8 / 21
二日目
7 * 海を歩いて海を飛ぶ
しおりを挟む前回のグアムでも、シーウォーカーに行ったらしい。その写真はわたしも見たことがあった。印象は、なんというか、宇宙飛行士の顔はめ看板~海中にて~、というかんじだ。もしくはCG合成。
シーウォーカーは、酸素の供給されるヘルメットをかぶって海中を歩く。海の水が綺麗に澄みすぎていて、魚も嘘のようにたくさん泳いでいるので、写真が作り物のように見えてしまうのだ。
ワゴン車に乗って、シーウォーカー体験できる海岸まで運ばれる。待っていたのはザ・陽気なアメリカ人といったふうの男たちだった。
半年前のシーウォーカーについて、父も母も「海岸に着いてからの待ち時間がものすごく長かった」と語っていた。それなりに待つ覚悟をしていたら、前回とは経営が違うところだったらしく、一秒も待たずしてシーをウォークすることになった。到着して即ウェットスーツ装着。待ってくれ、むしろ心の準備ができていない。
ヘルメットは思ったよりも重く、大きかった。閉所と狭所が苦手なわたしだが、ヘルメットの下部から手を入れることができるようになっており(耳抜きするから)、パニックにならずに済んだ。
先頭にひばり、次にわたし、そのうしろに父……と一列になって、ロープをたぐり海の深い方へ歩いて行く。ヘルメットの重さで、体が浮いてしまうこともない。さっきから降っている雨で若干海がにごっているものの、魚を見るには十分な透明度だった。
インストラクターのお兄さんがたびたび送ってくるハンドサインを確認しながら、水中を進んでいく。水の中なら、英語も日本語もなく、同じハンドサインで話せるのだ。海中はバベルの塔以前の世界だなと思いわくわくする。
もらった魚肉ソーセージを親指でほぐすと、そこらじゅうの魚が寄ってきた。共食いという言葉が頭の中で点滅するが黙気付かないふりをする。
インストラクターの一人が、バブルリングを作って見せてくれた。指だけを使って様々な大きさの輪を作り、こちらに向かって飛ばしてくる。わたしは飛んでくるそれを腕にはめたり、指にはめたりしてみた。バブルリングのアクセサリーなんて素敵だ。ふと横を見たら父も同じことをしていた。ペアリングのできあがりだ。
見て見て、というハンドサインに再び目を向けると、今度は口を使ってバブルリングを作り、魚肉ソーセージのかけらを巻き込ませる様子を見せてくれた。ソーセージが高速回転しながら海面に向かって昇っていく様はシュールであった。
最も深いところまで行くと、一人ずつ、思い切りジャンプさせられた。ふわりと体が浮き上がり、重みでゆっくり底に戻ってくる感覚は、さながら宇宙で飛び跳ねているようだった。宇宙で飛び跳ねたことないけど。
そんなシーウォーカーだけでもお腹いっぱいなのに、終了後はシュノーケルをすることができた。少し休憩してから行きたかったが、休憩スペースにいるとインストラクターからひたすら水とお茶とジュースを勧められるので、すぐにシュノーケルセットを身につけ海に出る。あんまり水分をとりすぎるとまたトイレに行きたくなるので。
シュノーケルはライフジャケットを着ておこなうので、とにかく体が浮いた。海底を歩いたさっきまでとは正反対だ。空を飛ぶ気分でふわふわ浮かぶ。
ある程度の深さのところに到達したので、さあいよいよ海の中を見ようとシュノーケルマスクを装着し、水の中で息を吸い込んだら海水が鼻から入ってきた。しょっぱさにむせ、慌てて顔を上げる。
「鼻はがまんよ」
近くにいたインストラクターさんに言われ、シュノーケルは鼻で息をしないと初めて知る。陸では偉そうに子どもたちの前に立っているくせに、海では呼吸の仕方すらわからないのだと思うとちょっと笑えた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
島猫たちのエピソード2025
BIRD
エッセイ・ノンフィクション
「Cat nursery Larimar 」は、ひとりでは生きられない仔猫を預かり、保護者&お世話ボランティア達が協力して育てて里親の元へ送り出す「仔猫の保育所」です。
石垣島は野良猫がとても多い島。
2021年2月22日に設立した保護団体【Cat nursery Larimar(通称ラリマー)】は、自宅では出来ない保護活動を、施設にスペースを借りて頑張るボランティアの集まりです。
「保護して下さい」と言うだけなら、誰にでも出来ます。
でもそれは丸投げで、猫のために何かした内には入りません。
もっと踏み込んで、その猫の医療費やゴハン代などを負担出来る人、譲渡会を手伝える人からの依頼のみ受け付けています。
本作は、ラリマーの保護活動や、石垣島の猫ボランティアについて書いた作品です。
スコア収益は、保護猫たちのゴハンやオヤツの購入に使っています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
世界の終わりにキミと
フロイライン
エッセイ・ノンフィクション
毎日を惰性で生きる桐野渚は、高級クラブの黒服を生業としていた。
そんなある日、驚くほどの美女ヒカルが入店してくる。
しかし、ヒカルは影のある女性で、彼女の見た目と内面のギャップに、いつしか桐野は惹かれていくが…
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
