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8話 担任は、鬼百合
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「前情報でオニユリっていわれてたのがウソみたいじゃんか?」
「それは、ただの名前さ。九鬼 百合って名前なんだ。あと教師歴は1年目の新米だ。おまえらでいろいろと試していく」
九鬼先生は椅子をひいて俺の横に座り、足を組んで気さくに話す。
「なァ……先生、もしかして」
セブンがなにか先生に言いかけた。
「聞きにくいこと聞くんスけど……いいっスか?」
「構わんぞ? なんでも言ってみろ」
「セブン、お前も気づいてたか」
「お前もってことは、時雨ちゃんも? 俺じゃなきゃ見逃しちゃうねって思ってたのに」
「シグレ、ホスト、さすがだな。お前たちもそう思うか」
俺たち3人は、九鬼先生に対して感じていたことがあったらしい。
「九鬼先生、あんた……」
セブンがそう言った後、俺ら3人が声を揃える。
「ギャンブラーだろ?」
「全身脱毛してるでしょ?」
「処女のにおいがする」
残念ながら俺らの意見は揃わなかった。
「待てセブン、こんなエリートがギャンブルなんてするわけない。ブルックスブラザーズのスーツに見ろよこの時計、高級品じゃん。革のハイヒールもすげー手入れされてるし、絶対に男と競争して勝ち抜いてきたタイプの女っしょ。ギャンブルはない。あと時雨ちゃん、それはないわ。30に1歩手前の九鬼ちゃんがヴァージンなわけないだろ。見ただけでわかる29歳だぞ」
「ホストッ。テメーは全然わかってねえ。女を見る目があるのは認めるが、俺にはわかんだよ、こいつ同じにおいがするって。間違いねーよ、この嬢さん。スリルに身を投げるタイプの女だ。全身脱毛はお前いったいどこ見てたらそんなことわかんだよ? もっとわかんねーのは処女だよ、シグレッ」
「いーや、ほんとだ。首の後ろとかすげーキレイ。スベッスベしてる。なに震えてんの先生、もしかして全部図星だ……ッブッ」
「シグレーッ」
「今日殴られるの2回目じゃんーっ」
気づいたら俺はまた倒れている。ただ、体が学習していた。
「大丈夫。今度は後ろに飛んだ」
「こいつ日に日に、たくましくなっていくよな」
倒れる俺を見下ろすのは我らの担任、オニだった。
「おい、クソガキども。先生の時間は終わりだ。今からお前らを調教する。とくに天宮。お前は念入りにしごいてやる。お前らもだホスト、セブン」
「一番の地雷踏んだの時雨ちゃんだったのね」
「結局、全部当たってフリーズしてたんじゃねーか」
セブンとホストの悲鳴があがった。
オニの手になにか握られている。黒いしなる棒……?
「テッメ、乗馬用のムチじゃねーか」
「調教を施すと言ったろう? こんの駄馬どもッ」
「高松宮どうだったよ? ミス・メロディ」
「新聞ごと記憶をゴミ箱にぶち込んださダークホース」
「ひゃははは、ザマァ。ウップッ」
ピシャン。
鞭が跳ねる音がした。
「やっべ、マジ痛えーーッ」
「座禅のとき、坊主が木の板で肩を殴るとありがたがるだろう。聖職者たる私が鞭を打ってもそれはありがたいよな?」
「無茶苦茶だ。無茶苦茶だーっ。このセンコー」
「だまれ私のストレス因子ども」
「聖職者の顔した暴君じゃねえか」
「そう、私は教師だ。だからお前たちに与えるのは課題でなければいけないよな? 天宮?」
「ハイ、ソウデス。センセイ」
肩に鞭を置かれながら返事をした。
鬼は俺たちの机の上に真っ赤な表紙の紙の束を置いた。辞書かと思うページ数だった。赤い表紙には『私の考えた最強の問題集 高校1年総集編』と書いてある。
「やれ。全教科まとめてきた。時間をかけてやる予定だったが、1日だ。1日でやれ。お前らには教えなければいけないことが多すぎる。お前らが悪い」
「先生、教師のハラスメントは何て言ってPTAに訴えればいいですか? おしえてください」
「しいていうならアカハラかな? セクハラ生徒、ひとの首筋を勝手に触りよって」
「めっちゃスベスベでした。ヒッ」
肩を鞭がかすめた。鞭が肩をトントンと叩き始める。
「さーって、気合入れて問題集やるぞー」
「クソシグレ、テメーのせいだ」
「お前らもそう変わんねーだろ」
「あーっ、やめろ。またユリちゃんがムチ構えてる。時雨ちゃん、さっさと終わらせて俺らに教えてくれ。セブン、やるぞっ」
「ったく、しゃーねーな」
それを最後に黙々と問題集に向き合うことになった。
解き続けながら、ふと、目の前で腕を組んで立つ鬼の顔を見た。
初めて手料理をつくったときの花恋みたいな顔をしている。その不安そうな顔が重なった。
「ははっ、先生。ここわかんないんで教えてください」
「よかろう」
俺の前の席に座って、髪を手で流しながら俺の手元をのぞき込んでくる。
ゴツン。音を立てて俺と先生がぶつかった。額と額をうった。
「いてっ」
そう額をぶつけて顔を離すと先生も同じポーズをしていた。
ただ、顔を真っ赤にしてわなわなと唇を震えさせている。
なにその顔、可愛い。
もしや本当に男慣れしてないのでは??
俺は今、おもちゃを得た子供のように笑っていると思う。
「問題、いっしょに勉強してもらっていいですか」
そう言って俺は先生の手を引っ張った。
「よ、よかろう」
「先生、ここわかんないです」
「あ、ああ」
俺はそうやって顔を赤くする先生をからかいながら、正解を導き続けた。
「それは、ただの名前さ。九鬼 百合って名前なんだ。あと教師歴は1年目の新米だ。おまえらでいろいろと試していく」
九鬼先生は椅子をひいて俺の横に座り、足を組んで気さくに話す。
「なァ……先生、もしかして」
セブンがなにか先生に言いかけた。
「聞きにくいこと聞くんスけど……いいっスか?」
「構わんぞ? なんでも言ってみろ」
「セブン、お前も気づいてたか」
「お前もってことは、時雨ちゃんも? 俺じゃなきゃ見逃しちゃうねって思ってたのに」
「シグレ、ホスト、さすがだな。お前たちもそう思うか」
俺たち3人は、九鬼先生に対して感じていたことがあったらしい。
「九鬼先生、あんた……」
セブンがそう言った後、俺ら3人が声を揃える。
「ギャンブラーだろ?」
「全身脱毛してるでしょ?」
「処女のにおいがする」
残念ながら俺らの意見は揃わなかった。
「待てセブン、こんなエリートがギャンブルなんてするわけない。ブルックスブラザーズのスーツに見ろよこの時計、高級品じゃん。革のハイヒールもすげー手入れされてるし、絶対に男と競争して勝ち抜いてきたタイプの女っしょ。ギャンブルはない。あと時雨ちゃん、それはないわ。30に1歩手前の九鬼ちゃんがヴァージンなわけないだろ。見ただけでわかる29歳だぞ」
「ホストッ。テメーは全然わかってねえ。女を見る目があるのは認めるが、俺にはわかんだよ、こいつ同じにおいがするって。間違いねーよ、この嬢さん。スリルに身を投げるタイプの女だ。全身脱毛はお前いったいどこ見てたらそんなことわかんだよ? もっとわかんねーのは処女だよ、シグレッ」
「いーや、ほんとだ。首の後ろとかすげーキレイ。スベッスベしてる。なに震えてんの先生、もしかして全部図星だ……ッブッ」
「シグレーッ」
「今日殴られるの2回目じゃんーっ」
気づいたら俺はまた倒れている。ただ、体が学習していた。
「大丈夫。今度は後ろに飛んだ」
「こいつ日に日に、たくましくなっていくよな」
倒れる俺を見下ろすのは我らの担任、オニだった。
「おい、クソガキども。先生の時間は終わりだ。今からお前らを調教する。とくに天宮。お前は念入りにしごいてやる。お前らもだホスト、セブン」
「一番の地雷踏んだの時雨ちゃんだったのね」
「結局、全部当たってフリーズしてたんじゃねーか」
セブンとホストの悲鳴があがった。
オニの手になにか握られている。黒いしなる棒……?
「テッメ、乗馬用のムチじゃねーか」
「調教を施すと言ったろう? こんの駄馬どもッ」
「高松宮どうだったよ? ミス・メロディ」
「新聞ごと記憶をゴミ箱にぶち込んださダークホース」
「ひゃははは、ザマァ。ウップッ」
ピシャン。
鞭が跳ねる音がした。
「やっべ、マジ痛えーーッ」
「座禅のとき、坊主が木の板で肩を殴るとありがたがるだろう。聖職者たる私が鞭を打ってもそれはありがたいよな?」
「無茶苦茶だ。無茶苦茶だーっ。このセンコー」
「だまれ私のストレス因子ども」
「聖職者の顔した暴君じゃねえか」
「そう、私は教師だ。だからお前たちに与えるのは課題でなければいけないよな? 天宮?」
「ハイ、ソウデス。センセイ」
肩に鞭を置かれながら返事をした。
鬼は俺たちの机の上に真っ赤な表紙の紙の束を置いた。辞書かと思うページ数だった。赤い表紙には『私の考えた最強の問題集 高校1年総集編』と書いてある。
「やれ。全教科まとめてきた。時間をかけてやる予定だったが、1日だ。1日でやれ。お前らには教えなければいけないことが多すぎる。お前らが悪い」
「先生、教師のハラスメントは何て言ってPTAに訴えればいいですか? おしえてください」
「しいていうならアカハラかな? セクハラ生徒、ひとの首筋を勝手に触りよって」
「めっちゃスベスベでした。ヒッ」
肩を鞭がかすめた。鞭が肩をトントンと叩き始める。
「さーって、気合入れて問題集やるぞー」
「クソシグレ、テメーのせいだ」
「お前らもそう変わんねーだろ」
「あーっ、やめろ。またユリちゃんがムチ構えてる。時雨ちゃん、さっさと終わらせて俺らに教えてくれ。セブン、やるぞっ」
「ったく、しゃーねーな」
それを最後に黙々と問題集に向き合うことになった。
解き続けながら、ふと、目の前で腕を組んで立つ鬼の顔を見た。
初めて手料理をつくったときの花恋みたいな顔をしている。その不安そうな顔が重なった。
「ははっ、先生。ここわかんないんで教えてください」
「よかろう」
俺の前の席に座って、髪を手で流しながら俺の手元をのぞき込んでくる。
ゴツン。音を立てて俺と先生がぶつかった。額と額をうった。
「いてっ」
そう額をぶつけて顔を離すと先生も同じポーズをしていた。
ただ、顔を真っ赤にしてわなわなと唇を震えさせている。
なにその顔、可愛い。
もしや本当に男慣れしてないのでは??
俺は今、おもちゃを得た子供のように笑っていると思う。
「問題、いっしょに勉強してもらっていいですか」
そう言って俺は先生の手を引っ張った。
「よ、よかろう」
「先生、ここわかんないです」
「あ、ああ」
俺はそうやって顔を赤くする先生をからかいながら、正解を導き続けた。
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