暗渠 〜禁忌の廻流〜

角田智史

文字の大きさ
13 / 37

 カルバートが読まれる前に 2

しおりを挟む
 そんな無用な悩みを抱えていた頃に、僕は見つけてしまったのであった。
 山積みの書類の一番下にあった記入済の離婚届けを。

 ある程度の予想はしていた。
 むしろ僕がそういう方向に持っていっていた、という方が正しいだろうか。

 それを見つけてから、ある意味、僕は少しやはり安心したという感覚もあった。
 
 まず、嫁が馬鹿ではなかった事。
 そして、さおりの街へ行こうかと迷った土日に結局は気が向かずに家に留まっていた事。

 毎晩のように飲みに出る旦那、家に帰ってこない旦那。そして「おはよう」と「行ってきます」しか言葉を交わさないこの状況で別れを思いつかない女性はいないだろう。ただ一般の事情と違うのは嫁から僕に対して与えられるものが少ない事であった。
 こんな話の内容で一般的な僕の男性側のイメージでは「別れたら困る」であった。
 それは主に家事の部分であって飯はどうなるんだ、だとか、洗濯はとかそんなイメージが強い。
 ただ、ことうちの家庭においては正直、困る事はなかった。もともと僕の分のご飯は用意されていないし、炊事場の洗っていない食器は平然と1週間溜まっていく一方で放置されており、洗濯物もごみ溜めのように日々積り積もっていく状態で、1週間の内にその状況がごくたまに改善されている事はあるものの、僕が土日の休みの日に溜まった食器を洗い、溜まった洗濯物をたたむ、そんな事は珍しくもなんともない状況であって、例え別々に暮らす事になったとしても僕の方は困る要素が少く、むしろ余計な事を考えてイライラしなくて済むし、家事の仕事としても減るような、そんな感覚だった。
 任せきりになっている子供についても、嫁の感覚と僕の感覚が違いすぎて、何も言う気にならず、むしろ1人で暮らしているその時に子供が遊びにきてくれれば、大事な事を教えていけたりするんじゃないか、そんな気持ちもあった。
 夜働いたり、酒を飲むわけでもなく、昼間にカフェでバイトをしている嫁は21時~20時くらいには床につくのだが、休みの日は子供よりも遅く起きてくる。それは今始まった事ではなく、僕がせかせかと家事をしている横で寝て、全てが終わった頃、昼前に起きてくるのはざらにあった。

 子供達の「ママ起きて、お腹減った。」という言葉は、心から聞きたくない言葉の一つだった。

 よくあるような「ちょっと待ってくれ!」
 そんな言葉はかけら程も思い浮かばずに、僕はそれを見つけた瞬間に、もちろん「やばい!」という気持ちにもなったが、どちらかと言えば心を躍らせたのである。
 確かに様々な要素で、その時の僕はぐらついた事は確かだった。
 そんな中で冷静に考えると、ネックになってきたのはやはり金銭面だった。養育費の事を考えれば今と同じペースで飲みに出る事は控えなければならない状況だった。

 会社を出るそのタイミングでそれを見つけた僕は、その日、
 〔今日で卒業式や、飯食いいこーや〕
 と常連のスナックの一番仲がいいチーママにLINEを送ったのだった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...