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○月×日『目撃者①』
しおりを挟む「ちょっと、話あるんだけど」
教室の自分の席に座っていると、懐かしい声に話しかけられ、驚いて顔を上げる。
「……花村さん、」
暫く学校にきてなかった花村さんが教室にいることで、矢野くんをはじめ、回りのクラスメイトが驚いてる。
しかも僕と花村さんは前にこの教室で平手打ち騒ぎをおこしているから、余計に気まづい雰囲気が流れる。
「……あの、」
「顔貸してよ、話あるんだってば」
「ぁ、はい……」
頷きながらも不安で、花村さん越しに矢野くんを覗き見ると、矢野くんもなんとも言えない顔で僕を見てる。
伝わってるかわからないアイコンタクトで"心配しないで"と伝える。
さっさと教室を出ていく花村さんに続いて教室を出る。
どこかの空き教室に連れ込まれるのかと思いきや、花村さんは僕を学校の外に連れてでた。
「あの、花村さん、授業まだあるんですけど……」
「だからなぁに?黙ってついてきなよ」
女王様健在だ。
花村さんは何も変わってない。
自由気ままで、自分のお気に入り以外にはツンケンした態度だし。
僕が好かれてないのは分かるけど、なんかピリピリしてるし、歩くんとの関係は続いてないのかな……。
「ついたよ」
考え事しながら歩いてると、急に足を止められる。
「ここ……」
目の前の建物には見覚えがあった。
ここは以前将平くんと使用したビジネスホテルだ。
花村さんはなんでこんなところに……。
「見ちゃったんだよねー」
急にご機嫌な様子で花村さんが話し出す。
「何日か前の夕方頃、君ここから出てきたでしょ」
「ぇ、……はい、」
こんな時のために裏をかいた作戦なんだ、落ち着いて対応しなきゃ。
「えっと、知り合いが泊まってて……」
「知り合いって、昂平にそっくりな知り合い?」
「え、」
矢野くんにそっくりな……て、将平くんのことだよね。
なんで……なんで花村さん、将平くんのこと…。
僕はことが終わったら帰るけど、将平くんはそのままここに宿泊してる。
花村さんが将平くんを確認できるとしたら翌日のチェックアウトの後くらいだろう。
まさかとは思うけど……、
「別にはってたわけじゃないよ?そこにあるラブホ使った時偶然見ちゃったんだよねぇ。夕方頃君がここから出てきたとこと、朝方に昂平そっくりな男が出てくるとこをさ」
そんな偶然……。
「君がビジネスホテルから出てくるのも変だなぁと思ったけど、昂平にそっくりなあの男を見た時は何かあるなと思っちゃうよねぇ」
すごく、すごく悪いことを企んでるような目で花村さんが僕を見下ろしてくる。
「あの男誰?まさかほんとのソックリさんじゃないよねぇ」
「……えっと、」
「確か昂平て兄弟いたよね。兄貴とか?」
「ぅ……、」
なんて勘が鋭いんだろう。
僕がビジネスホテルから出てきたのと、将平くんがビジネスホテルから出てきた2つを結びつける勘の良さも怖いくらいだ。
「正直にいいな。嘘ついたら、昂平にあることないこと言っちゃうよ?例えば、君がここで男と浮気してたーとか」
それは事実だけど、花村さんにあることないこと言われるのは困る。
花村さんならほんとにやりかねないし、それに、そんなことされたら台無しになる。
こんな形で矢野くんへの仕返しをおわらせる訳にはいかない。
「……2人だけになれる場所に連れていってくれたら、話します」
声が震えないように、気を張って花村さんを見る。
花村さんは少し考えるようにしてから、また自分についてこいと言って歩き出した。
その間、僕は花村さんの後ろを歩きながら、なんて話そうか考える。
とんでもない人に目撃されてしまった。
ラブホテルに泊まってて偶然見かけたなんて、なんてタイミングがいい人なんだろう。
「ほら入って」
今度はアパートの一室の前で立ち止まった。
見覚えがある。
花村さんの部屋だ。
確かにここなら、花村さんの許可がないと誰も入ってこない2人だけになれる完璧な空間だ。
「お邪魔します……」
花村さんに正直に話すか否か、それで今後の矢野くんとの関係が変わる。
僕は腹を括って、花村さんの部屋に足を踏み入れた。
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