異世界で水の大精霊やってます。 湖に転移した俺の働かない辺境開拓

穂高稲穂

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2巻

2-1

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  五年後の目覚め


 高校生だった俺――冴島凪さえじまなぎは休み時間に居眠りしていたら、目覚めた時には湖の大精霊になっていた。
 並外れた癒やしの効果を持った湖の力を得た俺は、自分のもとを頼ってきた人々をその力で助ける。
 人間の子供が湖に来て、母親のやまいを治してほしいとお願いされたり、迫害はくがいから逃げてきたダークエルフを保護して湖の近くに住まわせたりしていた。
 そしてある日、俺は奴隷どれいにされていたハーフエルフの少年・ヨナと契約けいやくを結ぶ。
 牢の中で弱っていたヨナの弟・ルトを助けて、ついでに同じ牢屋に囚われていた少年たちを全員救出した。
 その後、元日本人の賢者・アガツマユウキと出会い、ディアゾダスという禁呪きんじゅおかされた闇竜あんりゅうを助けるなど、様々な出会いを経て湖に帰還。
 しばらくして、ディアゾダスが人間によって討たれたという報告を聞いた俺は、ディアゾダスの子供・バラギウスを預かることになる。
 ディアゾダスに続き竜人の里が攻められていることを知り、俺は同じ転移者で神聖竜しんせいりゅうになった武藤弘明むとうひろあきとともにその戦争に介入することを決意する。
 ディアゾダスの敵討かたきうちも兼ねて、敵である人間の『英雄えいゆう』を一網打尽いちもうだじんにしたところまではよかったが、その際に力をほとんど消耗しょうもうした俺は、保護した者たちを残して、二度目の眠りについたのだった。


 水底からゆっくりと意識が浮き上がるような感覚に包まれながら、俺の意識が徐々に覚醒かくせいする。
 薄ぼやけた視界が鮮明になっていき、水中のキラキラとした幻想的な景色が出迎えた。

『気持ちいい』

 ひんやりとした湖の中をたゆたいながら、日が差す水面を見る。
 徐々に浮上して、やがて俺の意識は水玉となって水中を飛び出た。

『皆は……』

 気配を探ると、ヨナたちがサンヴィレッジオにいるのがわかった。
 ヨナたちは、俺が目覚めたことに気づいたのか、どうやら駆け足でこの湖に向かっているようだ。
 俺は水玉の状態で水面に鎮座して、彼らを待った。

『ん?』

 彼らが来る前に、俺のもとに湖をスイスイと泳ぐスライムが現われた。
 このスライムは、俺が眠りにつく前に村で世話していた珍しいやつだった。
 なぜかはわからないが俺に懐いていて、こっちもなんだかんだで愛着が湧いている。
 いわば、ペット的な存在のスライムだ。

『少し大きくなったか?』

 そう問いかけると、スライムは体をブルブルと震えさせる。
 喜んでいるような感情が読み取れた。

「キュイィィ~」

 続いて空中から、小さい黒竜が可愛らしい鳴き声をあげて勢いよく飛びついてきた。
 バラギウスだ。

『久しぶりだね、バラギウス』

 自分がどれぐらい寝ていたのかわからないが、バラギウスの甘える様子を見る限り、かなり長い時間放置してしまったのかもしれない。
 バラギウスは、それまでの寂しさを埋めるように、俺の頭上を旋回しながら鳴き声を上げる。
 ほどなくしてヨナとルトの姿が岸の方に見えてきた。
 そんな二人の姿を見て、俺は唖然とする。

「ナギ様~!」

 満面の笑みで水辺のそばまで走ってくるヨナ。
 少年らしく成長しつつも、女の子のような可愛らしい面影を残す中性的なイケメンに成長している。
 そのヨナの後ろから、彼によく似た可愛らしさと快活さのあるルトが、手を振って駆け寄ってきた。

『二人とも大きくなったね』
「うん!」
「五年も経てば大きくなるよ!」

 俺はヨナの言葉に衝撃を受けた。

『五年も経ってるの!?』
「そうだよ! 皆ナギ様が目覚めるのをずっと待ってたよ!」

 俺は水玉の姿のまま、定位置であるヨナの頭の上に乗っかった。
 五年前との視線の高さの違いに、成長を感じてグッとくる。
 ヨナたちとともにサンヴィレッジオに向かう道中、色々なことを聞いた。
 ヨナからは精霊魔法が上達したことや、精霊剣の制御が七割強出来るようになったことを教えてもらった。
 それから、ルトの口からは一人でオーガを倒したと自慢げに話された。

「すごく強い魔物がサンヴィレッジオを襲ってきたんだけどね。僕が精霊剣で倒したんだよ!」
『すごいな。流石はヨナだ』

 俺が褒めてあげると、ヨナは凄く嬉しそうにはにかんだ。
 ルトも褒めてほしそうにいろいろと自慢話を続けた。
 俺が心から褒めると気恥ずかしそうに、でも嬉しそうに頬を赤らめた。
 そんな話を続けているうちに、サンヴィレッジオが目の前に見えてきた。
 俺は、目の前に見えた光景に言葉を失い絶句した。
 そこへ、俺を待っていたであろう面々が出迎えてくれる。

「目覚めたのですね、ナギ様!」

 フィリーたちが駆け寄ってくる。

『久しぶり? 五年ぶりみたいだけど、元気そうで何よりだよ』

 結界に覆われている村に入ると、待ち構えていたダークエルフたちやドワーフたち、ラミアや竜人や獣人、エルフと多種多様な種族に出迎えられた。
 歓迎されている間も俺は村の変わりっぷりになかば放心状態だった。
 とある建物に視線が釘付けになる。
 眠りにつく前は素朴そぼくな村だったはずなのに、そんなのは見る影もなくビルが立ち並んでいた。

「どうじゃ? すごいじゃろう」

 背後の声に振り返ると、俺より前にこの世界に転移してきたユウキ・アガツマがいた。

『あ、アガツマさん!? なんでここに!?』
「ナギが目覚めるのを予見したから会いに来たんじゃよ。それよりもこの建物群に驚いているようじゃのう。以前ナギがドワーフたちにマンションについて教えてあげたことがあったじゃろ? ワシもルオとニオからそのことを聞いてな。気になってこの村に来てみたら、ドワーフたちが上下水道のこととか困ってたから、手助けしたんじゃ。そうしているうちにわしも楽しくなってきて、いろいろと教えた結果出来たのがあのビルじゃ」

 その説明に俺は言葉を失う。
 ドワーフたちのものづくりの力を甘く見ていたと最後に付け足すユウキ。
 かくして、俺がいない間にサンヴィレッジオは異様な発展を遂げたのだった。
 その功労者でもあるドワーフのガエルードとゴルサスが、俺に近づいてくる。

「どうだ! すごいだろう!」

 やってやったぜとニカッと笑うガエルード。

『うん、驚いたよ。以前とだいぶ見違えたね』

 俺がそう褒めると、ゴルサスが言いづらそうに頬をポリポリ搔いた。

「それでよ、今の結界じゃ少々手狭になってきてな……目覚めたばっかで申し訳ないんだが、結界を広げてもらいたくて……」
『それは別にいけど』

 俺は人間の身体に戻って空中に浮かぶと、結界にエネルギーを供給して維持している精霊石せいれいせきに手をかざした。
 次の瞬間、結界がグンッと大きく広がる。

「このぐらいでいいかな?」

 元の結界の三倍くらいまで広げてから戻ると、ドワーフたちが嬉しそうにしていた。

「おう! これならしばらくは大丈夫だ! ありがとうな! 野郎ども、行くぞ!」

 俺に礼だけ言って、ゴルサスがすぐに駆け出していった。
 他のドワーフたちが、その後ろを追いかけて走り去っていく。
 彼らの建築技術で、このサンヴィレッジオはどうなっていくのだろうか……
 少しだけ不安を覚えた俺の横では、ユウキが心なしかウズウズしていた。
 ユウキも街の発展が楽しみなのかもしれない。
 ドワーフたちが去ると、続いてラミアのルーミアが前に出てきて挨拶してきた。

「ラミア族を代表して、ナギ様のお目覚めに心から祝福を申し上げます」
「ありがとう。ラミアも結構増えたね」
「はい! お陰様でこの結界内で安全に暮らせております。噂を聞いた同胞どうほうが助けを求めに来て、数が増えていきました」
「そうだったんだね」

 俺が眠っている間の来訪者については、基本フィリーや俺の従えている精霊のスイコたちに任せていた。
 まぁ、結界の中に知り合いがいるなら、助けを求めてきた場合は受け入れるように伝えたので大丈夫だろうが……後で移住者について確認しておこう。
 それからダークエルフの男が前に出てくる。

「ナギ様がお目覚めになられたこと、ダークエルフ一同お祝い申し上げます!」

 ダークエルフを取りまとめているダイラスが俺の前にひざまずく。
 彼らの数も爆発的に増えたようだ。
 俺が眠っていた五年間で、安全に暮らせるこの地に仲間たちを集めたみたいだ。
 ダークエルフたちは人族にとって迫害の対象。それだけに人の住む場所からこちらに身を寄せてきたものが多いのだろう。その数、一万近く。
 全てのダークエルフたちが平伏へいふくし、口々に俺をたたえたり、感謝を述べたりしている。
 圧巻の光景だ。

「とりあえずそんなに畏まらなくていいよ」

 俺はダイラスにそう言って顔を上げさせた。

「ここでは皆仲良く平和に暮らしてさえくれればいいから」

 俺の言葉に、割れんばかりの拍手が鳴り響いた。

「なんとお心の広い方だ。大精霊ナギ様……!」

 ダイラスは感極まっているようだった。
 すると、俺の横からフィリーたちがやってきた。

「流石はナギ様ですね!」

 彼女たちとは冒険者ギルドで出会い、それ以降この村の開拓を手伝ってもらっている。
 今や中心的メンバーだった。
 フィリーの後に続いて、同じく冒険者仲間のガンドやシャナスがニコニコしながら俺のもとにやってきた。
 その後も、俺がこの村に連れてきたみんなとの挨拶をした。
 この五年間で奴隷から開放された子供たちも成長していて、その誰もが仲良さそうだ。
 俺の近くでその光景を見ていたユウキが「良いところじゃな、ここは」とボソッと言った。

「みんなが互いを思いやって暮らしているおかげだよ」
「そうじゃのう」
「ところで、魔族の方はどうなってるの?」

 ユウキが俺の目覚めに気付いて駆けつけてくれた理由――それは、もちろん久々に会いたいというのもあったかもしれないが、俺が眠っていた間の魔族の動向を伝えに来てくれたというのが大きな理由だろう。
 俺も竜人の里で、魔族と接触して以来、彼らがどうしているかは気になっていた。

「それについては、ナギの屋敷でゆっくり話したい」
「わかった。じゃあ行こうか」

 ということで、挨拶に来てくれた数々の種族にお礼を言いつつ、俺はヨナルト、それからユウキを連れてサンヴィレッジオの中へと入った。
 向かう先はサンヴィレッジオの中心部だ。
 近くで見ると、中心に行けば行くほどビルが建ち並び、道は綺麗に舗装されている。
 もはや村とは言えない光景がそこにあった。
 そして、前の記憶を辿って、自分の屋敷の前まで到着した時――
 俺は三度みたび言葉を失った。
 俺の屋敷は、モダンで前より一層豪華なものへと変わっていた。

「どうじゃ! ワシとドワーフで作り上げた最高傑作の魔導建築じゃ!」

 自慢げに紹介するユウキを見て、俺は小さくため息を吐いた。
 いや、すごいのはすごいけど……
 ユウキの協力を得てドワーフたちが勢いで作った俺の邸宅ていたくは、外観も建物の中もグレードアップしていた。
 日本にいた頃にテレビで見たような豪華な三階建てになっている。

「どうじゃ? 気に入ってくれたか?」
「お、おぉ……」

 ニヤニヤと聞いてくるユウキだったが、俺はこの変化に戸惑い、うまく返答できなかった。
 一通り部屋を案内してもらうと、ゲストルームで一旦落ち着いた。
 精神的な疲労から、俺は水玉の形になってヨナの頭の上でぐったりする。
 そこで、ユウキはそれまでのテンションから一転して、真面目な顔になった。

「早速じゃが本題に入るぞ。今日ここに来たのは、聞いてほしい話があってな」

 俺は黙って耳を傾けた。

「まず、ナギの気になっておる魔族についてじゃが……奴らはとんでもないことを仕出かした」

 ユウキが重々しく言葉を続けた。

「魔物や獣を変容させ、その化け物を操って至るところで暴れさせているんじゃ。化け物は相当強力でな……滅びかけた国もある。人間の国々は大打撃を受けておる」
『人間の国以外はどんな感じなの?』
「エルフやドワーフや獣人、それから竜人の国も、人間の国ほどではないが被害は受けているようじゃ……」
『その化け物が現われたのは?』
「三年前じゃな」

 そこでヨナが口を挟む。

「サンヴィレッジオも変な化け物に襲われたんだ! すごい変な力でナギ様の結界を壊そうとしてきた!」

 もしかして、俺が目覚めた時にヨナが話してくれたのってこのことなのか……?
 念のためヨナに確認してみる。

『俺が寝てる間にそんなことが……その化け物ってもしかしてヨナが?』

 ふとそこで、俺がいない間、この村の守りを任せていた精霊の眷属・スイコが姿を現した。

『そうです。ヨナ様が無事倒しました。我々精霊たちは、結界を守ることに注力しておりましたので……』

 やっぱりそうだったか! だとしたらヨナはこの数年ですごい成長を遂げたんだな。

『すごいじゃないか、ヨナ』

 俺が嬉しい気持ちになってそう褒めると、ヨナが照れた。
 一瞬なごやかなムードが流れたが、スイコが黒い欠片かけらを置いたことで再び空気が一変する。

『ヨナ様が倒された化け物から、こんなものが出てきました』
『それは……闇の精霊結晶か? かなり小さいし精霊力も弱々しい……っ!?』

 そこまで言ってから、その小さくて黒い精霊結晶から、極僅かにディアゾダスが受けていた禁呪と同じ気配を感じ取った。
 俺はその精霊結晶の欠片に一滴、自分の水を垂らす。
 精霊結晶からは、細い黒煙が出た。
 そして浄化されると、黒色から赤色に変わっていく。
 元は火の下位精霊だったのだろう。

『俺の村を襲い、精霊に危害を加えたこの報いは、絶対に受けさせる』

 俺がそう決意すると、ユウキがどうどうと手を前に出した。

「まぁ落ち着くのじゃ。その子らが怯えてるぞ」

 気付かぬうちに、怖い雰囲気を出してしまっていたみたいだ。

『ごめんね、二人とも』

 俺が謝ると、ヨナはすぐに気を取り直したが、ルトは、さっきの俺がかなり怖かったようで、目にいっぱいの涙を浮かべていた。
 ユウキの気遣いで、話はそこで切り上げて、そこからはご飯の時間にした。


 二人の話を聞いてのんびり屋敷で過ごしていると、あっという間に夜になった。
 ヨナとルトが寝たのを確認してから、俺とユウキは話を再開する。
 ユウキは、ドワーフたちが作ったお酒をチビチビと飲みながら、話を始める。
 俺も日中の疲れが取れたので、人の姿に戻った。

「それで今後のことなのじゃが、近々開催される連合会議に参加してほしい」
「連合会議?」
「魔族の企みを食い止めるために、わしら人間、武藤たちドラゴンの一族、そしてナギをはじめとした精霊とエルフ、そこにドワーフや獣人や竜人を加えて連合を組むことが決まったんじゃ。その面々が集う会議じゃな」
「なるほどね。以前味方を集めた時から、かなり協力者が増えたんだね。でも精霊側といっても、俺はついさっきまで寝てたから、他の大精霊に話が通ってないと思うんだけど……その辺は大丈夫なの……?」
『そのことに関してですが……』

 俺の問いに答えたのは、ユウキでなくスイコだった。

『闇の大精霊フォルムス様、溶岩の大精霊シャルネオ様、砂漠の大精霊ミリオネスフォール様、雷の大精霊トゥネアクルヴァ様がご協力を約束してくださいました』
「ほとんどすべての大精霊とスイコがコンタクトを取ってくれたのか……それはすごいな。ありがとうね」
『いえ、お父様のお役に立ててすごく嬉しいです! ちなみに、各大精霊様からは、あくまでも協力するのは同じ大精霊であるナギ様のためであるというお話をいただいています。人間たちとの関わりは全てナギ様に任せるとも』
「つまり俺が他の大精霊と、連合軍の面々との橋渡し役ってことかな?」
「そういうことじゃな。だからこそ、お主には精霊側として連合会議に参加してほしいんじゃ」
「なるほどね。俺は構わないよ。それで、その連合会議っていつなの?」
「今日から五日後じゃな」

 ユウキが即答した。

「すぐじゃん!」

 俺は思わずツッコミを入れる。

「お主が目覚める予知をもとに決めたからの。突然のお願いになったのは申し訳ないが、これは誰一人欠けることも、代理で誰かを立てることもできない大事な会議じゃ。よろしく頼む」

 ユウキが深々と頭を下げた。

「わかったよ」

 それからは軽い雑談が続いた。
 俺が眠っていた五年間で起きたことや、ユウキが預かっている魔族の女性――マシュリスのその後について聞いた。
 洗脳が解けて以降、彼女はユウキの助手として研究を手伝っているらしい。
 魔物の召喚術にひいでていて、研究に役立っているようだ。
 精神も大分落ち着いて、幼児退行も起きていないとのこと。
 だが、俺に対する恐れはまだまだあるようで、ここに連れてくることは出来なかったらしい。

「武藤さんは元気にしてる?」
「元気にしておる。報復にいさむドラゴンたちをなんとか抑えて、今では竜王の右腕としてドラゴンたちをまとめていると言っておった。バカンスする時間がないと嘆いとったな」
「アハハ……まぁ、今回の問題が片付いたら目一杯羽を伸ばせるといいね」

 そんなとりとめのない話は深夜まで続いた。
 ほろ酔いのユウキはそのまま俺の屋敷に泊まっていくことを決めて、すっかり熟睡している。
 俺は自分の部屋に戻った。
 転移前の地球で見たような現代的な部屋の内装は、おそらくユウキのこだわりなのだろうが、俺にとっても居心地がよかった。
 俺はベッドの上でくつろぎながら、眷属たちを呼ぶ。

「スイコ、スイキ、ミヤ、ミオ」
『『『『はい!』』』』
「俺が眠っている間、この村のことを任せっきりになってごめんね」

 スイコには改めてになるが、それ以外の眷属にはようやくお礼を言えた。

『とんでもございません! 私たちはナギお父様のお役に立てて幸せです!』
『ナギ様、ナギ様! 俺もスイコみたいに強くなりたい!』
『スイキ! ナギお父様にわがままを言ってはいけません!』

 わがままを言うスイキを叱責しっせきするスイコ。
 スイキとて上位精霊であり、精霊の階級としては、俺のような大精霊、スイコのような最上位精霊に続いて三番目。
 この世界で十分な力を持っているのだが、最上位精霊となって格段に強くなったスイコがずっと羨ましかったようだ。
 俺はそんなスイキの気持ちを汲んで、精霊力を分け与えることにした。

「分かった。俺が眠っている間に頑張ってくれたご褒美だよ」

 五年間眠っている間に、俺の力がより安定したお陰で、力の受け渡しは以前よりスムーズだった。
 俺の精霊力を授かったスイキが、最上位精霊へと成長する。
 その姿は少年だった面影を残しつつも、十代後半くらいに大きくなった。

『ありがとうございます、ナギ様! これでもっとナギ様の役に立てる!』

 張り切るスイキとそれを押さえつつ一緒にお礼を言うスイコ。
 まるで姉と弟のような関係に見える。
 その流れで、俺はミヤとミオにも最上位精霊になりたいか確認した。

『『私たちは今のままでいい』』

 迷うこともなく答えるミヤたちだったが、それに続けて、代わりのご褒美として、俺のペットのスライムをお世話したいとねだってきた。
 湖をずっと守るうちに、そこで漂うスライムに愛着を持ったようだ。
 それまでは、俺のペットだからということで遠慮して眺めるだけだったと聞いて、その律義りちぎさに思わず微笑む。

 俺が快く許可を出すと、二人とも嬉しそうにしていた。
 感情が乏しく、あまり表情を変化させない二人の珍しい笑顔に俺の気持ちも和んだ。
 
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