貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

文字の大きさ
281 / 370

上げて落とす

しおりを挟む
 それなりの時間を要してタッケの水鉄砲を作って満足したが、まだ中途半端にタッケが余っている。それを見て子ども用の、いや、大人でも一人くらいは乗れそうなイカダを作ってしまおうということになった。

 以前、川でじいやはイカダに身を預けながら空を眺め、『いつかのんびりと空を見たいと思っていた』と言っていた。
 もしかしたら民たちの中にも同じようなことを思っている人がいるかもしれない。という真面目なことを心の中で思っていたが、ブルーノさんが楽しみすぎて爆発しそうになっている。

「あああぁぁぁ! 早く乗り心地を確かめたい! 水に濡れるのは構わないが、こんなに面白そうなものはぜひとも乗りたい!」

 腹の底から声を出しながら、ブルーノさんは私たちとミニイカダを製作する。そのはしゃぎように私たちは笑いが止まらない。
 むしろ小型の船にしか乗ったことがないそうで、このような原始的な、しかもタッケを使ったイカダに興味津々らしいのだ。そしてリトールの町へと帰ったら、簡単な船の設計図を石版に残しているのでスイレンに教えてくれるとまで言ってくれた。

「それは助かるわ。私も作り方を全く知らないわけではないのだけれど、作ることを考えたらもの凄く大変なのが分かるから……」

 美樹のご近所さんには漁師もいたため、小型木造船の作り方を少しだけ聞いたことがあった。もっとも美樹がそのご近所さんから聞いた時には、港に留まる船の大半がFRP素材の漁船ばかりで、木造船はなかったのだけれど。

「ヒイラギくんを筆頭に、この国の人たちなら問題なく作れるはずだよ」

 そう言ってブルーノさんは笑った。確かに私たちは今まで不可能を可能にしてきたのだ。……ヒイラギならきっとやってくれるわ! 私は密かに、造船作業には参加したくないと心の中で思った。

────

「あら……?」

 ポニーとロバも一緒に遊ばせるつもりで、二頭に荷車を取り付け水鉄砲やミニイカダを載せて来たが、まだお父様はタデたちにからかわれていたようだ。
 この場を去る時は体育座りをしていたお父様だったが、地面に突っ伏しそのまま大地にめり込みそうになっている。そしてお母様たち女性陣は、お父様をからかうのに飽きたのか、他の民たちとオアシスの浅い場所で遊んでいる。

「お父……」

 お父様に声をかけようとしたが、他の民たちに「何かを作ったのですか!?」と聞かれ、揉みくちゃになってしまった。
 その対応をしながらお父様を目で追うと、半草地となった砂山を越えてトボトボと歩いている。どうでも良いことだが、あの場所は砂が溜まりやすいようで、以前お父様が砂を蹴散らしたのに元の砂山となり、雑草と砂とで陣取り合戦を繰り広げている。

「スイレン、この場を任せたわ」

 そう言い残し、スイレンの返事も聞かないままお父様の歩いて行った方向へ走った。そして砂山を登っていると、聞き慣れた雄叫びが聞こえて来た。いろいろと心配になり、急いでその方向へと向かう。

「ぬおぉぉぉ! うおぉぉぉ!」

 水に沈んだイケメン筋肉ゴリラのようなお父様は、象が鼻を動かしながら鳴くかのように、頭をブンブンと振って甲高く叫んでいる。本当に精神状態が大丈夫かと心配になったが、お父様の視線の先を辿って驚いた。

「嘘ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 見事なまでに、お父様に負けないくらいの子象のような雄叫びを上げてしまった。

「あ、姫だ」

 一応お父様を気遣ってかタデとヒイラギが同行していたようだが、私の叫び声で振り向いたヒイラギは爽やかに微笑んでいる。

「何これ! 何これ!? すごぉぉぉい!!」

「ぬおぉぉぉ!!」

 お父様の隣まで走り、お父様の謎の動きにつられ私まで左右に頭を振りながら叫んでしまった。私たち父娘の野生的な叫び声に反応し、その谷底にある本物のオアシスの色とりどりの鳥たちもけたたましく鳴き始めた。

「この途中でリーンウン国に旅立ったからな」

「私たちがちゃんと完成させておいたよ」

 先程までお父様をこれでもかと言うほどからかっていたタデとヒイラギは、お父様の肩を叩き私の頭を撫でてそう言った。

 まだ見ぬオアシスへの敵に備えお父様は保護活動を始めたが、その途中で私たちはクジャたちの元へと向かった。それを二人は見事に完成させていたのだ。
 オアシスは谷底にあるが、そこに人や動物が落ちないようにグルリと柵を巡らせ、空からの何かの攻撃に備えオアシス上空には鉄線が張り巡らせている。

「これ……編んだの?」

 その鉄線を良く見てみれば細い鉄線を編み込み、より強度を増した鉄線となっていた。
 タデとヒイラギによると、元々は植物のツルを使って編むものなので、私が思うほど苦労はしなかったそうだ。けれどこの広大な場所をカバーするのにどれだけ労力を使ったことだろう。頭が下がる思いだ。

「タデ……ヒイラギ……私のために感謝する! 家族の次に愛しているぞ!」

 そう言ったお父様はタデとヒイラギに抱きつこうとしたが、二人は華麗に見を躱した。

「お前の愛などいらない。ハコベと姫がいれば良い」

「私もナズナと姫がいれば満足」

 タデとヒイラギはそう言い放ち、どちらが私を抱っこするかで揉め始めた。その後ろでお父様はまた地にめり込みそうになりながら、静かに悲しみに暮れていたのだった。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...