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四日目
15 * おはようグアム
しおりを挟む思えばこれまで、朝食をまともに摂った日がなかった。アメリカの朝ごはんといえばなんだろう、パンケーキやワッフル、オムレツやシリアル。そんなところだろうか。
ということで、最終日の朝は、そんなものが食べられる店へ行くことにした。チェックアウトは全て済ませ、荷物はロビーに預けて、歩いて店に向かう。
「一人ひとつ食べるのは、絶対無理」
というのが、グアム二回目の方々の見解だった。前回はそれで、食べきるのに苦労したらしい。少し考え、オムレツ二種類、パンケーキ二種類を頼み、七人でシェアすることにした。いろんな味が食べられる。
父が推したちょっと辛めのオムレツは、中でとろりと溶けるチーズがおいしかった。名前に惹かれて頼んだチーズバーガーオムレツも、挽肉たっぷりでピクルスがきいていて、癖になりそう。そしてオムレツには、フルーツの盛り合わせが付いてくる。
ココナッツパンケーキとストロベリーバナナパンケーキは、生地にもココナッツやバナナが練り込まれていた。好きなシロップをかけて変化を楽しむこともできるのがいい。
幸せな気分で平らげながら、ああ、わたしいま海外にいるんだなあ……、と最終日にして改めて実感する。この派手な味は、日本で食べるものとはまた違う。
さて、充実した朝食を済ませ、これから昼食までの時間を買い物にあてようとカフェを出たのだが、時刻はまだ九時、周辺の店は未だクローズのままだった。ほとんどが十時開店らしい。
カフェのはしごをしようかとも思ったが、お腹をすかせておかなければ昼食が食べられなくなってしまう。なにしろ最終日の昼食は、念願のハンバーガーなのだ。ジャンキーなハンバーガーが大好きなわたしにとって、外国のそれを食べるのは夢そのものだ。
そこで、わたしたちはある場所へ行くことを決める。ホテルのプールだ。二日目に遊んだときに見かけた、プールサイドにある大きなジェンガがずっと気になっていたのだ。父はこの時間でもあいているコンビニ的な店で買い物を済ませたいとのことだったので、父以外の六人でホテルのプールへ向かう。
たくさんの人たちが水着でプール遊びをする中、洋服を着た六人組が、プールサイドをずかずか歩く。辿りついた先にあったジェンガのタワーは、初めの時点で腰の高さほどまであるものだった。
レンガ型の木は、ひとつが成人男性の靴くらいの大きさで、意外と安定感がある。おそるおそる積み上げていくにつれて、高さはどんどん増していった。
ブロックの引き抜き方には、性格が出ると思う。せーので思い切り引き抜くつぐみに、じわりじわりと抜くひばり。抜きやすいブロックをうまいこと引き当てちゃう羽斗と、どれを抜こうかなかなか決めきれずいろいろやってみる母。つぐみの彼氏はよく観察してから目星をつけるタイプで、わたしは確実に引き抜けそうな物を見つけるまで挑戦できないタイプだ。
へその高さくらいまで積み上がった頃、結構な無茶をしても倒れないことに気が付いたので、ルール改正をおこなうことにした。
大きさに怯んだわたしたちは今まで、ジェンガの公式ルールを完全無視し、タワー全体をおさえながらブロックを抜いていたのだ。それを禁止とする。
また、ハードモードということで、一度さわったブロックは責任を持って引き抜くこと、というルールも課された。これはかなり難易度が高い。どう考えても引き抜けないブロックでも、さわってしまったら最後、どうにかしてそれを抜かなければならない。
そんな厳しいルールだったが、なんとかターンがまわっていく。既に高さは胸のあたりまできていて、緊張感もどんどん高まっていた。無事自分のターンを終えると、倒せ、終わりにしてしまえ、と次の人に呪いをかけてしまう。
数分後、ブロックが十字に重なっているというどう考えても倒れるだろうという状況からつぐみが奇跡の引き抜きを見せ、バトンをもらった母が静かにタワーを倒し、ジェンガ大会は終了した。我が家では、こういうゲームをすると、だいたい母親が負ける。おいしいところを持っていくのだ。
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