107 / 370
姫たちの話し合い
しおりを挟む
ペーターさんの先導のもとぞろぞろと食堂へと入り、ペーターさんは適当に何か頼むと店主のアンソニーさんに伝え、食堂の奥の大きなテーブルへと私たちは座った。
「あー……まず、なぜリーンウン国の姫がこの国にいるんだ?あの騒ぎのせいで断交状態だろう?」
ペーターさんはクジャクさんに問いかける。
「闇市だ」
笑顔でとんでもない単語を話すクジャクさんに私たちはむせる。モズさんは「順を追って話すように」とクジャクさんをたしなめ、クジャクさんは言葉を続ける。
「完全な断交ではないのだ。あの日あのクソジジ……ごほん……シャイアーク王はわらわの瞳を見て『そんな気味の悪い目など嫁の貰い手がないだろう。だから嫁にしてやっても良い』と言い放ってな。父上が怒り狂う前にわらわが怒り狂ってしまったのじゃ」
なんて酷いことを言うのかしら!?同じ女として許せないわ!
「わらわは頭に血が上ると少し攻撃的になるのでな。目の前にあった物を全て投げつけてやったのじゃ。最終的には喧嘩両成敗というやつじゃな」
自慢気に答えるクジャクさんだが、先ほどのニコライさんに対する態度を見ている限り『少し攻撃的』とは思えない。むしろ強暴だわ……。
「本来なら断交ものだが、リーンウン国にはシャイアーク国との国境しかない上に、シャイアーク国は我が国で作られる薬を欲しがるのでな。国としては輸出という必要最低限の付き合いをしつつ、我が国の特産品をハーザルの街に売っておる。後者の方が闇市にあたる」
「薬?特産品?」
なんとなく疑問を口にすればクジャクさんは答えてくれる。
「テックノン王国が科学技術で薬を作るのに対し、リーンウン国では植物から薬を作る。優劣があるわけではないが体質によって合う合わないがあるのでな。特産品は主に調味料じゃ。ハーザルの街くらいでしか使われぬが『セウユ』と『ミィソ』という」
それを聞いて私は激しく反応してしまう。
「まさか……ディーズを使って作られた黒い液体に、茶色のもったりとした糊状の物じゃ……」
「なぜ原料を知っておる!?秘伝のものだぞ!?……まぁミィソに関しては分かる者には分かってしまうが」
これは大変だわ。絶対にそれは醤油と味噌よね!?なんとしても欲しいわ!そんなことを思っているとペーターさんが口を開く。
「それで、なぜ一国の姫が良い思い出のないこの国にわざわざ来るんだ?」
すると「良くぞ聞いてくれた!」という表情をしたクジャクさんは満面の笑顔で答えた。
「勉強が嫌いだからじゃ!」
それを聞いた私たちはポカーンとし、モズさんは大きなため息を吐いた。
「国におれば勉強しかさせられん。わらわは冒険や旅や刺激的なことが好きなのじゃ」
マークさんが私と気が合うと言ったのが分かる気がしてきたわ。複雑な気分だけれども。
「次はわらわからの質問じゃ。そんな勉強嫌いのわらわでも知っておる森の民の滅亡の話。その森の民がなぜここにおるのだ?匿っておったのか?」
純粋な疑問だったのだろう。小首を傾げてペーターさんに問いかけている。そこにじいやが加わり、今までの経緯やニコライさんとの出会いなどを語った。
「なんと……なんと酷い話じゃ……。そなたカレンと申したな?なんと辛い日々を過ごして来たのか……考えただけでわらわも辛い……」
私たちの話を聞いたクジャクさんは涙目になっている。
「辛かったのは民たちよ。私や私の家族は民たちに守られてきたおかげで今まで元気で過ごせたわ。逆に民たちは家も食べる物もない状態だったの。だから今、私は民たちに恩返しをしようとしているの。何をするにもお金は必要だわ。だからニコライさんと取引をしたし、そのお金でもっと民たちに良い暮らしをしてもらおうと思っているの。……先はまだまだ長いけれどね」
思ったことをそのまま言うとクジャクさんは呆然としている。そして少し間を開けてから口を開いた。
「……同じ姫という立場ながら、わらわは民のことまで考えてはおらんかった。ただ勉強が嫌いで外に出たいだけであった……。民の一部はこの目を『奇病』や『呪い』と言う者もおるしな……いや、それはただの言い訳であるな……。カレンよ、わらわと友人になってはくれまいか?そなたから色々と学ばせていただきたい。もちろん森の民のことは秘密にする」
そう言ってテーブルに顔が付きそうなほど頭を下げる。モズさんはそんなクジャクさんを驚いた顔で見たけれど、同じように頭を下げる。私は慌てて立ち上がり顔を上げるように告げた。
「やめてやめて!友人関係は頭を下げてなるものじゃないわ!……きっと、さっき手を繋いで町を歩いた時点で私たちはもう友人だったのよ」
そう言うと驚いて顔を上げたクジャクさんは見惚れるくらい美しい笑顔で微笑んでくれた。と同時に「グー」とお腹が鳴っている。
「……腹が減っては何とやらじゃ。店主よ、何か名物料理を頼む!」
さっきまでの雰囲気はどこかへ消し去ったかのように、後ろを向き普通にアンソニーさんに注文をしている。私よりも自由奔放だわ……。でも、この世界で欲しかった友人を得ることが出来て、私は心から嬉しいと思ったのよ。
「あー……まず、なぜリーンウン国の姫がこの国にいるんだ?あの騒ぎのせいで断交状態だろう?」
ペーターさんはクジャクさんに問いかける。
「闇市だ」
笑顔でとんでもない単語を話すクジャクさんに私たちはむせる。モズさんは「順を追って話すように」とクジャクさんをたしなめ、クジャクさんは言葉を続ける。
「完全な断交ではないのだ。あの日あのクソジジ……ごほん……シャイアーク王はわらわの瞳を見て『そんな気味の悪い目など嫁の貰い手がないだろう。だから嫁にしてやっても良い』と言い放ってな。父上が怒り狂う前にわらわが怒り狂ってしまったのじゃ」
なんて酷いことを言うのかしら!?同じ女として許せないわ!
「わらわは頭に血が上ると少し攻撃的になるのでな。目の前にあった物を全て投げつけてやったのじゃ。最終的には喧嘩両成敗というやつじゃな」
自慢気に答えるクジャクさんだが、先ほどのニコライさんに対する態度を見ている限り『少し攻撃的』とは思えない。むしろ強暴だわ……。
「本来なら断交ものだが、リーンウン国にはシャイアーク国との国境しかない上に、シャイアーク国は我が国で作られる薬を欲しがるのでな。国としては輸出という必要最低限の付き合いをしつつ、我が国の特産品をハーザルの街に売っておる。後者の方が闇市にあたる」
「薬?特産品?」
なんとなく疑問を口にすればクジャクさんは答えてくれる。
「テックノン王国が科学技術で薬を作るのに対し、リーンウン国では植物から薬を作る。優劣があるわけではないが体質によって合う合わないがあるのでな。特産品は主に調味料じゃ。ハーザルの街くらいでしか使われぬが『セウユ』と『ミィソ』という」
それを聞いて私は激しく反応してしまう。
「まさか……ディーズを使って作られた黒い液体に、茶色のもったりとした糊状の物じゃ……」
「なぜ原料を知っておる!?秘伝のものだぞ!?……まぁミィソに関しては分かる者には分かってしまうが」
これは大変だわ。絶対にそれは醤油と味噌よね!?なんとしても欲しいわ!そんなことを思っているとペーターさんが口を開く。
「それで、なぜ一国の姫が良い思い出のないこの国にわざわざ来るんだ?」
すると「良くぞ聞いてくれた!」という表情をしたクジャクさんは満面の笑顔で答えた。
「勉強が嫌いだからじゃ!」
それを聞いた私たちはポカーンとし、モズさんは大きなため息を吐いた。
「国におれば勉強しかさせられん。わらわは冒険や旅や刺激的なことが好きなのじゃ」
マークさんが私と気が合うと言ったのが分かる気がしてきたわ。複雑な気分だけれども。
「次はわらわからの質問じゃ。そんな勉強嫌いのわらわでも知っておる森の民の滅亡の話。その森の民がなぜここにおるのだ?匿っておったのか?」
純粋な疑問だったのだろう。小首を傾げてペーターさんに問いかけている。そこにじいやが加わり、今までの経緯やニコライさんとの出会いなどを語った。
「なんと……なんと酷い話じゃ……。そなたカレンと申したな?なんと辛い日々を過ごして来たのか……考えただけでわらわも辛い……」
私たちの話を聞いたクジャクさんは涙目になっている。
「辛かったのは民たちよ。私や私の家族は民たちに守られてきたおかげで今まで元気で過ごせたわ。逆に民たちは家も食べる物もない状態だったの。だから今、私は民たちに恩返しをしようとしているの。何をするにもお金は必要だわ。だからニコライさんと取引をしたし、そのお金でもっと民たちに良い暮らしをしてもらおうと思っているの。……先はまだまだ長いけれどね」
思ったことをそのまま言うとクジャクさんは呆然としている。そして少し間を開けてから口を開いた。
「……同じ姫という立場ながら、わらわは民のことまで考えてはおらんかった。ただ勉強が嫌いで外に出たいだけであった……。民の一部はこの目を『奇病』や『呪い』と言う者もおるしな……いや、それはただの言い訳であるな……。カレンよ、わらわと友人になってはくれまいか?そなたから色々と学ばせていただきたい。もちろん森の民のことは秘密にする」
そう言ってテーブルに顔が付きそうなほど頭を下げる。モズさんはそんなクジャクさんを驚いた顔で見たけれど、同じように頭を下げる。私は慌てて立ち上がり顔を上げるように告げた。
「やめてやめて!友人関係は頭を下げてなるものじゃないわ!……きっと、さっき手を繋いで町を歩いた時点で私たちはもう友人だったのよ」
そう言うと驚いて顔を上げたクジャクさんは見惚れるくらい美しい笑顔で微笑んでくれた。と同時に「グー」とお腹が鳴っている。
「……腹が減っては何とやらじゃ。店主よ、何か名物料理を頼む!」
さっきまでの雰囲気はどこかへ消し去ったかのように、後ろを向き普通にアンソニーさんに注文をしている。私よりも自由奔放だわ……。でも、この世界で欲しかった友人を得ることが出来て、私は心から嬉しいと思ったのよ。
76
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる