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3章 俺の彼女は仲良くなりたい
彼女、楽しむ
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夏鈴に率先されながらついて行った先は、今流行りのブランドのショップだった。
店頭には、ネットニュースなどで見かけたことがある服を着たマネキンが並べられていた。
「今日はね。燐華ちゃんをコーデしてあげる!」
「私を......? でも、なんで......?」
「だって彼氏さんにいい所見せたいでしょ? ほら、行こ」
燐華は夏鈴に手を引かれ、お店に入っていく。
燐華は普段美しく見せるために、最低限の流行や知識は頭に入れてあるだけなので、ファッションについて特段詳しいわけではなかった。
「うーん......。燐華ちゃんは黒髪で、かっこいい雰囲気もあるから......。寒色系:とかの方が似合うかな......?」
夏鈴がブツブツと呟きながら、店内を散策する。
燐華は特に口を出すこともなくついて行く。
そして、インナーのコーナーにたどり着いた。
展示されている服をじっくりと眺める夏鈴。
「紺とかそういうのにする?」
突然夏鈴に聞かれ、焦る燐華。
「か、夏鈴ちゃんのセンスにお任せするよ! わ、私より詳しそうだし......」
「うーん......。じゃあね......」
夏鈴は黒いインナーを手に取る。
「燐華ちゃんは大人っぽくてかっこいいから、黒が引き締まって見えるかな......?」
燐華とインナーを重ね合わせ、似合っているかどうか確認する夏鈴。
「......うん! 黒に決定!」
「ず、随分早いね......」
「実は私ファッションあんまり詳しくないんだよねー。いつも人と服を重ね合わせて直感で決めてたりして......」
少し恥ずかしがりながら言う夏鈴。
「まぁとりあえずインナーを黒にして......。次はアウター見ようか」
片手に黒のアウターを持った夏鈴は燐華の手を握る。
そして、アウターのコーナーへ向かっていった。
それから、夏鈴によるコーディネートは二時間ほど続いた。
だが、燐華は明らかに体調が悪そうとわかる表情を見せることはなかった。
店から出ると、風が少し穏やかになっていた。
燐華は店を出た瞬間、ポケットから包装紙に包まれたガムを取り出した。
「ごめん夏鈴ちゃん。ガム食べてもいい?」
念のため、夏鈴に断りを入れる。
「いいよいいよガムくらい。気にしないで」
「ありがと」
燐華はガムの包装紙を解き、口に入れる。
今日は夏鈴と一緒にいるので、印象を気にしてタバコが吸えない。
このガムは、そんなタバコを吸いたい欲を抑えるために用意したニコチンガムだ。
「じゃあ、次行こっか。次はねー」
それから、雑貨屋、スイーツショップなどの店を二人で廻った。
様々な場所を周り、既に日は沈んでいたが、燐華の調子が悪くなることはなかった。
むしろ、一緒にいて楽しいとまで思っていた。
そして、夜の八時。
あまり夜遅いと危ないということもあり、今日は解散することにした。
「燐華ちゃん! 今日は楽しかったね!」
「うん。そうだね」
この返事は、燐華の嘘偽りのない本心だった。
「また一緒に出掛けようね! それじゃ、大学で! じゃあねー!」
「うん」
夏鈴は大きく手を振り、家へ帰っていった。
そんな夏鈴を、燐華は笑顔で見送った。
住宅街を歩きながら今日を振り返る夏鈴。
だが、夏鈴には楽しかったという思いの他に、何か別の思いがあった。
その頃燐華は、駅の中を歩きながら考え事をしていた。
よくここまで仲良くなれたなぁ、と。
少し前までは想像もしなかっただろう。
燐華は乗り越えたのだ。
過去のいじめを乗り越え、しかもいじめた人間を許し、完全に仲良くなることができたのだ。
そう思いながら、燐華は家へと帰っていった。
夜九時。
俺は心配で仕方がなかった。
また倒れてしまっているのではないかという不安で、夕食も喉を通らなかった。
そんな俺に電話がかかってきた。
「燐華さん!」
スマホに映し出された燐華の名を見て、即座に電話に出る。
「燐華さん! 無事ですか!?」
俺は大声で燐華さんの安否を確認する。
「おぉ......。すごい勢いだ......。安心して。問題なかったから」
「よ、良かったぁ......!」
俺は大きく一息ついた。
そして、全身から力が抜け、ソファに倒れ込んだ。
「むしろ、すっごく楽しかったよ。服見たりね......それでね......」
燐華さんがとても楽しそうに話す。
少し前まであんなに怯えていた燐華さんからは想像もできない。
「それでね......。あ、あれ......?」
突然、スマホの向こうからすすり泣くような音が聞こえてきた。
「志永くん......! 涙が、涙が止まらなくて......。ごめん......」
「燐華さん......」
辛いトラウマを乗り越え、仲良くなった。
その実感が今頃湧いてきて、感極まってしまったのだろう。
「嬉しくて......! 嬉しくて涙が......!」
「......今日はいっぱい泣いてください」
「ご、ごめ......。うわあぁぁぁぁぁん!!!」
燐華さんの大きな泣き声が、電話越しに伝わってくる。
その声を聞き、俺の目からも涙が零れ落ちた。
一方その頃、夏鈴の家にて。
「なんでだろう。なんで......?」
夏鈴はベッドに座り、思い詰めていた。
今日は二人で一緒に出掛け、すごく楽しかった。
それは紛れもない事実だ。
だが、それを否定しようとしている何かがいる。
「なんでなんでなんでなんでなんで!」
夏鈴は頭を抱え、叫ぶ。
そして、次の瞬間。
夏鈴は突如にやけた。
店頭には、ネットニュースなどで見かけたことがある服を着たマネキンが並べられていた。
「今日はね。燐華ちゃんをコーデしてあげる!」
「私を......? でも、なんで......?」
「だって彼氏さんにいい所見せたいでしょ? ほら、行こ」
燐華は夏鈴に手を引かれ、お店に入っていく。
燐華は普段美しく見せるために、最低限の流行や知識は頭に入れてあるだけなので、ファッションについて特段詳しいわけではなかった。
「うーん......。燐華ちゃんは黒髪で、かっこいい雰囲気もあるから......。寒色系:とかの方が似合うかな......?」
夏鈴がブツブツと呟きながら、店内を散策する。
燐華は特に口を出すこともなくついて行く。
そして、インナーのコーナーにたどり着いた。
展示されている服をじっくりと眺める夏鈴。
「紺とかそういうのにする?」
突然夏鈴に聞かれ、焦る燐華。
「か、夏鈴ちゃんのセンスにお任せするよ! わ、私より詳しそうだし......」
「うーん......。じゃあね......」
夏鈴は黒いインナーを手に取る。
「燐華ちゃんは大人っぽくてかっこいいから、黒が引き締まって見えるかな......?」
燐華とインナーを重ね合わせ、似合っているかどうか確認する夏鈴。
「......うん! 黒に決定!」
「ず、随分早いね......」
「実は私ファッションあんまり詳しくないんだよねー。いつも人と服を重ね合わせて直感で決めてたりして......」
少し恥ずかしがりながら言う夏鈴。
「まぁとりあえずインナーを黒にして......。次はアウター見ようか」
片手に黒のアウターを持った夏鈴は燐華の手を握る。
そして、アウターのコーナーへ向かっていった。
それから、夏鈴によるコーディネートは二時間ほど続いた。
だが、燐華は明らかに体調が悪そうとわかる表情を見せることはなかった。
店から出ると、風が少し穏やかになっていた。
燐華は店を出た瞬間、ポケットから包装紙に包まれたガムを取り出した。
「ごめん夏鈴ちゃん。ガム食べてもいい?」
念のため、夏鈴に断りを入れる。
「いいよいいよガムくらい。気にしないで」
「ありがと」
燐華はガムの包装紙を解き、口に入れる。
今日は夏鈴と一緒にいるので、印象を気にしてタバコが吸えない。
このガムは、そんなタバコを吸いたい欲を抑えるために用意したニコチンガムだ。
「じゃあ、次行こっか。次はねー」
それから、雑貨屋、スイーツショップなどの店を二人で廻った。
様々な場所を周り、既に日は沈んでいたが、燐華の調子が悪くなることはなかった。
むしろ、一緒にいて楽しいとまで思っていた。
そして、夜の八時。
あまり夜遅いと危ないということもあり、今日は解散することにした。
「燐華ちゃん! 今日は楽しかったね!」
「うん。そうだね」
この返事は、燐華の嘘偽りのない本心だった。
「また一緒に出掛けようね! それじゃ、大学で! じゃあねー!」
「うん」
夏鈴は大きく手を振り、家へ帰っていった。
そんな夏鈴を、燐華は笑顔で見送った。
住宅街を歩きながら今日を振り返る夏鈴。
だが、夏鈴には楽しかったという思いの他に、何か別の思いがあった。
その頃燐華は、駅の中を歩きながら考え事をしていた。
よくここまで仲良くなれたなぁ、と。
少し前までは想像もしなかっただろう。
燐華は乗り越えたのだ。
過去のいじめを乗り越え、しかもいじめた人間を許し、完全に仲良くなることができたのだ。
そう思いながら、燐華は家へと帰っていった。
夜九時。
俺は心配で仕方がなかった。
また倒れてしまっているのではないかという不安で、夕食も喉を通らなかった。
そんな俺に電話がかかってきた。
「燐華さん!」
スマホに映し出された燐華の名を見て、即座に電話に出る。
「燐華さん! 無事ですか!?」
俺は大声で燐華さんの安否を確認する。
「おぉ......。すごい勢いだ......。安心して。問題なかったから」
「よ、良かったぁ......!」
俺は大きく一息ついた。
そして、全身から力が抜け、ソファに倒れ込んだ。
「むしろ、すっごく楽しかったよ。服見たりね......それでね......」
燐華さんがとても楽しそうに話す。
少し前まであんなに怯えていた燐華さんからは想像もできない。
「それでね......。あ、あれ......?」
突然、スマホの向こうからすすり泣くような音が聞こえてきた。
「志永くん......! 涙が、涙が止まらなくて......。ごめん......」
「燐華さん......」
辛いトラウマを乗り越え、仲良くなった。
その実感が今頃湧いてきて、感極まってしまったのだろう。
「嬉しくて......! 嬉しくて涙が......!」
「......今日はいっぱい泣いてください」
「ご、ごめ......。うわあぁぁぁぁぁん!!!」
燐華さんの大きな泣き声が、電話越しに伝わってくる。
その声を聞き、俺の目からも涙が零れ落ちた。
一方その頃、夏鈴の家にて。
「なんでだろう。なんで......?」
夏鈴はベッドに座り、思い詰めていた。
今日は二人で一緒に出掛け、すごく楽しかった。
それは紛れもない事実だ。
だが、それを否定しようとしている何かがいる。
「なんでなんでなんでなんでなんで!」
夏鈴は頭を抱え、叫ぶ。
そして、次の瞬間。
夏鈴は突如にやけた。
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