ネオンブルーと珊瑚砂

七草すずめ

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二日目

7 * 海を歩いて海を飛ぶ

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 前回のグアムでも、シーウォーカーに行ったらしい。その写真はわたしも見たことがあった。印象は、なんというか、宇宙飛行士の顔はめ看板~海中にて~、というかんじだ。もしくはCG合成。
 シーウォーカーは、酸素の供給されるヘルメットをかぶって海中を歩く。海の水が綺麗に澄みすぎていて、魚も嘘のようにたくさん泳いでいるので、写真が作り物のように見えてしまうのだ。
 ワゴン車に乗って、シーウォーカー体験できる海岸まで運ばれる。待っていたのはザ・陽気なアメリカ人といったふうの男たちだった。
 半年前のシーウォーカーについて、父も母も「海岸に着いてからの待ち時間がものすごく長かった」と語っていた。それなりに待つ覚悟をしていたら、前回とは経営が違うところだったらしく、一秒も待たずしてシーをウォークすることになった。到着して即ウェットスーツ装着。待ってくれ、むしろ心の準備ができていない。
 ヘルメットは思ったよりも重く、大きかった。閉所と狭所が苦手なわたしだが、ヘルメットの下部から手を入れることができるようになっており(耳抜きするから)、パニックにならずに済んだ。
 先頭にひばり、次にわたし、そのうしろに父……と一列になって、ロープをたぐり海の深い方へ歩いて行く。ヘルメットの重さで、体が浮いてしまうこともない。さっきから降っている雨で若干海がにごっているものの、魚を見るには十分な透明度だった。
 インストラクターのお兄さんがたびたび送ってくるハンドサインを確認しながら、水中を進んでいく。水の中なら、英語も日本語もなく、同じハンドサインで話せるのだ。海中はバベルの塔以前の世界だなと思いわくわくする。
 もらった魚肉ソーセージを親指でほぐすと、そこらじゅうの魚が寄ってきた。共食いという言葉が頭の中で点滅するが黙気付かないふりをする。
 インストラクターの一人が、バブルリングを作って見せてくれた。指だけを使って様々な大きさの輪を作り、こちらに向かって飛ばしてくる。わたしは飛んでくるそれを腕にはめたり、指にはめたりしてみた。バブルリングのアクセサリーなんて素敵だ。ふと横を見たら父も同じことをしていた。ペアリングのできあがりだ。
 見て見て、というハンドサインに再び目を向けると、今度は口を使ってバブルリングを作り、魚肉ソーセージのかけらを巻き込ませる様子を見せてくれた。ソーセージが高速回転しながら海面に向かって昇っていく様はシュールであった。
 最も深いところまで行くと、一人ずつ、思い切りジャンプさせられた。ふわりと体が浮き上がり、重みでゆっくり底に戻ってくる感覚は、さながら宇宙で飛び跳ねているようだった。宇宙で飛び跳ねたことないけど。
 そんなシーウォーカーだけでもお腹いっぱいなのに、終了後はシュノーケルをすることができた。少し休憩してから行きたかったが、休憩スペースにいるとインストラクターからひたすら水とお茶とジュースを勧められるので、すぐにシュノーケルセットを身につけ海に出る。あんまり水分をとりすぎるとまたトイレに行きたくなるので。
 シュノーケルはライフジャケットを着ておこなうので、とにかく体が浮いた。海底を歩いたさっきまでとは正反対だ。空を飛ぶ気分でふわふわ浮かぶ。
 ある程度の深さのところに到達したので、さあいよいよ海の中を見ようとシュノーケルマスクを装着し、水の中で息を吸い込んだら海水が鼻から入ってきた。しょっぱさにむせ、慌てて顔を上げる。
「鼻はがまんよ」
 近くにいたインストラクターさんに言われ、シュノーケルは鼻で息をしないと初めて知る。陸では偉そうに子どもたちの前に立っているくせに、海では呼吸の仕方すらわからないのだと思うとちょっと笑えた。
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