貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

文字の大きさ
195 / 370

墓参り

しおりを挟む
 お父様とタデのいつもの喧嘩は終わりそうにないので、私たち女性陣は地面に座り語り合う。私は森の民の風習について知りたいと言うが、お母様もハコベさんも「どれが変わった風習なのかが分からない」と言う。確かにそうだ。けれど二人はたくさんの話を聞かせてくれた。
 お父様はとにかく迷子になるが、森の民であれば当時あった村からどの方角にどれくらい進んでいるのかが分かったそうだ。それは今もそうらしく、広場からどの方角にいるかが分かるらしい。動物の帰巣本能のようなものだろうか? この感覚は説明が難しいとも言われ、お父様にも何回も説明をしたがお父様は理解が出来なかったそうだ。あの方向音痴っぷりを見れば納得だ。

 それと、広大な森の中を歩いていると古い墓を見つけることがあったそうだ。誰がいつ埋葬したのか分からないが、森の一部となり神として見守るその存在に感謝し頭を下げるということも聞いた。

「仮に森の中で迷ったとしても、墓さえ見つけたら村からは二時間から三時間くらいの距離よ。だからモクレンはなんとか帰って来れていたのだけど、そのうちの半分は違う方向に進んでいて大人たちが探しに行っていたわよね」

 お母様とハコベさんは「懐かしい!」と声を出して笑っている。

「それにしても随分と遠い場所に埋葬していたのね」

 私が素直な感想を言うと、お母様とハコベさんは村に伝わる昔話をしてくれた。

 その昔、とても仲の良い夫婦がいて奥さんが病気で亡くなってしまったらしい。悲しんだ旦那さんは奥さんと離れたくないからと、家のすぐ近くに埋葬したそうだ。奥さんを埋葬してから森には雨が降り続けた。

『きっと奥さんが悲しいと泣いているに違いない』

 村人たちはそんなことを囁きあっていたそうだ。旦那さんも寂しがり毎日泣いていた。
 そんなある日のこと、降り続けた雨により地面が緩み始め俗にいう土砂崩れが起こった。小規模ではあったが、その旦那さんの家だけに土砂が直撃し埋まってしまった。
 村人たちが総出で掘り起こすと旦那さんは無事生きていた。けれどその背中には腐り始めた奥さんが抱きついていたらしい……。

「……イヤー!!」

 まさか怪談話になるとは思っておらず、その光景を想像して叫んでしまった。

「だから戻って来ないように遠くに埋めるのよ」

 あまりの絶叫ぶりにお母様たちは苦笑いだ。教訓だとしても本当の話だとしても、あまりホラーが得意ではない私にはなかなかに怖い話であった。

「カレン! どうした!?」
「姫! 何かあったか!?」

 さっきまで掴み合いの喧嘩をしていたお父様とタデが私の絶叫を聞いて駆けつけた。お母様が「村に伝わるあの昔話をしたのよ」と言うと、お父様とタデは口を開いた。

「初めて聞いた夜は眠ることが出来なかったな」

「あぁ。恐ろしすぎてヒイラギと三人で夜通し話し続けたな」

 それを聞いたお母様とハコベさんは初耳だと騒ぐ。男のプライドで内緒にしていたらしいが、今うっかりと話してしまったようだ。大人たちは腹を抱えて笑い合っている。

「さて、何をしていたんだったか……そうか、墓に行くんだったな」

 さっきまでの喧嘩は何だったのだろうと思ったがあえて口に出さず、タデを筆頭に森の中を進んで行く。この辺りになると成長しきっていない小さな木がまばらに生えているくらいで、足元は草のほうが多い。私だけがキョロキョロと辺りを見回しているうちに草原のような場所に辿り着いた。

「着いたぞ」

 足を止めた大人たちの顔を見ると、懐かしむような悲しむような、言葉では言い表すことの出来ない表情をしている。それは当然だろう。森を奪われ知らない土地に追いやられ、どんどんと仲間が亡くなっていくのはどれほどの絶望だったのか私には想像もつかない。そしてこの石を置いただけの簡素な墓の下には、その仲間や自分たちの親族が埋まっているのだ。

「……久しいな……。今では森が広がり……食糧にも困ることはない……。次第にここは森の一部になるだろう……我らを見守ってくれ……」

 お父様は墓の一つ一つにマーグノーラの花を供えながら語りかけている。その声は時折涙声で言葉に詰まっている。お母様はグスグスと鼻を啜りながらお父様とマーグノーラを供えている。

「姫」

 私にとっては面識のない人たちの墓だ。けれど『森の民』の墓だと思うと私も涙ぐんでしまう。お父様もお母様も触れないが、この中に祖父母もいるのだろう。そんな時にタデに呼ばれた。ハコベさんと一緒に小さな石が置かれた墓の前にしゃがんでいる。それを見ただけで泣きそうになってしまった。こぼれ落ちそうになる涙をこらえてタデとハコベさんの元へ向かった。

「姫の……兄だぞ」

 私のことを子どものようだと言ってくれたタデは亡くなったお子さんのことを「兄」と紹介してくれた。それは満面の笑顔で。そしてとめどなく涙を流して。微笑みながら涙を流していたハコベさんは堪えきれなくなったのか、口元を押さえその小さな墓石に抱きついた。

 いろんな感情や人の想いに触れ、自分自身の感情を制御出来なくなった私はただただ声をあげて泣きわめいた。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...