桜のあと 私の推しの美男子看護師さん番外編(リハビリ)

中川四角

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又森さん

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 私は術後、今までできた事ができなかったり、うまくリハビリが進まないでいた。手術の後に状態が一時的に落ちるのは予想していたものの、戻りは遅く感じた。

それは、他の人から見たらほんの少しの事かもしれない。

私には、ずっとこの苦しさが続くように思えた。そして誰にも、その辛さはわかってもらえないように思えた。

術前のあの時、簡単にできた事ができない。力を入れようとしても力も入らない。そんな日が続いた。

「真希さん頑張って、今頑張らないとダメだよ。ギアを上げていこう。」

「今、頑張れと言わない人は悪い人だよ。」

主治医と、騎馬ちゃんは同じ事を言った。その励ましがきつい。リハビリどころか動けない日もあった。

騎馬ちゃんはまだ25才、お肌が綺麗で黒髪の、整った顔の塩顔イケメンだと思う。いつも明るく元気で場を楽しくしてくれていた。

私がこの病院を歩いて帰れるようにしてあげると言ってくれていた。

その時は、彼女の写真を見せてくれる事になっていた。

私の体は思うように動かず、入院期間だけが予想より短くなっていた。

そしてある日、

「騎馬の代わりに、僕の上司にあたるものが来ますから、安心してください。」

と、リハビリの新(あらた)さんは言った。

私がリハビリで悩んでいる事を察して、誰かがリハビリをしばらく、騎馬ちゃんから又森さんと言う人に代えたようだった。

又森さんは、しばらく騎馬ちゃんの代わりに来てくれるという事だった。

ある日の午前中、又森さんがやって来た。そして、準備運動のような事をした。

「あら、楽しい所をお邪魔してごめんなさいね。」

主治医がそこに顔を出した。

「そうだよー。2人で楽しんでるんだから、邪魔しないでよ。」

と、私は主治医に冗談で言う。

そうは言ったものの、リハビリの又森さんは、何故か印象に全く残らない人だった。普通そんな事を言ったら怒られると思うけど、たぶん彼は怒らない。

途中で入ってきた、主治医が特別美形の若いドクターだからと言う事でも無い。なんというかその、又森さんには、いい意味で存在感が無いのだ。


一いい意味でって何よ?あはは。


主治医の心の声が聞こえてくる。主治医は目をキラキラさせている。面白い事が大好きなのだ。

主治医はいつもの通り、ちょっと前髪を気にしてる。前髪を気にしながら、眉間にシワを寄せるクセがあった。

一眉間にシワよせるのは、やめなよ。きれいな顔が台無しになるよ。

私も心の声で返す。

一ふふん。あたし、そんなイケメンとかじゃないんで。

主治医はちょっと変顔を、してみせる。


「今日はこれくらいで終わりです。また明日。」

「ありがとうございました。」

又森さんは去っていき、主治医が残った。

「どうだった?新しいリハさん。」

「うん、普通という良質的な。」

「それは、やりやすいかもね。」

この時まだ私は、又モンの秘めたものに全く気付かないでいた。


一番辛いときからずっと一緒だったキバちゃん。いつも一生懸命私をみてくれたキバちゃん、これでいいのだろうか?

もう後戻りはできない。



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