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お邪魔します
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そろそろハーザルの街へ向かうと、ぞうりのまま行こうとしたニコライさんに靴を履き替えさせ、町の入り口まで見送りに行くことにした。確かに取引は「成功」したし、ここまでしてくれるニコライさんは「仲間」だろう。失言さえしなければ本当に良い人なのだ。笑顔で手を振る私にイチビたちは複雑そうな顔をしている。
「そんな顔をしないの。ニコライさんはもう仲間よ?」
たしなめるためにそう言うが、イチビたちの表情は変わらない。そこに入り口で座って見ていた町長のペーターさんが口を挟んだ。
「静かになるな」
その一言にイチビたちですら思わず噴き出した。
「もう!ペーターさんまで!私たちが帰った後もそういうことを言っているのかしら?」
「うるさいのと賑やかは違うもんだ」
そう言って笑うペーターさんだが、なるほど。言い得て妙だ。
「この町の人間はカレンちゃんたちが帰ると寂しがって元気がなくなるんだよ。もちろん私もだ。ブルーノなんて特に落ち込むぞ」
声を出して笑うペーターさんは続ける。
「いつもいつも『カレンちゃんは早く来ないかな』とか『スイレンくんは元気にしてるかな』と言っているぞ。もう自分のひ孫だと思っているんじゃないか」
ひ孫発言に私たちも笑うが、じいやだけは「分かります……」と意味深に呟いていた。
「さっきの見送りの時に聞こえたが、数日はここに滞在するんだろう?早くブルーノに会いに行ってやってくれ」
「でも毎回毎回泊めてもらうのも悪いわ……」
リトールの町に来る度に泊めてもらっているので、ホテル代わりに使っていると思われていないか不安になる。食事も作ってくれ、寝床も用意してくれているのでお金を払おうとするとブルーノさんは怒るのだ。それを言うとペーターさんはニッコリと笑った。
「むしろ相当稼がせてもらってありがたいと言っているぞ。さぁ、早く行きなさい」
ペーターさんに背中をグイグイと押され、どうすることも出来ない私たちは言われた通りブルーノさんのお宅を複雑な気持ちのまま訪問することになった。
玄関前に着いたもののやはり心苦しく、じいやを見ればじいやも同じ心境なのか困り顔をしていた。ブルーノさんの顔を見て、迷惑そうであれば夜営をすれば良い。そう思い意を決して私は玄関口に声をかけた。
「ブルーノさ~ん!」
いつもならすぐに反応があるが返事がない。私だけ玄関の中に入り、先ほどと同じようにブルーノさんを呼ぶと「工房にいるよ」と返事が返ってきた。私たちは顔を見合わせ工房へと向かった。
工房内ではブルーノさんとお弟子さんたちが忙しそうに作業をしていた。
「カレンちゃん!いつ来たんだい?」
「実はだいぶ前からこの町にいるの」
そう言えば驚くブルーノさんとお弟子さんたちだ。まだ跳び縄とリバーシの注文が相次いでいるらしく、ずっとその製作をしていたので私たちがこの町に来たことに気付かなかったようだ。
「もう帰ってしまうのかい?一泊くらいしていったらどうかな?」
屈託のない笑顔でブルーノさんはそう言う。どうやらペーターさんが言っていたことは本当らしい。図々しくて本当に申し訳ないが、ニコライさんとのことを伝え、はっきりいつまでとは言えないが泊めてほしいとお願いすると嫌がるどころか本当に嬉しそうに破顔した。
「いつまででも泊まっていくといいよ。弟子たちも仕事が終われば帰ってしまうし、一人の夜は寂しいんだ」
そういえばブルーノさんは奥さんに捨てられてずっと一人だったことを思い出す。私たちが泊まって語り合うことが嬉しいのだとブルーノさんは言う。
「いつもありがとうございます。今回もお世話になります」
そう言い頭を下げるとじいやたちも「お邪魔します」「お世話になります」と頭を下げた。
────
手が離せないとブルーノさんは言うので、私たちはそのまま工房内に座る。すると人見知りのイチビたちがお弟子さんたちに話しかけた。
「手伝います」
森の民であるイチビたちに話しかけられ、そして手伝う発言にブルーノさんたちは喜ぶ。イチビたち四人はリバーシを、私とじいやは跳び縄の製作に取り掛かった。
「今回も娯楽の品を作ってきたのかい?」
作業をしながらブルーノさんは私たちに問いかける。
「ううん、今回は違う物を作ってもうジョーイさんのお店に売ってきちゃったの」
そう言うとブルーノさんは意外なことを言った。
「前に来た時に子どもたちにドングーリを使った物を教えたかい?小さな子どもたちが夢中で遊んでいるよ」
前回来た時に食堂で小さな子どもたちに話しかけられ、ドングリを使ったコマを作ってあげた。まだ縄跳びが出来ない子たちはその簡単に作って遊べるコマを気に入ってくれたようなのだ。
少なくとも今日は泊まることになる。時間はある。ならばこの場で娯楽の品を作れば良いのだ。
「ブルーノさんありがとう。やる気が出たわ。今から娯楽の品を作るから、道具を貸してもらっても良いかしら?みんな、手伝って」
ブルーノさんたちもその私の言葉に盛り上がったが、イチビたちが特にやる気に満ちている。さぁ遊び道具を作るわよ!
「そんな顔をしないの。ニコライさんはもう仲間よ?」
たしなめるためにそう言うが、イチビたちの表情は変わらない。そこに入り口で座って見ていた町長のペーターさんが口を挟んだ。
「静かになるな」
その一言にイチビたちですら思わず噴き出した。
「もう!ペーターさんまで!私たちが帰った後もそういうことを言っているのかしら?」
「うるさいのと賑やかは違うもんだ」
そう言って笑うペーターさんだが、なるほど。言い得て妙だ。
「この町の人間はカレンちゃんたちが帰ると寂しがって元気がなくなるんだよ。もちろん私もだ。ブルーノなんて特に落ち込むぞ」
声を出して笑うペーターさんは続ける。
「いつもいつも『カレンちゃんは早く来ないかな』とか『スイレンくんは元気にしてるかな』と言っているぞ。もう自分のひ孫だと思っているんじゃないか」
ひ孫発言に私たちも笑うが、じいやだけは「分かります……」と意味深に呟いていた。
「さっきの見送りの時に聞こえたが、数日はここに滞在するんだろう?早くブルーノに会いに行ってやってくれ」
「でも毎回毎回泊めてもらうのも悪いわ……」
リトールの町に来る度に泊めてもらっているので、ホテル代わりに使っていると思われていないか不安になる。食事も作ってくれ、寝床も用意してくれているのでお金を払おうとするとブルーノさんは怒るのだ。それを言うとペーターさんはニッコリと笑った。
「むしろ相当稼がせてもらってありがたいと言っているぞ。さぁ、早く行きなさい」
ペーターさんに背中をグイグイと押され、どうすることも出来ない私たちは言われた通りブルーノさんのお宅を複雑な気持ちのまま訪問することになった。
玄関前に着いたもののやはり心苦しく、じいやを見ればじいやも同じ心境なのか困り顔をしていた。ブルーノさんの顔を見て、迷惑そうであれば夜営をすれば良い。そう思い意を決して私は玄関口に声をかけた。
「ブルーノさ~ん!」
いつもならすぐに反応があるが返事がない。私だけ玄関の中に入り、先ほどと同じようにブルーノさんを呼ぶと「工房にいるよ」と返事が返ってきた。私たちは顔を見合わせ工房へと向かった。
工房内ではブルーノさんとお弟子さんたちが忙しそうに作業をしていた。
「カレンちゃん!いつ来たんだい?」
「実はだいぶ前からこの町にいるの」
そう言えば驚くブルーノさんとお弟子さんたちだ。まだ跳び縄とリバーシの注文が相次いでいるらしく、ずっとその製作をしていたので私たちがこの町に来たことに気付かなかったようだ。
「もう帰ってしまうのかい?一泊くらいしていったらどうかな?」
屈託のない笑顔でブルーノさんはそう言う。どうやらペーターさんが言っていたことは本当らしい。図々しくて本当に申し訳ないが、ニコライさんとのことを伝え、はっきりいつまでとは言えないが泊めてほしいとお願いすると嫌がるどころか本当に嬉しそうに破顔した。
「いつまででも泊まっていくといいよ。弟子たちも仕事が終われば帰ってしまうし、一人の夜は寂しいんだ」
そういえばブルーノさんは奥さんに捨てられてずっと一人だったことを思い出す。私たちが泊まって語り合うことが嬉しいのだとブルーノさんは言う。
「いつもありがとうございます。今回もお世話になります」
そう言い頭を下げるとじいやたちも「お邪魔します」「お世話になります」と頭を下げた。
────
手が離せないとブルーノさんは言うので、私たちはそのまま工房内に座る。すると人見知りのイチビたちがお弟子さんたちに話しかけた。
「手伝います」
森の民であるイチビたちに話しかけられ、そして手伝う発言にブルーノさんたちは喜ぶ。イチビたち四人はリバーシを、私とじいやは跳び縄の製作に取り掛かった。
「今回も娯楽の品を作ってきたのかい?」
作業をしながらブルーノさんは私たちに問いかける。
「ううん、今回は違う物を作ってもうジョーイさんのお店に売ってきちゃったの」
そう言うとブルーノさんは意外なことを言った。
「前に来た時に子どもたちにドングーリを使った物を教えたかい?小さな子どもたちが夢中で遊んでいるよ」
前回来た時に食堂で小さな子どもたちに話しかけられ、ドングリを使ったコマを作ってあげた。まだ縄跳びが出来ない子たちはその簡単に作って遊べるコマを気に入ってくれたようなのだ。
少なくとも今日は泊まることになる。時間はある。ならばこの場で娯楽の品を作れば良いのだ。
「ブルーノさんありがとう。やる気が出たわ。今から娯楽の品を作るから、道具を貸してもらっても良いかしら?みんな、手伝って」
ブルーノさんたちもその私の言葉に盛り上がったが、イチビたちが特にやる気に満ちている。さぁ遊び道具を作るわよ!
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