7 / 39
7話 はじめてのクラス
しおりを挟む
2年E組。
普通科のEクラスが俺のクラスだった。
30人ほどのクラスメイトの顔を緊張して見回した。違和感しかなかった。
「なあ、ホスト。このクラス……男しかいないぞ」
「さっすが、時雨ちゃん。そこに気がつくとは。見てみ? どいつもこいつも学校から見た問題児だらけ。スポーツ科とか芸能科みたいな専門科から何人も来てるワケじゃん」
「面構えが違う。なあ、つまりこれ」
「ピンポーン。問題児クラス。出席率とか内申で分けられてるっぽい」
「なら、セブンもいるよな。なんで雷堂いないんだよ」
「セブンはいるよ。雷堂はほら、人気アイドルたから、芸能科のエースじゃんよ」
高校1年3学期の出席を拒否した俺がこのクラスにいるのは当然だった。補習の参加とか無ければいいけれど。
「俺の席どこ?」
「ほら、窓際。セブンが寝てる席」
「なんでセブンが俺の席で寝てるんだよ」
「時雨ちゃんが来たらわかるように、朝だけその席に座るって昨日言ってた。時雨ちゃん来るまでパチもスロもやめるって。パチ屋で整理券とって、台の抽選してガッコ来なかったら時雨を怒れないからつって。相変わらずっしょ」
「ったく、なにも言えねー」
俺の席で寝ている大柄な男の肩を思い切り叩いて、いった。
「化け物の、始まりのときフリーズの確率は?」
「うおああーーっ。エッ、えっ? 16000分の1。AT確定ーッ」
「よっ、セブン。おはよう」
「シグレェーー、おかえり。ずっと待ってたんだぜ」
180cmあるでかい体が抱きついてくる。
セブンっていかにもあだ名っぽい名前。これが本名。七条 七。苗字がななじょう、名前がせぶん。七ばっかりつく縁起の良い名前だ。
「オイオイ、顔どしたんよ?いつもより更にひでーぜ」
「さっき雷堂にぶん殴られた」
「虎に噛まれてその程度かよ。ラッキー」
「みんなそれ言うな」
「雷堂、裏で番長って言われてるから。特攻服が一番似合う女」
「ははっ。見たい。特攻服の雷堂みたいわ。胸にサラシ巻いてそう」
「あいつ最近おっかねえよ。何人か殺してる目してるぜ」
「大丈夫、大丈夫。あいつは大丈夫」
そんな話から、おしゃべりを続けていたときだった。チャイムが鳴る。それと同時に、教室の前の入り口から2人の教師が入ってくる。
「……2人?」
「シッ。すぐわかる」
ひそめた声で後ろの席に座るセブンが言った。セブンのとなりに座るホストも顔を横に振っている。
教卓に立ったのは男の教師、その横に見慣れない女教師がいる。
厳しすぎる生活指導を行っているため軍曹とよばれる教師は、教卓でクラスを見回した。どうやらクラスの担任らしい。もうひとりは?
軍曹が低い声で言った。
「おはよう」
「「「おはようございます、先生」」」
統一された意思をもって、ほかのクラスメイトが大きな声であいさつを返した。ホストとセブンと俺が置き去りにされたようだった。
「くそったれ共、お前らに勉強など早すぎた。健全な精神は健全な肉体に宿る。不健全なカス共は着替えて玄関に集まれ」
「「「はい、先生」」」
そういうとクラスメイトは立ち上がる。立ち上がり、左足から歩き始め歩幅を揃えて教室を出て行った。
教室には5人が残された。
担任の軍曹が俺と向かい合った。
「クラス担任の東条だ」
立ち上がり拳を握り体の横につけて、10度ほど腰を曲げた。
「天宮 時雨です。よろしくお願いします」
「このクラスの担任は2人いる。おれと九鬼先生が交代あるいは少人数を対象に別々に字授業をする。しばらくは環境順応を行うつもりだ。今日は近くの女子高付近まで走る。来るか?」
「女子高へ順応の仕方を学びに行くのなら、ぜひ」
「時雨ちゃーん、ちょいと考えてみ。近くの女子高ってお嬢様学校のエリスじゃん?」
エリス女学園? あそこってたしか。
「往復で半日走り続けるじゃん。だまされた」
軍曹は大きな笑い声をあげてから、俺の肩に手を当てて教室を出た。やはり左足から歩き始めていた。
「笑ってはいけないドッキリじゃないよな」
「気持ちはわかる。けど、ガチだぜ」
「このクラス何人?」
「30ジャスト」
「27人か。軍曹についていってるけど、なにがあったんだ」
「ガチンコ対決だぜ?」
「もしおれの指導に文句があるやつはかかってこい。おれに1発でも有効打が入れば1年間、おまえら全員の言うことをなんでも聞いてやる。おれにも九鬼先生にもなんでも命令していい。って俺らをガッコの道場に連れて、軍曹が言い放ったんよ」
九鬼先生とよばれる女性の教師を見る。
「……なぜ俺は昨日、登校しなかったんだ」
スーツを着こなす凛とした、綺麗な大人の女性だった。
「わかるわかる、時雨ちゃん。あやうく挑みかけるよな。あの熱狂する異様な雰囲気のなかで、セブンだけがストップって言ってくれたんだ。言ってくんなかったら正直やばかったっしょ」
「ちっとも当たる気配がしなかった。月末とか月初めのパチ屋の熱狂に近い匂いがしたぜ」
「おかげでオレとセブン以外はひどい負け方して従順になっちゃったんだよね。まあ、どっちのセンコー向きか振り分けられたっぽいけど」
「ふーん。なるほど。で、俺らは九鬼先生ってこと? よろしくお願いします」
良い生地のパンツスーツをビシッと着こなした担任にあいさつした。
セミロングの長さの髪。前髪は長く横に流しているため、表情は明るくみえる。けれど、知性を感じさせる目が明るさとは逆だ。インテリの堅物といった感じの大人の女性だった。
「九鬼だ。お前ら、教師に嫌われるタイプの生徒だろ。エロガキのサボり魔、チャラチャラしてナメた男、学校で寝るギャンブラー」
俺、ホスト、セブンの順番にそう言われる。
ピリッとした空気がながれた。
「最初に言っておく。申し訳ないが私は教師じゃない。だから、お前たちみたいなクソガキは嫌いじゃない。よろしく頼むよ」
意外にもこの女教師は、人懐っこい笑顔をしながらそう言った。
普通科のEクラスが俺のクラスだった。
30人ほどのクラスメイトの顔を緊張して見回した。違和感しかなかった。
「なあ、ホスト。このクラス……男しかいないぞ」
「さっすが、時雨ちゃん。そこに気がつくとは。見てみ? どいつもこいつも学校から見た問題児だらけ。スポーツ科とか芸能科みたいな専門科から何人も来てるワケじゃん」
「面構えが違う。なあ、つまりこれ」
「ピンポーン。問題児クラス。出席率とか内申で分けられてるっぽい」
「なら、セブンもいるよな。なんで雷堂いないんだよ」
「セブンはいるよ。雷堂はほら、人気アイドルたから、芸能科のエースじゃんよ」
高校1年3学期の出席を拒否した俺がこのクラスにいるのは当然だった。補習の参加とか無ければいいけれど。
「俺の席どこ?」
「ほら、窓際。セブンが寝てる席」
「なんでセブンが俺の席で寝てるんだよ」
「時雨ちゃんが来たらわかるように、朝だけその席に座るって昨日言ってた。時雨ちゃん来るまでパチもスロもやめるって。パチ屋で整理券とって、台の抽選してガッコ来なかったら時雨を怒れないからつって。相変わらずっしょ」
「ったく、なにも言えねー」
俺の席で寝ている大柄な男の肩を思い切り叩いて、いった。
「化け物の、始まりのときフリーズの確率は?」
「うおああーーっ。エッ、えっ? 16000分の1。AT確定ーッ」
「よっ、セブン。おはよう」
「シグレェーー、おかえり。ずっと待ってたんだぜ」
180cmあるでかい体が抱きついてくる。
セブンっていかにもあだ名っぽい名前。これが本名。七条 七。苗字がななじょう、名前がせぶん。七ばっかりつく縁起の良い名前だ。
「オイオイ、顔どしたんよ?いつもより更にひでーぜ」
「さっき雷堂にぶん殴られた」
「虎に噛まれてその程度かよ。ラッキー」
「みんなそれ言うな」
「雷堂、裏で番長って言われてるから。特攻服が一番似合う女」
「ははっ。見たい。特攻服の雷堂みたいわ。胸にサラシ巻いてそう」
「あいつ最近おっかねえよ。何人か殺してる目してるぜ」
「大丈夫、大丈夫。あいつは大丈夫」
そんな話から、おしゃべりを続けていたときだった。チャイムが鳴る。それと同時に、教室の前の入り口から2人の教師が入ってくる。
「……2人?」
「シッ。すぐわかる」
ひそめた声で後ろの席に座るセブンが言った。セブンのとなりに座るホストも顔を横に振っている。
教卓に立ったのは男の教師、その横に見慣れない女教師がいる。
厳しすぎる生活指導を行っているため軍曹とよばれる教師は、教卓でクラスを見回した。どうやらクラスの担任らしい。もうひとりは?
軍曹が低い声で言った。
「おはよう」
「「「おはようございます、先生」」」
統一された意思をもって、ほかのクラスメイトが大きな声であいさつを返した。ホストとセブンと俺が置き去りにされたようだった。
「くそったれ共、お前らに勉強など早すぎた。健全な精神は健全な肉体に宿る。不健全なカス共は着替えて玄関に集まれ」
「「「はい、先生」」」
そういうとクラスメイトは立ち上がる。立ち上がり、左足から歩き始め歩幅を揃えて教室を出て行った。
教室には5人が残された。
担任の軍曹が俺と向かい合った。
「クラス担任の東条だ」
立ち上がり拳を握り体の横につけて、10度ほど腰を曲げた。
「天宮 時雨です。よろしくお願いします」
「このクラスの担任は2人いる。おれと九鬼先生が交代あるいは少人数を対象に別々に字授業をする。しばらくは環境順応を行うつもりだ。今日は近くの女子高付近まで走る。来るか?」
「女子高へ順応の仕方を学びに行くのなら、ぜひ」
「時雨ちゃーん、ちょいと考えてみ。近くの女子高ってお嬢様学校のエリスじゃん?」
エリス女学園? あそこってたしか。
「往復で半日走り続けるじゃん。だまされた」
軍曹は大きな笑い声をあげてから、俺の肩に手を当てて教室を出た。やはり左足から歩き始めていた。
「笑ってはいけないドッキリじゃないよな」
「気持ちはわかる。けど、ガチだぜ」
「このクラス何人?」
「30ジャスト」
「27人か。軍曹についていってるけど、なにがあったんだ」
「ガチンコ対決だぜ?」
「もしおれの指導に文句があるやつはかかってこい。おれに1発でも有効打が入れば1年間、おまえら全員の言うことをなんでも聞いてやる。おれにも九鬼先生にもなんでも命令していい。って俺らをガッコの道場に連れて、軍曹が言い放ったんよ」
九鬼先生とよばれる女性の教師を見る。
「……なぜ俺は昨日、登校しなかったんだ」
スーツを着こなす凛とした、綺麗な大人の女性だった。
「わかるわかる、時雨ちゃん。あやうく挑みかけるよな。あの熱狂する異様な雰囲気のなかで、セブンだけがストップって言ってくれたんだ。言ってくんなかったら正直やばかったっしょ」
「ちっとも当たる気配がしなかった。月末とか月初めのパチ屋の熱狂に近い匂いがしたぜ」
「おかげでオレとセブン以外はひどい負け方して従順になっちゃったんだよね。まあ、どっちのセンコー向きか振り分けられたっぽいけど」
「ふーん。なるほど。で、俺らは九鬼先生ってこと? よろしくお願いします」
良い生地のパンツスーツをビシッと着こなした担任にあいさつした。
セミロングの長さの髪。前髪は長く横に流しているため、表情は明るくみえる。けれど、知性を感じさせる目が明るさとは逆だ。インテリの堅物といった感じの大人の女性だった。
「九鬼だ。お前ら、教師に嫌われるタイプの生徒だろ。エロガキのサボり魔、チャラチャラしてナメた男、学校で寝るギャンブラー」
俺、ホスト、セブンの順番にそう言われる。
ピリッとした空気がながれた。
「最初に言っておく。申し訳ないが私は教師じゃない。だから、お前たちみたいなクソガキは嫌いじゃない。よろしく頼むよ」
意外にもこの女教師は、人懐っこい笑顔をしながらそう言った。
0
あなたにおすすめの小説
春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる
釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。
他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。
そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。
三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。
新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件
暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる