桜のあと 私の推しの美男子看護師さん番外編(リハビリ)

中川四角

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リハのイケメン新さん

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 リハのイケメン新(あらた)さんに初めて会った頃、私は、リハビリどころではなかった。人工呼吸器につながれていたのだ。

 こんな状態で体を動かせるわけがない。少し動かした所でどうなるの?という気持ちだった。新さんの並外れた、美しい顔面が慰めにもならないくらい私は苦しい状況だった。

私は話す事もできず筆談で、新たさんも口数の多い人ではなかったと思う。筆談と言うのは不思議なもので、普通は話せないことなども何故か気軽に話せたりする。

そして、何故か相手も打ち解けてくれるのが速いように思う。

私には話すスピードで書けると言う特技があった。ついでに口で説明できない時はイラストを付けたりもする。

私は新さんを病院内の何処かで見たような気がしていた。こんなイケメンがざらにいるわけがない。似た人かも知れない。どこで見たのだろう、救急センター?の様な気がした。

強い薬や眠剤も使っていたので、夢の様なものを見ただけなのかもしれない。

「双子ですか?ドッペルゲンガー?」

「20代なのに落ち着いた物腰が武士みたい。」

なんて、好き勝手な事を言っても新さんは、柔軟な面白い返事を返して来てくれた。穏やかで優しくて、
実はリハビリ以外の事も困っているとすぐにさりげなく助けてくれる。

「奥さんと、新さんは、どっちが美しい?」

と言う私の突然の質問に、少し考えてから、

「僕。」

と、冗談とも本気ともつかない返事をして、周りの看護師さんも笑わせていた。新さんがいると場が和むのだ。
いつもそう。

口数が少ないのに面白くて冗談も通じて、口には出さないけど、優しさがじんわり伝わって来るような人柄だ。

悩みを相談するようなこともほとんどない。もうわかってくれているという安心感。

爽やかで爽やかすぎない、絶妙なライン。
この人といると、とにかく気楽と思っているのは私だけだろうか?

リハビリでは間近で体を支えてもらったり、新さんの首につかまったりしないといけないから、そんなの大半の女子はイケメン過ぎてすぎて気絶しそうになるかも?

病棟移動が多い私にとって、新さんは長く一緒にいる心強い味方となっていく。

テニスが得意、空手をやっていた事、実はピアノも弾ける。ちょっとずつ、新さんの事で知っていることが増える。

そんな私にリハビリ低迷期がやってくる。


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