19 / 35
3章 俺の彼女は仲良くなりたい
彼女、髪を乾かす
しおりを挟む
「あ......。ごめん、頭洗ってる時に......」
夏鈴は恥かしくなり、慌てて離れる。
そして、それ以降は無言で頭と体を洗った。
それから、二人で湯船に浸かる。
「ねぇ、燐華ちゃん。記憶がないころの私ってどんな感じだった?」
「優しくていい子......。だったよ......」
私をいじめて楽しんでいたなんて口が裂けても言えなかった。
「そっか......ふふ......」
夏鈴は表情にはあまり出さなかったが、嬉しそうだった
「燐華ちゃんとはよく遊んでた感じ?」
「......うん」
よくいじめて遊んでいたと言うことはできない。
「......そっか。ごめんね、全部忘れちゃって......」
「大丈夫、怒ってないから......」
「......ねぇ、これからも昔みたいに......。その、遊んでくれる......?」
「......うん」
「ありがと......!」
その返事を聞いた夏鈴は、とても笑顔だった。
それから、二人は軽く雑談し、風呂を出た。
美湖さんと一緒に心配だという話をしていた時、二人が風呂場から出た音が聞こえてきた。
俺と美湖さんは、すぐに会話を止めた。
それからしばらくすると、タオルを首に掛けた燐華さんと夏鈴さんが出てきた。
「いやーいいお湯でしたよー」
夏鈴さんが髪をタオルで拭きながらソファに座る。
そして、燐華さんも同じようにソファに座った。
「あ、燐華ちゃん! 髪乾かしてあげる!」
夏鈴さんは燐華さんの首にかけてあるタオルを手に取り、髪を拭き始める。
しばらくの間拭くと、夏鈴さんはドレッサーの上に置いてあったドライヤーと櫛を手に取る。
ドライヤーをコンセントに接続し、強にして乾かしていく。
ある程度乾いてきたところで、弱に変更し、櫛で丁寧にとかしていく。
ドライヤーの風に乗り、燐華さんのシャンプーの匂いが俺の鼻まで届いた。
少しだけ甘い香りがするいい匂いだった。
燐華さんの髪をとかすのは初めてのはずなのに、いつもの燐華さんの髪型に近づいていく。
これは、夏鈴さんの知識と、普段から燐華さんのことを気にしているからだろう。
手際よく髪をとかしていき、あっというまに終わってしまった。
「お、お上手ですね......!」
あまりの手際の良さに美湖さんは感心する。
「そうですか?」
上手いことに自覚がないのか、疑問を持っていた。
「うん。夏鈴ちゃん上手だよ......」
燐華さんも褒める。
「そ、そうですか......?」
二人に褒められ、照れる二人。
「それじゃ燐華ちゃん! 次は私の髪お願い!」
「いいけど、私下手だよ......?」
「いいよ! 燐華ちゃんに任せるから!」
「それじゃあ......」
夏鈴さんからドライヤーと櫛を受け取り、同じようにとかしていく。
下手と言った割には、燐華さんも上手だった。
そして、いつもの夏鈴さんの髪型になるように仕上げた。
これは、普段からトラウマである夏鈴さんを想像してしまい、記憶に刻まれているからこその再現度なのか。
俺にはわからなかった。
それから少し雑談をした後、夏鈴さんと美湖さんは帰宅した。
部屋には俺と燐華さんの二人だけになった。
「燐華さん......。その、大丈夫でした......?」
俺は風呂場で二人きりになったことを心配し、話しかける。
「うん。大丈夫だったよ......。むしろ.......。今までより希望が持てたよ......!」
「希望、ですか......?」
「うん。夏鈴ちゃんと仲良くなれる。お話してみて、そういう希望が持てたんだ」
どういう会話があったのかは俺にはわからないが、俺は一安心した。
そして、燐華さんが一歩前に進めそうで心の底から嬉しかった。
「もし、もしね? 夏鈴ちゃんの記憶が戻ったとしても......。それでもやり直せるくらい、上手くやっていけそうだなって思ったんだ......」
「......本当ですか? あんな短時間で何が......」
そんな短時間の間に何があったのか気になった。
「夏鈴ちゃんは記憶が無くて、寂しがってた。それで、唯一覚えている友人......。ではないけど、私がいることを嬉しく思ってた。このまま仲良くなれば、たとえ記憶が戻っても、仲良くしたという思い出で上書きできるんじゃないかって......」
「そう、ですか......」
俺は少し不安もあったが、夏鈴さんを詳しく知っている燐華さんが言うのだ。
おそらく大丈夫なのだろう。
夏鈴は恥かしくなり、慌てて離れる。
そして、それ以降は無言で頭と体を洗った。
それから、二人で湯船に浸かる。
「ねぇ、燐華ちゃん。記憶がないころの私ってどんな感じだった?」
「優しくていい子......。だったよ......」
私をいじめて楽しんでいたなんて口が裂けても言えなかった。
「そっか......ふふ......」
夏鈴は表情にはあまり出さなかったが、嬉しそうだった
「燐華ちゃんとはよく遊んでた感じ?」
「......うん」
よくいじめて遊んでいたと言うことはできない。
「......そっか。ごめんね、全部忘れちゃって......」
「大丈夫、怒ってないから......」
「......ねぇ、これからも昔みたいに......。その、遊んでくれる......?」
「......うん」
「ありがと......!」
その返事を聞いた夏鈴は、とても笑顔だった。
それから、二人は軽く雑談し、風呂を出た。
美湖さんと一緒に心配だという話をしていた時、二人が風呂場から出た音が聞こえてきた。
俺と美湖さんは、すぐに会話を止めた。
それからしばらくすると、タオルを首に掛けた燐華さんと夏鈴さんが出てきた。
「いやーいいお湯でしたよー」
夏鈴さんが髪をタオルで拭きながらソファに座る。
そして、燐華さんも同じようにソファに座った。
「あ、燐華ちゃん! 髪乾かしてあげる!」
夏鈴さんは燐華さんの首にかけてあるタオルを手に取り、髪を拭き始める。
しばらくの間拭くと、夏鈴さんはドレッサーの上に置いてあったドライヤーと櫛を手に取る。
ドライヤーをコンセントに接続し、強にして乾かしていく。
ある程度乾いてきたところで、弱に変更し、櫛で丁寧にとかしていく。
ドライヤーの風に乗り、燐華さんのシャンプーの匂いが俺の鼻まで届いた。
少しだけ甘い香りがするいい匂いだった。
燐華さんの髪をとかすのは初めてのはずなのに、いつもの燐華さんの髪型に近づいていく。
これは、夏鈴さんの知識と、普段から燐華さんのことを気にしているからだろう。
手際よく髪をとかしていき、あっというまに終わってしまった。
「お、お上手ですね......!」
あまりの手際の良さに美湖さんは感心する。
「そうですか?」
上手いことに自覚がないのか、疑問を持っていた。
「うん。夏鈴ちゃん上手だよ......」
燐華さんも褒める。
「そ、そうですか......?」
二人に褒められ、照れる二人。
「それじゃ燐華ちゃん! 次は私の髪お願い!」
「いいけど、私下手だよ......?」
「いいよ! 燐華ちゃんに任せるから!」
「それじゃあ......」
夏鈴さんからドライヤーと櫛を受け取り、同じようにとかしていく。
下手と言った割には、燐華さんも上手だった。
そして、いつもの夏鈴さんの髪型になるように仕上げた。
これは、普段からトラウマである夏鈴さんを想像してしまい、記憶に刻まれているからこその再現度なのか。
俺にはわからなかった。
それから少し雑談をした後、夏鈴さんと美湖さんは帰宅した。
部屋には俺と燐華さんの二人だけになった。
「燐華さん......。その、大丈夫でした......?」
俺は風呂場で二人きりになったことを心配し、話しかける。
「うん。大丈夫だったよ......。むしろ.......。今までより希望が持てたよ......!」
「希望、ですか......?」
「うん。夏鈴ちゃんと仲良くなれる。お話してみて、そういう希望が持てたんだ」
どういう会話があったのかは俺にはわからないが、俺は一安心した。
そして、燐華さんが一歩前に進めそうで心の底から嬉しかった。
「もし、もしね? 夏鈴ちゃんの記憶が戻ったとしても......。それでもやり直せるくらい、上手くやっていけそうだなって思ったんだ......」
「......本当ですか? あんな短時間で何が......」
そんな短時間の間に何があったのか気になった。
「夏鈴ちゃんは記憶が無くて、寂しがってた。それで、唯一覚えている友人......。ではないけど、私がいることを嬉しく思ってた。このまま仲良くなれば、たとえ記憶が戻っても、仲良くしたという思い出で上書きできるんじゃないかって......」
「そう、ですか......」
俺は少し不安もあったが、夏鈴さんを詳しく知っている燐華さんが言うのだ。
おそらく大丈夫なのだろう。
0
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
溺愛のフリから2年後は。
橘しづき
恋愛
岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。
そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。
でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?
距離感ゼロ〜副社長と私の恋の攻防戦〜
葉月 まい
恋愛
「どうするつもりだ?」
そう言ってグッと肩を抱いてくる
「人肌が心地良くてよく眠れた」
いやいや、私は抱き枕ですか!?
近い、とにかく近いんですって!
グイグイ迫ってくる副社長と
仕事一筋の秘書の
恋の攻防戦、スタート!
✼••┈•• ♡ 登場人物 ♡••┈••✼
里見 芹奈(27歳) …神蔵不動産 社長秘書
神蔵 翔(32歳) …神蔵不動産 副社長
社長秘書の芹奈は、パーティーで社長をかばい
ドレスにワインをかけられる。
それに気づいた副社長の翔は
芹奈の肩を抱き寄せてホテルの部屋へ。
海外から帰国したばかりの翔は
何をするにもとにかく近い!
仕事一筋の芹奈は
そんな翔に戸惑うばかりで……
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました
cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。
そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。
双子の妹、澪に縁談を押し付ける。
両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。
「はじめまして」
そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。
なんてカッコイイ人なの……。
戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。
「澪、キミを探していたんだ」
「キミ以外はいらない」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる