骸の守神

東方守人

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第1章

神と望まれるのなら

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「つまり、貴方様がかの救世主という事でしょうか」

3人の強者を前にして問うのは、エウローン地方統括領主補佐"リヒト・エウロニアル"

「ええ、真偽に関してはこの私、A+ランク冒険者キャロルが保証します」

形式上問う形にはなったものの、リヒトはもはや疑ってなどいない。

A+ランク冒険者のガロとキャロルが、かの救世主に尽くしているのは、エウロニに住む者のほとんどが知っている。そしてなにより、目の前の少女が纏う力。

圧倒的な力の差。

それなりに実力のあるリヒトだからこそわかる力。

その感覚が、目の前の少女の正体を証明していた。




「初めましてかな、青年」

ふと、思考に耽っているリヒトに声が届く。
先程まで沈黙を守っていた相手であっただけに少し驚くリヒト。

「いいえ、実際には貴方様が降り立った際、一度そのお姿を拝見しておりますので、初めてではございません」 

「む、そうか。まあいい、私は冒険者になる、優遇してくれるようによろしく頼むぞ」


予想が外れたことに眉を顰めるその表情さえ、圧倒的な美しさの上では魅力を損なう理由にはならない。

謙虚さなどかけらもない、それは自分達が優遇されて当たり前だと分かっている様。圧倒的な上位存在である事の表明。
上位貴族であるリヒトにそんな態度を取れるのは国王とそれに連なるものくらいである。


そこまで考えてリヒトは自身を諌める。

守るべき国土が蝕まれ、我が領土の民が飢えに苦しむ中何の支援も寄越さなかった王室。
そんなものと我が領土の救世主を同格に捉えるなど無礼にも程がある。

やや間をおいてリヒトは答える。

「おまかせください。我が弟にも、、、いいえ、皆に伝えましょう」 







その夜、エウローン地方にて最も多くの領民を抱えるエウローン領。

その領都であるエウロニには、エウローン地方の領主のほとんど全員が集まっていた。





エウローン地方の最重要都市エウロニ。

その中心部に堂々と聳え立つエウロニ城塞。

未だ半壊の傷の癒えぬ城塞では、健在であった東側の食堂に、エウローン地方の領主達が集まっていた。


「今宵、皆に集まってもらったのは極めて重要な案件だ」


統括領主ハルトの横に立ち、声を上げるのはリヒト・エウロニアル。領主補佐としてエウローンの復興に尽力した立役者の1人だ。

「兄さん、僕にも伝えずに全員召集って、、、まさかまた災厄が?」

不安げな顔で横に立つ兄を見上げるのは、エウローン地方の総括領主、ハルト・エウロニアル。
思い出したくもない、一月ほど前の出来事。それがハルトの口から出てきた事で、食堂は騒めく。

「もしそのような事があれば、我らは今度こそ一つとなり、立ち向かう所存です」

中でも若い貴族たちが声を上げる、それに続き年配の領主も「自分たちもだ」と声を張る。


騒がしくなった食堂に響く声を張るのはリヒト。

「皆静かに!」


大きく響くその声で静まり返る食堂。
集まった領主をぐるりと見渡すリヒト。

「此度皆に集まってもらったのは、紹介したい者がいるからだ。」

「ここにいる全員にでしょうか?」

兄の瞳からただならぬ気配を感じたハルトは問う。

「ああ、全員にだ」


力強く返すリヒト。

確実に世界を動かすことになるであろう、今夜。

自分がその一端を担うことに若干の不安と恐怖を覚えつつも、やはり興奮は止まない。

緊張によってか乾いた唇に舌を巡らせ、こぅ、と息を吸う。






「救世主様が隣の部屋でお待ちになっておられる、かのお方は自らを神だとお認めになられた。」


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