ふわり、雨の匂い

七草すずめ

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二.

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    二


 美雨の職場は、大きなショッピングモール内にあるインテリア雑貨店だ。小さなアンティーク風のピアスから、可愛い香水瓶、大きめの家具まで、いろんなものを取り扱っている。好みの物が入荷されると、つい取り置きしてしまうのが美雨の癖だった。
 開店前の準備をしていると、反対側の通りに店を構えるブランドの名札をつけた女の人が怪訝そうな表情でこちらを見ていることに気付いた。
 これだけ広いショッピングモールだと、新しいスタッフが入ることも多く、店の場所がわからず迷ってしまう人も多い。親切心から声をかけると、その人は一瞬びくっと体を震わせ、どこかへ行ってしまった。
 人が親切に言ってやってるのに。心の中でそう毒づきながら、こんなときでも微笑んでしまう自分を苛立たしく思う。
「大川さん! あの、レジの立ち上げお願いできますか?」
 アルバイトの子に声をかけられた。はいはーい、と快く返事をし、準備を再開する。店で働く子たちに、「キレイめ系ファッションが似合うお洒落な社員さん」と憧れられているのを知っていた。美雨は望まれている通りの自分になりきって、開店の放送を待つ。
 昼休みは十二時から、一人一時間ずつ取れることになっている。美雨以外に働くアルバイト二人を先に休憩に入れてあげているので、美雨が昼食をとれるのはいつも二時過ぎだ。
 カップ麺の自販機があるだけのタバコ臭い休憩室に入り、角の席を確保する。大きな声で研修をしている三人の女。下品で派手な笑い方の二人組。食事をする席でファンデーションを撒き散らすおばさん。肩身が狭そうに座る男性。ランチの時間は、ちっとも気が休まらない。
 共用のポットを使い家から持ってきたカップスープにお湯を入れたが、湯気が出ず首をかしげる。スープを触ると、人肌ぐらいのあたたかさ。沸いてないじゃん。美雨は心の中で舌打ちをする。そのまま床に叩きつけたい衝動に駆られつつ、トイレの水道にスープを流した。今日の昼はパンだけで我慢しよう。
 休憩時間はいつも広樹とメッセージのやりとりをしたり、時には電話をしたりしていた。別れてからはすることもなく、SNSをずっと眺めている。二つあるアカウントのうち、ひとつが「美雨」のもので、もう一つが「ミュウ」のもの。「美雨」のアカウントでは、美雨が今まで知り合ってきた人たちが、写真や文で充実した日々をアピールしている。『結婚記念日のディナー! これからもよろしくね』『箱根なう~ 休日よ終わらないで~』
 適当に「いいね」ボタンを押しながらスクロールしていると、琴子の投稿が目に入った。
『懐かしい人の夢を見ました。みんなでいたときのことを思い出して、久しぶりに実家の近くの公園に来ちゃった。このベンチ、懐かしい。』
 写真を見ると、日当たりのいいところに置かれた、ごく普通のベンチが写っていた。三人でよく遊んだ公園のベンチだと、すぐにわかった。懐かしい人。もしかして、美月だろうか。美雨はわずかに表情を曇らせる。
 美雨は、美月が嫌いだ。今でも両親が離婚したのは、美月のせいだと思っている。いつも自分にいじわるをしてきた、双子の妹。琴子はなんでも「美月のしわざ」と冗談を言うけれど、美雨はときどき、「美月の呪い」なのではないかと思うことがある。たとえば、大切にしていた本がなくなったとき。隠していた仕事のミスがなぜか明るみに出てしまったとき。それから、理由もわからず婚約者に振られてしまったとき。
 嫌な気持ちになったのでSNSを見るのはやめ、未読のまま放置していたグループメッセージに返信をすることにした。失恋を慰めてくれた中学生のときの友達三人とのやりとりが、やめどきを見失ったまま続いているのだ。
『だめだ、昼過ぎは眠すぎてコーヒーめっちゃ飲んでる』
『コーヒー飲むと口臭やばくなんない?』
『わかる……わたし飲まないようにしてるー。接客だから口臭はやばい』
 どうでもいい会話に心から嫌気が差すが、優しく返信をする。『わかるわかる。私はコーヒー飲んだ後、ガムかむようにしてる!』
 ため息をついて時計を見ると、休憩時間もそろそろ終わりだった。戻らなくては。美雨は重い腰を上げた。

 帰りの電車で「ミュウ」のアカウントを見ると、朝したおはようという投稿に、いくつかコメントがついていた。『今日もお仕事がんばってね』『次の放送いつだろう? 楽しみにしてます!』『ミュウさんすっかり有名人だねw』
 配信とは違いひとりひとりに名前のあるSNSは、丁寧に対応するようにしていた。いつもなら一人一人にコメントを返していた美雨だけれど、久々だった昨日の配信がそれなりに好評だったのか、今日はコメントがいつもの倍以上ある。よく見る名前のいくつかにのみ返信をし、あとは見ましたのサインとして「いいね」を押す。SNSを閉じ、今度は昼に返信したグループメッセージを確認すると、おかしなことに気がついた。
 昼休みに美雨がメッセージを送ってから六時間は経っているのに、誰の返信もない。自分が送信した時刻の上を見ると、「既読3」の文字。
 何? みんな、読んでおいて無視?
 どうでもいいやりとりしてたくせに、と頭の中で毒づいて、スマートフォンをかばんにしまう。とりあえず、これは今日の配信のネタにしよう。怒りの火種はある意味宝物だった。
 帰宅して食事やら洗濯やらを済ませると、早速パソコンを起動する。明日は遅番だから、昨日より長時間の配信ができそうだ。鼻歌を唄いながら薄化粧をするが、髪は乾かさない。風呂上がりの雰囲気を出したほうが色気があるはずだ。いつものように伊達眼鏡をかけたら、配信開始。
「はーい、こんばんはー! 今日もがんばりま~す!」
 いつもなら、配信を開始して一分ほどでコメントがつくはずだった。それが今日は様子が違う。開始して十秒ほどで、たくさんのコメントが画面が埋めつくした。視聴者数のカウンターも、みるみるうちに数を増やしていく。すごいと思っていた昨日の比ではない。
「わ、どうしたの? 今日すっごい人多い!」
 美雨がコメントを読みきらないうちに新しいコメントがついて、古いものは流れていく。
『今日もブチギレ期待!』『わくわく』『おかしな美少女がいる放送はここですか?』
 あまりの量の文字が流れたせいで、パソコンの動きが遅くなる。処理が追いつかないほどの勢いだ。
「えー? 期待されても……ミュウ、別にキレたりしないよ?」
 にっこり笑ってみせると、今度はまたまたー、とか、よく言うよ、とか、そんなコメントでいっぱいになった。
 今日は初めて見る人も多いみたいだから、最初は普通におしゃべりをして、少し油断させてから、思いきり感情をぶちまけてみよう。そうしたらインパクトがあって、常連になってくれるかもしれない。
「そんなことより、聞いてよ! 今日お仕事の休憩時間に、カップスープを飲もうと思ったの」
 美雨が雑談をしている間も、コメントは途切れない。相槌を打つもの、美雨の容姿の感想を言うもの、美雨を感情的にさせようと煽ったことを言うもの。
「おかしいなーって思って、スープを触って、み、たら……」
 どくん。美雨は表情を作るのも忘れ、一つのコメントに釘付けになった。
『みう、お願いだからもうやめて』
 え? みうって、なに、だれ? これ誰のコメント?
 二百人を超える視聴者は、おびただしい量のコメントをいちいち見ていないようで、「みう」について何か言う人はいなかった。だけど美雨の心音は加速する。誰か、知ってる人が見てる? だれ? もしかして―
 画面に映る自分の顔は、真っ青だった。
「……ごめんね、なんか急に、調子が悪くなっちゃった……。今日はこれで終わりにするね」
 えー、という声が画面いっぱいに流れるが、それに対するリアクションをする余裕もなく、配信を終了させた。せっかくたくさんの人が見ていたけれど、こんな状況で続けられるほどの強い心は持ち合わせていない。美雨はぶるっと体を震わせた。
 履歴をさかのぼり、さっきのコメントをもう一度確認する。みう。間違いなく、私のことだ。まさか、これ……。
「美月?」
 言葉に出すと、さっきよりも大きく心臓が跳ねた。『みう、お願いだからもうやめて』……ずっと見ていたような書き方。今まで冗談半分だった「美月の呪い」が、現実味を帯びていく。
 美月はもしかしたら、一方的に私の行動を全て把握していて、この放送をいつも見ているのかもしれない。ちやほやされている私を見て嫉妬に狂い、私に嫌がらせをしているのかもしれない。母親と琴子の側に居続けている美雨と、そのどちらにも会えなくなってしまった美月。もし逆の立場なら、わたしは美月を怨むだろうか。
 考えれば考えるほど恐ろしくなり、美雨は思わず携帯電話を手にした。怖いときは、一人ではないと思いたい。誰かとのつながりを感じて安心したい。でも、母親に電話をすることはできない。
 無心でかけた電話の先にいたのは、広樹だった。美雨は動揺する。言い訳を用意する間もなかった。
「美雨。どうしたの?」
「あ……ごめん。琴子にかけようと思ってたのに、気が付いたら広樹にかけちゃってたみたい」
 慌てて言ってから、間違えてかけたふりをしている女みたいで嫌だ、と思う。だけど一週間ぶりの声に、ほっとしている自分もいた。美雨は続ける。
「ちょっと琴子に、美月のことで話がしたくて。実は最近、美月が私の居場所とか、いろんなこと知ってるんじゃないかって思うことがあるの……」
「え、美月ちゃんが?」
 広樹の声色が変わったことを、美雨は逃さなかった。
「何?  ずいぶん動揺してるみたいだけど」
 広樹の声を聞いて少しでも浮かれた自分が憎らしく思えた。疑っていたことが現実になっていくのを感じる。
「広樹、いつ美月に会ったの?」
 自分でも驚くくらいの冷たい声が出た。広樹にこんな声色を聞かせるのは初めてだった。電話の向こうで、空気が固まるのを感じる。
「なんか吹き込まれた? 私が本当は性格悪くて、ヒステリー持ちの猫かぶりだって、聞いたわけ? そうなんでしょう?」
「……なんで、美月さんが出てくるんだよ」
 広樹の声は震えていた。美雨はますます確信を強める。
「どこにいるの! どうせ知ってるんでしょ、美月の居場所! とぼけないで、裏切り者、死ね死ね死ね!」
 広樹が何かつぶやき、それをかき消す自分の叫び声を聞きながら、止まらない自分の暴走を呪った。電話の向こうは一瞬静まったのち、ツー、ツーと電子音に変わった。
 冷めやまない興奮の中、美雨は涙をこらえることで精一杯だった。


    *

「こっちゃんは美月にもみゅーにもやさしくできるのに、なんでみゅーは美月にやさしくできないのかなぁ?」
 三人色違いで買ってもらったぬいぐるみに話しかける。美雨のはもも色、美月のは黄色、琴子のは水色のくまちゃんだ。
「みゅーと美月がけんかしてると、ももちゃんとレモンちゃんもけんかしちゃうのかな」
 ピンク色のくまは微笑んだまま答えない。美月か琴子がいたら、ももちゃん役になって返事をしてくれるのに。
「おかーさん、美月どこにいったのー?」
「こっちゃんの所に行ったわよ。こっちゃん、美雨も誘ってたじゃない。行かなくていいの?」
 こっちゃんと! 美雨の心臓がどきんと跳ねる。ずるい、みゅーも行きたい!
 これみんなで食べなさい、と渡されたクッキーをポシェットにつめこみ、肩にかける。ももちゃんを抱えて玄関に走って、もどかしい思いで右足、左足と順番に靴を履いていると、横に転がるレモンちゃんに気が付いた。美月、レモンちゃん置いていっちゃったんだ。
 さっきけんかしたばかりだったけれど、美雨は琴子の言葉を思い出し、今日は美月にやさしくしてあげようと決めた。右手にももちゃん、左手にレモンちゃんを抱え、体ごとぶつかって玄関の扉を開ける。
「いってきまーす!」
 公園に向かって走り出す足取りは軽い。心の中に、かわいい色のお花が咲いたような気持ちになった。

    *

 夫が寝たあと、琴子はひとり、リビングでココアを飲んでいた。一度はベッドに入ったものの寝付けなかったのは、今日の散歩のせいだろう。
 今の住まいから実家までは、電車で三十分もかからず、ほとんど自分の生活圏内のような感覚だ。だけどよく遊んだあの公園に行くのは、本当に久しぶりだった。
 公園も、その近くの家も、あまりにも当時のままだった。大きな桜の木の下に、砂場のへりに、ブランコを囲む柵に、小さな美雨と美月がいるような気さえした。
 そうだ、あのブランコ。
 懐かしいベンチに腰かけた琴子は、冬の空気で鮮やかに見える青空を仰ぎ、今年のお盆は必ず休みを取って美月のもとへ行こうと心に決めた。命日に行ってやれなかったことが、心に引っかかっていたのだ。
「まだ起きてるの?」
 眠そうな目のまますり足でリビングに入ってきた夫を見ると、肩の力が抜けた。気が張っていたのだと気付く。
「うん、もう少しで寝るから」
 ごめんね、と付け加えると、うん、と子供のようにつぶやいて、夫は寝室へ戻った。後ろ姿を見送りながら、美雨もこんな人と一緒になって、幸せになれればいいのに、と思う。どうして別れてしまったのだろう、広樹くんとはうまく行っていると思っていたのに。
 そんなことを思っていたから、鳴り始めた携帯電話に「広樹くん」と表示されているのを見て驚いた。電話がかかってきたことなんて、美雨を介して連絡先を交換してから一度もなかったのに。
「もしもし、広樹くん? どうしたの?」
「琴子さん。急にごめんなさい。さっき美雨から電話があったんだけど、様子がおかしくて……」
「様子?」
 ひょっとして、ヒステリーを起こしたのだろうか? そうでなくとも、何らかの形で、広樹くんに感情を見せたのだろうか。
「いや、違うんです。ヒステリーを起こすことがあるのは知ってるし、見たことあります。だけど今は、そうじゃなくて……」
 見たことある? 意外な言葉に琴子は驚くが、続きを言い淀んでいる広樹を黙って待つ。
「あの、……美月さんって、生きてるんですか?」
「え?」
 予想外の名前に、心臓がどきりとする。
「もしかして、美雨から何も聞いてない?」
「いや。婚約前に一度、話は聞いたんです、小さい頃に亡くなった双子の妹がいるって。だけど」
 電話の向こうで広樹は息を呑む。琴子も身動きができなかった。
「さっき言われたんです。お前、美月に会ったんだろう、って」
 背筋に冷たいものが走った。広樹の声は震えている。
「美月に何か吹き込まれたんだろう、って怒鳴られた。琴子さん、美月さんって本当は生きてるんですか?」
 どっちなんですか、と聞く広樹は消耗しきっている様子で、これは電話で済ませられな話だと覚悟を決めた。
「……ちょっと、気持ち整理させて。明日の朝一番で、うちに来られない?」
 絞り出した自分の声も震えていたが、それが何に対する恐怖なのかわからなかった。美月はとうの昔に、亡くなっている。それは、私と美雨が一番よくわかっている。
 電話を切ってからも、しばらくそこを動けなかった。この底冷えするリビングと夫の眠るあたたかな寝室が、同じ世界にあるとは思えなかった。

    *

 何度目かわからない目覚ましのスヌーズを止めながら、今日くらいは休んでもいいだろう、と思う。
 昨日の配信を思い出すと、恐怖で吐き気がした。幸い今日は月曜日、平日だ。一日くらいなら、休んでもそこまで支障はないはずだろう。
「朝からごめんなさい、大川です。実は起きたときから吐き気がして……申し訳ないんだけど、店舗に応援に行ってもらえませんか? バイトの子がほとんどやってくれると思うから……」
 わざと横になったまま電話をする。嘘はついていない。人の良い本社勤務の同期が代役を引き受けてくれ、心が少し軽くなった美雨は寝そべったまま伸びをした。子供の頃、たいした熱もないのに学校を休めたときの気持ちが思い出される。
 とはいえ、体調不良で休んだ以上は外出するわけにもいかない。となると、できることと言えば一つしかなかった。美雨はパソコンの電源を入れる。
 本当に昨日のコメントが美月のものなのか確かめたいという気持ちもあったし、配信でした嫌な思いは配信でしか消せないという思いもあった。それに、無理にでも気分を上げないと、きっとこの靄は晴れないままだ。自分に言い聞かせながら薄く化粧をし、ブラウスとスカートに着替えたら、気持ちも乗ってきた。
 今日も視聴者数は多かったが、平日の朝ということもあり、とりとめのない会話で時間は平和に過ぎていった。三十分を過ぎて終了したらまた次を開始して、それが終わればまた次……と繰り返し、もう何時間が過ぎただろう。さすがに視聴者も美雨も飽きてきたけれど、昼間からヒステリーを起こす気にはなれない。
「じゃあここからは、質問タイムにしようかな! 何か聞きたいことがある人は、ぜひコメントくださいね。できるだけ答えます」
 質問だったら、視聴者とつながりつつ時間を潰せるだろう。『前みたいな配信はしないの?』というような質問は無視して、他愛もないものにだけ答えていく。
「好きな食べ物は、うーん、いろいろあるけど……寒いし今はキムチ鍋とか食べたいかな?」
「出身は東京ですー、都会でも田舎でもないあたり」
 テンポよく進んだ質問タイムは、あるコメントにリズムを狂わされる。
『兄弟いるの?』
「きょうだい?」
 読み上げてしまってから、しまったと思う。画面に映っている自分の顔が強ばっていて、余計に焦る。まずい、こんなのかわいくない。
「うん、一応妹がいるけど……もう会えなくなっちゃったんだよね」
 無理に口角を上げ、努めて明るく振る舞ってみせる。普段と違うその様子に何か感じたのか、それについて深く質問する者はいなかった。
「でもね、ここだけの話……ミュウ、知らないうちに妹の反感買っちゃったのかもしれないの。最近いろいろおかしくて」
 触れられないとそれはそれで、物足りない気持ちになる。美雨は自分から、話を掘り下げた。
「婚約してた彼に、急に振られちゃったんだよね。私がヒステリー起こすような女だって、もしかしたら妹がばらしたのかもしれない。それからこれも最近なんだけど、友達から急に返事が来なくなったり、知らない人から変な目で見られたり……。あとは、カップ麺作ろうと思ったらお湯がぬるかったし、それから……」
 こうやってパソコンに向かって延々と話していると、聞く人などいない壮大な独りごとを言っているような気持ちになる。だけど今さら、この舞台から降りる気にはならない。
 そんな美雨を画面越しに、凍る思いで見つめていたのが、琴子と広樹だった。
「琴子さん、俺、美雨が何を言っているのかわからない」
 琴子のノートパソコンから目を逸らすようにして、広樹が言う。
「ごめんなさい、私もちょっと……そもそも美雨、こんなこといつからやってるの? 広樹くんはいつから知っていたの?」
「俺がこれ見つけたのは、別れる二週間くらい前です」
 そのときの記憶が蘇り、広樹は思わずため息をこぼした。
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