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新たな玩具
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王国の民たちが楽しんでいる中、しょんぼりとしているお父様を不憫に思い、何かしようと思いを巡らせる。あれこれ考えているうちに私は閃いた。
「ヒイ……」
手先の器用なヒイラギを呼ぼうとしたが、奥さんのナズナさんやタデ夫妻、それに私のお母様と共にお父様をいじって楽しそうに笑っている。
楽しい時間を邪魔をするのも申し訳なくなり、辺りを見回したが、人が多すぎて誰が誰だか分からなくなってしまう。一つ言えるのは、水に入るのに抵抗のある者もこの場を気に入って笑ってくれているのが救いだ。
「どうかされましたか?」
ふと背後から声をかけられビクリと肩を震わせた。振り向くとそこにはシャガが立っていた。
「シャガ……」
「何か用事ですか?」
さすが私の行動をよく見ているだけある。すぐに私がそわそわしていることに気付いて来てくれたのだろう。
「えぇ、皆が楽しめるものを作ろうと思って」
それを聞いたシャガは一度この場を離れ、ハマスゲだけを連れて来た。イチビは老若男女問わず人気者で、水への抵抗を無くそうと無理のない範囲で皆を楽しませようと頑張ってくれている。
そしてオヒシバは普段は残念な部分が目立つが、意外にも子どもたちに人気なので子どもたちと共に水遊びをしている。
「道具がありませんよね? 一度戻りましょう」
何も言わずとも、二人はそう言って歩き出した。その二人を追って歩き出すと「待ってー!」と声が聞こえ、一旦足を止めて振り向いた。
「カレンどこに行くの?」
スイレンは不思議そうな顔で私に問いかけた。走って来た割には息切れをしておらず、スイレンも体力がついたなぁと姉としては嬉しく思う。
「何か楽しいことをしようとしているのかな?」
そのスイレンの後ろにはワクワク顔のブルーノさんまでいるではないか。
「玩具を作ろうと思って……」
『玩具』の『が』の辺りから二人の目は輝き始めた。スイレンは私の考えるものを応用すれば、もっと良い何かを思い付けるかもしれないと言い、ブルーノさんは私といると自分の知らないものを知ることが出来ると、二人は純粋な探究心から私についてくると言う。
シャガもハマスゲもそれを聞き、笑いながら「ではご一緒に」と、また歩き始めた。
────
水車の脇に置きっぱなしだった道具やタッケを手にすると、皆はまた蛇籠を作ると思ったのかタッケを割ろうとし始めたのでそれを止める。
「あ、違うの。タッケを使うのだけれど、蛇籠ではないのよ」
そう言いながら程よい太さのタッケと、細いタッケを選んで行く。シャガに他に必要な道具はあるのかを聞かれたので欲しいものを伝えると、わざわざ広場の方へ取りに行ってくれた。
「カレンちゃんは何を作るのかな?」
スイレンよりも幼い子のように、ブルーノさんはお父様とは違った意味ではしゃいでいる。
「うーん……説明するよりも、完成品を見て楽しんだほうが早いと思うわ」
それを聞いたスイレンとブルーノさんは顔を見合わせ、楽しそうに笑い合っている。この二人は歳の差を感じさせないほど仲が良く、とてもウマが合うようなのだ。
シャガが戻る前に作業を進めようと、皆でタッケを切っていく。あの貧弱だったスイレンは、それは見事なノコギリさばきを見せ、立派な男の子になったものだと感心してしまう。これもきっとブルーノさんのおかげなのだろう。
太いほうのタッケをスイレンとブルーノさんに任せ、節の近くで切ってもらう。私とハマスゲは細いタッケを切っていると、シャガが荷物を持って戻って来た。
スイレンたちが切ったタッケに穴を開け、私が切ったタッケに布を巻き付け紐で縛る。スイレンたちは興味津々といった様子で見ているので、ちゃんと使えるかの確認をするために水路へと向かう。
「行くわよ! スイレン!」
そう叫びながらスイレンの顔を目掛けて水をかける。
「ひゃあ!」
突然水をかけられたスイレンは情けない叫び声を上げながらも、目を輝かせ私の作ったものを見ている。そう、これはタッケの水鉄砲だ。
「何それ! どうなってるの!?」
「詳しく見ても良いかな!?」
なんてことはない、美樹の近所のおじいちゃまたちが作ってくれた水鉄砲を真似ただけだが、スイレンとブルーノさんの食いつきが半端ない。
簡単な作りではあるが、仕組みなどを説明すると二人は「はー!」とか「ほー!」とか、思い思いの感嘆の言葉をもらしていた。
その間にシャガとハマスゲは、私の作っていた姿を真似て水鉄砲を作っていた。
「……布が少なくても駄目なんですね」
見様見真似で作ったシャガとハマスゲの水鉄砲は、布の巻きが足りないためにあまり水が飛ばない。ならばと二人は布を足し、ちゃんと水が飛ぶ水鉄砲を作り上げた。
「これはみんな喜ぶよ!」
子どもらしく水鉄砲で遊びながらスイレンはそう言った。普段、現場を任せっきりにし、この歳で監督のようなことをさせてしまっているので、スイレンが純粋に遊んでいる姿がとても嬉しい。
それから私たちは手分けして、数十個の水鉄砲の製作に励んだ。早く皆の驚いたり喜んだり楽しんだりする姿が見たい。それを想像してニヤニヤが止まらなくなってしまったのだった。
「ヒイ……」
手先の器用なヒイラギを呼ぼうとしたが、奥さんのナズナさんやタデ夫妻、それに私のお母様と共にお父様をいじって楽しそうに笑っている。
楽しい時間を邪魔をするのも申し訳なくなり、辺りを見回したが、人が多すぎて誰が誰だか分からなくなってしまう。一つ言えるのは、水に入るのに抵抗のある者もこの場を気に入って笑ってくれているのが救いだ。
「どうかされましたか?」
ふと背後から声をかけられビクリと肩を震わせた。振り向くとそこにはシャガが立っていた。
「シャガ……」
「何か用事ですか?」
さすが私の行動をよく見ているだけある。すぐに私がそわそわしていることに気付いて来てくれたのだろう。
「えぇ、皆が楽しめるものを作ろうと思って」
それを聞いたシャガは一度この場を離れ、ハマスゲだけを連れて来た。イチビは老若男女問わず人気者で、水への抵抗を無くそうと無理のない範囲で皆を楽しませようと頑張ってくれている。
そしてオヒシバは普段は残念な部分が目立つが、意外にも子どもたちに人気なので子どもたちと共に水遊びをしている。
「道具がありませんよね? 一度戻りましょう」
何も言わずとも、二人はそう言って歩き出した。その二人を追って歩き出すと「待ってー!」と声が聞こえ、一旦足を止めて振り向いた。
「カレンどこに行くの?」
スイレンは不思議そうな顔で私に問いかけた。走って来た割には息切れをしておらず、スイレンも体力がついたなぁと姉としては嬉しく思う。
「何か楽しいことをしようとしているのかな?」
そのスイレンの後ろにはワクワク顔のブルーノさんまでいるではないか。
「玩具を作ろうと思って……」
『玩具』の『が』の辺りから二人の目は輝き始めた。スイレンは私の考えるものを応用すれば、もっと良い何かを思い付けるかもしれないと言い、ブルーノさんは私といると自分の知らないものを知ることが出来ると、二人は純粋な探究心から私についてくると言う。
シャガもハマスゲもそれを聞き、笑いながら「ではご一緒に」と、また歩き始めた。
────
水車の脇に置きっぱなしだった道具やタッケを手にすると、皆はまた蛇籠を作ると思ったのかタッケを割ろうとし始めたのでそれを止める。
「あ、違うの。タッケを使うのだけれど、蛇籠ではないのよ」
そう言いながら程よい太さのタッケと、細いタッケを選んで行く。シャガに他に必要な道具はあるのかを聞かれたので欲しいものを伝えると、わざわざ広場の方へ取りに行ってくれた。
「カレンちゃんは何を作るのかな?」
スイレンよりも幼い子のように、ブルーノさんはお父様とは違った意味ではしゃいでいる。
「うーん……説明するよりも、完成品を見て楽しんだほうが早いと思うわ」
それを聞いたスイレンとブルーノさんは顔を見合わせ、楽しそうに笑い合っている。この二人は歳の差を感じさせないほど仲が良く、とてもウマが合うようなのだ。
シャガが戻る前に作業を進めようと、皆でタッケを切っていく。あの貧弱だったスイレンは、それは見事なノコギリさばきを見せ、立派な男の子になったものだと感心してしまう。これもきっとブルーノさんのおかげなのだろう。
太いほうのタッケをスイレンとブルーノさんに任せ、節の近くで切ってもらう。私とハマスゲは細いタッケを切っていると、シャガが荷物を持って戻って来た。
スイレンたちが切ったタッケに穴を開け、私が切ったタッケに布を巻き付け紐で縛る。スイレンたちは興味津々といった様子で見ているので、ちゃんと使えるかの確認をするために水路へと向かう。
「行くわよ! スイレン!」
そう叫びながらスイレンの顔を目掛けて水をかける。
「ひゃあ!」
突然水をかけられたスイレンは情けない叫び声を上げながらも、目を輝かせ私の作ったものを見ている。そう、これはタッケの水鉄砲だ。
「何それ! どうなってるの!?」
「詳しく見ても良いかな!?」
なんてことはない、美樹の近所のおじいちゃまたちが作ってくれた水鉄砲を真似ただけだが、スイレンとブルーノさんの食いつきが半端ない。
簡単な作りではあるが、仕組みなどを説明すると二人は「はー!」とか「ほー!」とか、思い思いの感嘆の言葉をもらしていた。
その間にシャガとハマスゲは、私の作っていた姿を真似て水鉄砲を作っていた。
「……布が少なくても駄目なんですね」
見様見真似で作ったシャガとハマスゲの水鉄砲は、布の巻きが足りないためにあまり水が飛ばない。ならばと二人は布を足し、ちゃんと水が飛ぶ水鉄砲を作り上げた。
「これはみんな喜ぶよ!」
子どもらしく水鉄砲で遊びながらスイレンはそう言った。普段、現場を任せっきりにし、この歳で監督のようなことをさせてしまっているので、スイレンが純粋に遊んでいる姿がとても嬉しい。
それから私たちは手分けして、数十個の水鉄砲の製作に励んだ。早く皆の驚いたり喜んだり楽しんだりする姿が見たい。それを想像してニヤニヤが止まらなくなってしまったのだった。
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