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12.学祭まであと半月
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十一月に入った途端、一気に冷え込んだ。学祭まであと半月となった日曜日、去年買ったトレンチコートを羽織って、桃葉は大学の構内を歩いていた。
「あ、桃葉!」
手を振った桃葉に真っ先に気付いたのは美波で、ぴょんと跳ねるように立ち上がると、こちらに向かって駆けてきた。
「うわ、なんか、すごく久しぶりなかんじがする!」
大げさにハグをして、ふたりは喜びあう。マフラーまでしている桃葉に対して、美波は薄いトレーナー一枚で、そのうえ額に汗をにじませていた。
「よかった、来てくれて。まだ半月あるから、これからがんばれば大丈夫だよ」
三人分の荷物が置かれたコンクリートの上に、桃葉もトートバッグを置く。若菜は優しい口調で、そう桃葉をなぐさめた。しかし、
「まあ、これから毎日来られればだけど」
相変わらずの厳しい口調は雪子で、少し怒っているようにも、悲しんでいるようにも見えた。
「しょうがないじゃない、体調よくなかったんだよ? むしろ、本番の半月前に回復するなんて、えらいよ!」
一生懸命かばう美波に、桃葉は罪悪感を覚えながら、それでも謝ることはなく、これからがんばるからお願いします、と頭をさげた。
「じゃあ、まずは踊るから見てて。そのあと振り落としするけど、三人はこれだけ仕上がってるんだってこと理解して、あと二週間は死ぬ気でがんばってね」
話しながら、雪子はスピーカーにスマホを接続し、楽曲の用意をする。冷たいなあ、と二人は苦笑いして、初めのフォーメーションに立つ。
懐かしくすら思える、カーリー・レイ・ジェプセンの「Call Me Baby」。ダンスはキュートでかっこよくて、いつか桃葉が一人で振り付けを考えていたそれとはレベルが違った。
そして、それよりも驚きだったのが、ダンスそのものの完成度だった。三人の動きがぴたりと揃っており、立ち位置も次々に入れ替わる。コートを着ていても、自分の腕に鳥肌が立っているのがわかる。
「どう、がんばったでしょ、わたしたち」
三分少しの曲だが、踊り終えた三人は、ぜえぜえと息を切らしていた。
「二週間で覚えられるかな、本当に」
桃葉が思わず弱音を吐いてしまうくらい、完成したそれは、難易度の高いものに思えた。
「覚えられるかな、じゃなくて覚えるんでしょう」
雪子がぴしゃりと言い放つ。頭の中で、スイッチが入った感触がした。
「わかった、今日と明日で、全部覚える」
急に桃葉の口から飛び出した強気な発言に、雪子の眉があがる。
「まあ、無理せずやっていこうよ! わたしたちも、まだまだのところ多いし」
美波の明るい声で、雪子はふっと表情をゆるめた。そして、
「厳しくするからね」
と桃葉を指さすと、パーカーの袖をまくり、気合いを入れた。
「あ、桃葉!」
手を振った桃葉に真っ先に気付いたのは美波で、ぴょんと跳ねるように立ち上がると、こちらに向かって駆けてきた。
「うわ、なんか、すごく久しぶりなかんじがする!」
大げさにハグをして、ふたりは喜びあう。マフラーまでしている桃葉に対して、美波は薄いトレーナー一枚で、そのうえ額に汗をにじませていた。
「よかった、来てくれて。まだ半月あるから、これからがんばれば大丈夫だよ」
三人分の荷物が置かれたコンクリートの上に、桃葉もトートバッグを置く。若菜は優しい口調で、そう桃葉をなぐさめた。しかし、
「まあ、これから毎日来られればだけど」
相変わらずの厳しい口調は雪子で、少し怒っているようにも、悲しんでいるようにも見えた。
「しょうがないじゃない、体調よくなかったんだよ? むしろ、本番の半月前に回復するなんて、えらいよ!」
一生懸命かばう美波に、桃葉は罪悪感を覚えながら、それでも謝ることはなく、これからがんばるからお願いします、と頭をさげた。
「じゃあ、まずは踊るから見てて。そのあと振り落としするけど、三人はこれだけ仕上がってるんだってこと理解して、あと二週間は死ぬ気でがんばってね」
話しながら、雪子はスピーカーにスマホを接続し、楽曲の用意をする。冷たいなあ、と二人は苦笑いして、初めのフォーメーションに立つ。
懐かしくすら思える、カーリー・レイ・ジェプセンの「Call Me Baby」。ダンスはキュートでかっこよくて、いつか桃葉が一人で振り付けを考えていたそれとはレベルが違った。
そして、それよりも驚きだったのが、ダンスそのものの完成度だった。三人の動きがぴたりと揃っており、立ち位置も次々に入れ替わる。コートを着ていても、自分の腕に鳥肌が立っているのがわかる。
「どう、がんばったでしょ、わたしたち」
三分少しの曲だが、踊り終えた三人は、ぜえぜえと息を切らしていた。
「二週間で覚えられるかな、本当に」
桃葉が思わず弱音を吐いてしまうくらい、完成したそれは、難易度の高いものに思えた。
「覚えられるかな、じゃなくて覚えるんでしょう」
雪子がぴしゃりと言い放つ。頭の中で、スイッチが入った感触がした。
「わかった、今日と明日で、全部覚える」
急に桃葉の口から飛び出した強気な発言に、雪子の眉があがる。
「まあ、無理せずやっていこうよ! わたしたちも、まだまだのところ多いし」
美波の明るい声で、雪子はふっと表情をゆるめた。そして、
「厳しくするからね」
と桃葉を指さすと、パーカーの袖をまくり、気合いを入れた。
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