムスよりも家柄や頭が良かった者達の多くは、自ら行動を起こし、そして去って行った。
気づけば少し前まではバエティカというそれなりの都市の司祭だったプリムスも、今では王都の教会の司教になっている。
教皇派閥の若手の中では上の地位に位置し、有能ではないけれど扱いやすい者として枢機卿達にも目をかけられていた。
プリムスは今の生活に満足していた。仕事では上からも下からも無能だと侮られるけれど、地位が上がったおかげで安定した生活を送ることができている。
妻は頭は良くないが、家柄も見た目も良い。それに何よりプリムスのことを愛してくれている。一人娘もまだ幼く、自分と妻に似て賢くはなさそうだけれど、それがかえって可愛らしく見える。
彼女達のことを思えば、仕事での扱いが悪くともプリムスには関係なかった。
ずっと今の仕事をしているおかげで、【鑑定】スキルのレベルも3になった。王都の司教であれば収入はあるし、良い土地の家に住むこともできる。豪勢ではないが裕福な生活をしながら蓄えも作り、娘に良い教育を受けさせることだって可能だった。
プリムスは幸せだ。無能者と言われることに悩み、悔しさを感じることもあったけれど、今ではそれを受け入れて家族のために働く決心がついている。そのことだけを受け入ればまだまだ先はあり、最近は二人目を作ることだって考え始めている。
そんなプリムスだけれど、娘が成長する様子を見るたびに思い出すことがあった。それはバエティカの教会にいた頃に自分の目の前に現れた二人の少女達のことだった。
彼女達は当時銅級冒険者の資格を取るためにレベルの鑑定に来た。その担当をしたのがプリムスだった。まぁ、その時も加減が分からず問題になったので苦い思い出でもあるのだが、彼女達の堂々とした態度がプリムスは忘れられなかった。
プリムスの娘もあと何年かで当時の彼女達の歳になる。だが、あんな風に自立できるとは思えないし、なる必要もないと思っていた。驚くべき才能だと思うけれど、それは残酷なことであるような気がするのだ。
時たまそんな風に考えたりしながらもプリムスはそれなりの日々を送っていた。
◆
そんなある日、プリムスは枢機卿の指示を受けて、急遽鑑定の仕事をすることになった。
高位聖職者であるプリムスの鑑定は、本来であれば事前の予約がないと出来ないのだが、それを無視して話が進むということは重要案件に違いなかった。
加えて、【鑑定】で得たスキルの詳細情報は共有禁止であり、かなり締め付けの強い誓約まで結ばされることになった。
察しの良くないプリムスもここまでくれば要注意案件だと分かる。そんな危ない案件には関わりたくないけれど、上の人からの指示であれば仕方がなかった。余計なことをしないように乗り越えれば良いはずだった。
神殿の中のプリムスさえも入ったことのないような格式の高い部屋で待っていると、案内されてきたのは少女と少年が四人だった。
相手の情報を事前に知らされもしなかったので高貴な相手だと思っていたけれど、見たところ予想とは違うようだった。
一人の少女が前に出て、口の端と目を吊り上げる。その表情を見て、プリムスは相手が誰なのかを認識した。
「冒険者パーティ『月下の誓い』のマイオルと申します。私を含めた四人の鑑定を司教様がしてくださると聞きました。どうぞよろしくお願いいたします」
プリムスは後ろにいる少女にも見覚えがあった。だが二人はプリムスの顔を見ても表情を変えず、気に留めていない様子だ。かなり昔のことなので覚えていないのかもしれない。
「ほ、本日は教会までおいでいただきまして、ありがとうございます。鑑定を行うプリムス・ケファロスと申します。現在この王都ティノープルの大神殿で司教の地位につかせていただいております」
冒険者は嫌いだけれど、ここでは丁寧な対応をしなければいけないことをプリムスはよく分かっていた。早く仕事を終わらせたいので、相手の表情を伺いながら淡々と進めることにする。
プリムスがまず鑑定を行ったのは、モフという少年だった。なんとなく冴えない少年にしか見えなかったけれど、何とレベルは4で、しかも元枢機卿の祖父を持ち、父親は大典礼官だった。
プリムスの方が少し良い家柄だけれど、かなり名門の出で、冒険者をしているのが不思議な出自だ。だがスキルが【綿魔法】なので仕方がないのかもしれない。それにグラディウス神官は変わり者として有名なので、その血だろうなとプリムスは結論づけた。
次に鑑定した少年はルキウスと呼ばれていた。スキルを使った瞬間、なぜ彼らがここまでの扱いを受けているのかがプリムスには分かった。彼が持っているスキルは【神聖魔法】、新星のごとく教会に現れ、そして姿を消した聖者様は冒険者になっていたのだった。
ルキウスのレベルは4で、スキルの構成はかなり変わっていた。ルキウスは身体能力や知力が高く、魔力もそこそこだった。聖者のことをここまで詳しく鑑定する機会などないため、プリムスは少しだけ高揚した。
その次に出てきたのはセネカだった。彼女は以前と変わらずぽやっとしていたけれど、冒険者の中では実力者だと知られていると昔調べたことがある。
プリムスは先ほどルキウス達に使ったよりも多くの魔力をスキルに込めて、サブスキルも駆使して全力で【鑑定】することにした。
これは昔、ちょっと意地悪してしまったことのお返しだ。何か気がつくことがあれば助言することもやぶさかではないと考えてのことだった。少しは助けになるだろうと思っていたけれど、プリムスはその結果を見て愕然とした。
レベルは4で、莫大な魔力を持っており、何故か魔法が使えそうな風に見えた。それにスキル構成も理解が難しかった。けれど、それ以上に驚いたのは神を思わせるような神聖な加護を身に宿していることだった。プリムスの感覚だとその神聖さは聖者ルキウスに匹敵していた。
スキル【鑑定】の結果は高次の情報になるほど解釈が必要になってくる。特に加護のようなものは簡単には判断できないのだが、セネカが持つものの質は、プリムスですら見たことがなかった。
プリムスは好奇心に駆られて、ルキウスとモフの加護も調べた。するとルキウスはセネカと同等のものを持っていて、モフも二人に準ずるような加護を授かっていた。
プリムスは汗が吹き出していることに気がついた。プリムスは過去に枢機卿の鑑定を行ったことがあるのだが、その時でさえも今のモフよりも加護は薄かった。
「最後はあたしね」
当然セネカと同じように全力でスキルを行使する。もうレベル4には驚かない。
この四人はあり得ない状態の証明を得るためにここに来たのだとプリムスは理解しつつあった。
マイオルのスキル構成は、プリムスがよく知る【探知】とは全く違っていた。[軌跡]、[予知]、[導]なんて全く見たことのない能力だ。それにスキル全体に強い聖属性の気配があった。聖なるスキルではないのにもかかわらずだ。
当然のようにマイオルも加護があった。それはモフのものよりも濃密で、ルキウス達の神聖な加護よりも重くて冷たいようにプリムスは感じた。
レベルの証明書を作っている間もプリムスの汗は止まらなかった。特に聖者ルキウスとセネカが持っていた加護の強さは圧倒的で、頭の中を強い光で照らされたような衝撃が残っていた。
もしかしたら教皇聖下よりも神に愛されているのではないか。そんな不敬な考えが頭をよぎったけれど、すぐに頭の中から追い出した。
「お世話になりました」
彼女達はあくまで丁寧な態度で挨拶をしてから部屋を出ていった。
態度からプリムスに気づいているのかどうかは分からなかったけれど、ひとまず穏便に終わったので、プリムスは安堵を感じた。
それからしばらくボーッとした後で、プリムスも部屋を出た。
「俺は何も見なかったんだ……」
そう言って立ち去り、今日は早く家に帰ろうと決めた。愛する妻と娘がいれば大抵のことは忘れられる。
「俺は無能者でいいんだ」
プリムスの表情は明るく、無能の烙印を押された者には見えなかった。
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