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第1章
ならば仇を4
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魔物、魔獣、そして魔人。
どれも普通の生物とは違い、魔力を糧とする生物である。
魔性生命体と呼ばれる"それら"は、生物学者に言わせればとても歪な存在であるらしい。
それらは生命を維持する組織を持っている。
だが、それはあくまでも体内に存在しているだけであり、実際に活動しているわけでは無い。そもそも生命維持組織の"ようなもの"まるで体内をかき混ぜたような配置で埋め込まれているだけである。
それらが体を維持し、動き、能力を行使する際、どこからエネルギーを得ているのか。それこそが魔力である。
魔力を使い体を得、魔力を消費し運動を可能とする、そして人の使う魔術に酷似した能力を行使する。
そんな全ての活動に魔力を必要とする魔性生命体だが、致命的な欠点を持っていた。
一般的に人間やその他の生物が生息し、海と陸と空があるこの世界を"表層世界"と呼ぶ。
表層世界に存在する生物は、その殆どが体内で少量の魔力を生成することが可能であり、魔術を行使する際は、体外の魔力を取り込み、自身の生成する魔力と錬成し、魔術の結果として体外へ放出する。
しかし、魔性生命体はそれが出来ない。
魔力を生成する事どころか、体外の魔力を取り込む事が出来ないのだ。
では生命維持に必要不可欠な魔力をどの様に補充するのか。
捕食による経口接種である。
しかし、人間を含む多くの生物は体内で魔力を保持しているとはいえ、その量はとても魔獣の体を維持できる程ではない。
だからこそ魔性生命体は生物の最も魔力濃度の高い部分を好んで喰らう。
殆どの生命において最も魔力濃度の高い部分、唯一表層世界に縛られない部分。魔性生命体が最も知覚しやすい部分。
魂と呼ばれる物だ。
魂を喰らう魔性生命体の中でも特に生体の解析が進んでいないのが魔人である。
魔人はそもそも存在自体が稀有である。
大きく分けて2種類存在する魔性生命体。
一つ目は最も純粋な魔性生命体にして極めて強力な存在である、魔界生物。
魔界生物に関する説明はそう難しくない、何らかの魔力異常などにより、魔界と表層世界を隔てる壁に穴が空くなどして通り道が生じ、そこから出現するのが魔界生物である。
2つ目の魔性生命体、それは変異生物に分類される物だ。
同じく何らかの魔力的要因により表層世界に生を受けた生物がその生命に異常を起こし、その生体を魔性生命体へと変異させたものだ。
この場合多くの原因は悪魔や悪魔崇拝系統の人間により、意図的に変異させられるものと、自然界における魔力異常や魔力災害に巻き込まれ、魂がそれに反応し変異を起こすケースがある。
しかし、どちらのケースにおいても特に異質なのが魔人である。
魔術を意図的に扱うことのできる人間、もしくは亜人種は、その魂を明確に表層世界に持ち合わせているものである。
それは表層世界では不安定な魔力的な存在である魂を、体がしっかりと示しつけている証であり、人間種の非変異性の象徴でもある。
もちろん、魔界生物としての魔人は存在するし、歴史の中でも悪魔に並ぶ存在として描かれている。
しかし、変異生物としての魔人は通常では存在し得ない。
強力な魂を持つ人間種を魔人へ変異させるなど、易々とできる事ではない。
しかし、問題は成功してしまった時だ。
強力な魂を持ち、魔力を魔術として操ることのできる人間種。
その人間種が、魂を変貌させ魔力で持ってその体を構成すればどうなるのか、その上元々の肉体が英雄と呼ばれるほどの強者であれば、いったいどれほどの物になるのか。
そしてなにより、人間種の最も優秀な部分。
考える力、学ぶ力。
本能の赴くままに魂を喰らう他の魔性生命とは違い、その渇望を知恵と力で持って潤わさんとする。それが魔人であり、魔性生命体の中でも最も恐れられている存在である。
魔人とガロの殴り合いは次第に激しさを増していった。
その力と速度を兼ね備えた隕石の様な拳は、辺りの石や瓦礫を吹き飛ばし、キャロルが魔術によって守らなければ、その場にいたものの半数はすでに肉片へ姿を変えていただろう。
初めはガロが優勢に見えた戦闘も、今となっては互角。
いや、キャロルの支援を受けている以上、ガロ単体ではむしろ劣勢になりつつあった。
どれも普通の生物とは違い、魔力を糧とする生物である。
魔性生命体と呼ばれる"それら"は、生物学者に言わせればとても歪な存在であるらしい。
それらは生命を維持する組織を持っている。
だが、それはあくまでも体内に存在しているだけであり、実際に活動しているわけでは無い。そもそも生命維持組織の"ようなもの"まるで体内をかき混ぜたような配置で埋め込まれているだけである。
それらが体を維持し、動き、能力を行使する際、どこからエネルギーを得ているのか。それこそが魔力である。
魔力を使い体を得、魔力を消費し運動を可能とする、そして人の使う魔術に酷似した能力を行使する。
そんな全ての活動に魔力を必要とする魔性生命体だが、致命的な欠点を持っていた。
一般的に人間やその他の生物が生息し、海と陸と空があるこの世界を"表層世界"と呼ぶ。
表層世界に存在する生物は、その殆どが体内で少量の魔力を生成することが可能であり、魔術を行使する際は、体外の魔力を取り込み、自身の生成する魔力と錬成し、魔術の結果として体外へ放出する。
しかし、魔性生命体はそれが出来ない。
魔力を生成する事どころか、体外の魔力を取り込む事が出来ないのだ。
では生命維持に必要不可欠な魔力をどの様に補充するのか。
捕食による経口接種である。
しかし、人間を含む多くの生物は体内で魔力を保持しているとはいえ、その量はとても魔獣の体を維持できる程ではない。
だからこそ魔性生命体は生物の最も魔力濃度の高い部分を好んで喰らう。
殆どの生命において最も魔力濃度の高い部分、唯一表層世界に縛られない部分。魔性生命体が最も知覚しやすい部分。
魂と呼ばれる物だ。
魂を喰らう魔性生命体の中でも特に生体の解析が進んでいないのが魔人である。
魔人はそもそも存在自体が稀有である。
大きく分けて2種類存在する魔性生命体。
一つ目は最も純粋な魔性生命体にして極めて強力な存在である、魔界生物。
魔界生物に関する説明はそう難しくない、何らかの魔力異常などにより、魔界と表層世界を隔てる壁に穴が空くなどして通り道が生じ、そこから出現するのが魔界生物である。
2つ目の魔性生命体、それは変異生物に分類される物だ。
同じく何らかの魔力的要因により表層世界に生を受けた生物がその生命に異常を起こし、その生体を魔性生命体へと変異させたものだ。
この場合多くの原因は悪魔や悪魔崇拝系統の人間により、意図的に変異させられるものと、自然界における魔力異常や魔力災害に巻き込まれ、魂がそれに反応し変異を起こすケースがある。
しかし、どちらのケースにおいても特に異質なのが魔人である。
魔術を意図的に扱うことのできる人間、もしくは亜人種は、その魂を明確に表層世界に持ち合わせているものである。
それは表層世界では不安定な魔力的な存在である魂を、体がしっかりと示しつけている証であり、人間種の非変異性の象徴でもある。
もちろん、魔界生物としての魔人は存在するし、歴史の中でも悪魔に並ぶ存在として描かれている。
しかし、変異生物としての魔人は通常では存在し得ない。
強力な魂を持つ人間種を魔人へ変異させるなど、易々とできる事ではない。
しかし、問題は成功してしまった時だ。
強力な魂を持ち、魔力を魔術として操ることのできる人間種。
その人間種が、魂を変貌させ魔力で持ってその体を構成すればどうなるのか、その上元々の肉体が英雄と呼ばれるほどの強者であれば、いったいどれほどの物になるのか。
そしてなにより、人間種の最も優秀な部分。
考える力、学ぶ力。
本能の赴くままに魂を喰らう他の魔性生命とは違い、その渇望を知恵と力で持って潤わさんとする。それが魔人であり、魔性生命体の中でも最も恐れられている存在である。
魔人とガロの殴り合いは次第に激しさを増していった。
その力と速度を兼ね備えた隕石の様な拳は、辺りの石や瓦礫を吹き飛ばし、キャロルが魔術によって守らなければ、その場にいたものの半数はすでに肉片へ姿を変えていただろう。
初めはガロが優勢に見えた戦闘も、今となっては互角。
いや、キャロルの支援を受けている以上、ガロ単体ではむしろ劣勢になりつつあった。
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