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第1章
そして降り立つのは
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狂気に満ちた騒乱の最中だったエウロニの中央広場。
正門から続く大通りの真ん中を、まっすぐと向かってくる3人。
-退け-
たった一言。
3人組の真ん中、銀髪の少女のたった一言で広場の騒動は水を打ったような静寂に包まれた。
近づく3人、その中央にて堂々と歩みを進めるのは、美しい銀髪の少女。
否、"アマミ"
暴徒と化した民衆の手前で歩みを止めたアマミ。
そして彼女が口を開く。
「退け」
世界に響くのは美しい声、その声はとてつもなく美しく、それでいて酷く恐ろしい。
誰も動けぬ空間に、1人の若者の声が問う。
「ガロさん、、、彼女はまさか」
民衆は皆理解していた。
A+ランク冒険者のガロとキャロルが付き従う者の正体を。
なにより、とてもこの世のものとは思えない美しさ。
彼女が何者かどうかなど、考えるまでもなかった。
しかし彼は問うてしまった。
そしてその問いに答えるのはガロではなく、その相方。
「アマミ様に無礼です。こちらのお方こそ、エウローンの危機を退けてくださったかの偉大なる存在です。その行手を阻むものなら、例え相手が一般市民であろうと私は容赦を-」
「貴様の持ち寄った酒、なかなか良かったぞ」
怒りを露わにしたキャロルの、その言葉を遮り話を始める。
「貴様らは我を神だとそう言ったな、それは間違いでは無い」
エウロニの人々に向けた少女の言葉に、彼らの目は輝く。
自分たちの信仰は無駄ではなかった、間違ってはいなかった。
神が、自分たちを救ってくれたのだと。
しかしアマミは無表情に言葉を続ける。
「だが貴様らは大きな間違いを起こしている。他の神を侮辱した事だ」
続くアマミの言葉に、耐えられなくなった若者が叫ぶ。
「しかし彼らの信じる神は私たちを見捨てた!!」
アマミの言葉を遮った愚か者に、キャロルの向ける目線は冷たい。
A+ランク冒険者の殺気を感じた若者は、先ほどまでの勢いが嘘のように縮こまる。
静かになったことを確認し、アマミが続ける。
「見捨てたと、貴様は神に何かをしたのか?貸しでもあるのか?貴様のそれはあまりに都合が良く無いかな。神に祈り、叶わなければ神を恨み。つまりは自身の無力の結果を他人に八つ当たりしているわけだろう。」
淡々と語られたアマミの言葉に人々は次第に苛立ちを覚える。
そして、先の暴動で溜まり切ったエネルギーは、ここで再び蒸し返す。
「黙って聞いていれば!」
「何様のつもりだ!」
自らの主人への無礼に、キャロルが魔力を練り始める瞬間。
凄まじい威圧感が周りの人間に襲いかかる。
「随分な口を聞くのだな、若造」
アマミを中心に空気が黒ずみ始める。
「愚かさの対価をその身で払うがいい」
空気を漂っていた黒ずみは、途端に男の体へと流れ込む、そして。
男が倒れた。
ドッと人の集まりが割れる、その目には怯えの色が映る。
目の前の少女への怯え、生物としての本能的な恐怖。
人が退き、空いた道を堂々と歩く3人。
しかし、彼らに向けられるのは怯えや恐怖の目だけでは無い。
森で迷子になった子とその親、山で遭難していた男性、難病だった孫を持つ者。
それは怯えでも恐怖でも尊敬でもなく。
畏敬の念、大いなる存在への畏れと信仰。
そして、エウロニ城塞の中層の窓から、広場の騒動の一部始終を眺めていた男もまた、強い畏敬の念を抱いていた。
男の名はリヒト・エウロニアル、かの災厄に家族を奪われた者だった。
正門から続く大通りの真ん中を、まっすぐと向かってくる3人。
-退け-
たった一言。
3人組の真ん中、銀髪の少女のたった一言で広場の騒動は水を打ったような静寂に包まれた。
近づく3人、その中央にて堂々と歩みを進めるのは、美しい銀髪の少女。
否、"アマミ"
暴徒と化した民衆の手前で歩みを止めたアマミ。
そして彼女が口を開く。
「退け」
世界に響くのは美しい声、その声はとてつもなく美しく、それでいて酷く恐ろしい。
誰も動けぬ空間に、1人の若者の声が問う。
「ガロさん、、、彼女はまさか」
民衆は皆理解していた。
A+ランク冒険者のガロとキャロルが付き従う者の正体を。
なにより、とてもこの世のものとは思えない美しさ。
彼女が何者かどうかなど、考えるまでもなかった。
しかし彼は問うてしまった。
そしてその問いに答えるのはガロではなく、その相方。
「アマミ様に無礼です。こちらのお方こそ、エウローンの危機を退けてくださったかの偉大なる存在です。その行手を阻むものなら、例え相手が一般市民であろうと私は容赦を-」
「貴様の持ち寄った酒、なかなか良かったぞ」
怒りを露わにしたキャロルの、その言葉を遮り話を始める。
「貴様らは我を神だとそう言ったな、それは間違いでは無い」
エウロニの人々に向けた少女の言葉に、彼らの目は輝く。
自分たちの信仰は無駄ではなかった、間違ってはいなかった。
神が、自分たちを救ってくれたのだと。
しかしアマミは無表情に言葉を続ける。
「だが貴様らは大きな間違いを起こしている。他の神を侮辱した事だ」
続くアマミの言葉に、耐えられなくなった若者が叫ぶ。
「しかし彼らの信じる神は私たちを見捨てた!!」
アマミの言葉を遮った愚か者に、キャロルの向ける目線は冷たい。
A+ランク冒険者の殺気を感じた若者は、先ほどまでの勢いが嘘のように縮こまる。
静かになったことを確認し、アマミが続ける。
「見捨てたと、貴様は神に何かをしたのか?貸しでもあるのか?貴様のそれはあまりに都合が良く無いかな。神に祈り、叶わなければ神を恨み。つまりは自身の無力の結果を他人に八つ当たりしているわけだろう。」
淡々と語られたアマミの言葉に人々は次第に苛立ちを覚える。
そして、先の暴動で溜まり切ったエネルギーは、ここで再び蒸し返す。
「黙って聞いていれば!」
「何様のつもりだ!」
自らの主人への無礼に、キャロルが魔力を練り始める瞬間。
凄まじい威圧感が周りの人間に襲いかかる。
「随分な口を聞くのだな、若造」
アマミを中心に空気が黒ずみ始める。
「愚かさの対価をその身で払うがいい」
空気を漂っていた黒ずみは、途端に男の体へと流れ込む、そして。
男が倒れた。
ドッと人の集まりが割れる、その目には怯えの色が映る。
目の前の少女への怯え、生物としての本能的な恐怖。
人が退き、空いた道を堂々と歩く3人。
しかし、彼らに向けられるのは怯えや恐怖の目だけでは無い。
森で迷子になった子とその親、山で遭難していた男性、難病だった孫を持つ者。
それは怯えでも恐怖でも尊敬でもなく。
畏敬の念、大いなる存在への畏れと信仰。
そして、エウロニ城塞の中層の窓から、広場の騒動の一部始終を眺めていた男もまた、強い畏敬の念を抱いていた。
男の名はリヒト・エウロニアル、かの災厄に家族を奪われた者だった。
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