龍青学園GCSA

楓和

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第5章の3「全然分かんなかった」

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 正門までの道を開き、竜沢達を無傷で通り抜けさせる流香の作戦に反対する竜沢を、全員で説得。
そして黒点塾正門に集まっている塾生達の方へ突っ込む学美、七月、流香。
遂に、黒点塾との戦いの火蓋が切られた。

 まず塾生達に学美が突っ込み、一歩前に居た男塾生が短めの棍棒を真っ直ぐ突いてきたので体を回転させて懐に入り込み、左手の裏拳を相手の顎に決めた。更にその横に居た女塾生の腹部に強烈な右正拳突きを入れる。一瞬で二人倒す学美。
続いて七月が走り込んでくると、ヌンチャクを持った女塾生がサイドからヌンチャクを振り攻撃を入れにきたので素早くしゃがんでかわし、両手を地面に着いてその手を軸に足を回転させて女塾生の足を払う。ヌンチャクの女塾生は勢いも手伝って思い切り倒れた。七月は素早く足を地面に着けてジャンプし、倒れた女塾生の腹部目掛けて膝を落とす。一人倒す七月。
その七月に木刀を振り下ろした女塾生に対し、走り込みながら真・花柳を下段から上段に振り上げて木刀を弾き返す流香。そして振り上げた真・花柳を捻って振り下ろし、女塾生の手に当てて木刀を落とさせる。そして間髪入れずに回転し、背後から迫っていた男塾生の横腹に真・花柳を当てた。二人倒す流香。

 「………」

その戦いを、正門の方を睨みつけたまま表情を変えずに無言で見ていた竜沢だったが、内心は…

 〝つ、強えぇぇぇぇぇ!マジで俺の数倍強えぇぇぇぇぇ!〟

女三人に恐怖を感じまくっていた。さっきまで心配していた自分の認識の甘さを痛感した竜沢であった。
そして実は、恐怖を感じていたのは竜沢だけではなかった。

 〝こ、ここ、こらあかんっ!もう絶対に逆らわんとこっ!〟
 〝親父…あんたが言っていた強い者とは…あいつらか?!〟
 〝ぼ、僕達の周辺に居る女性はみんな…こ、怖いですよ!〟

『突入するの、あの子らで良かったんちゃう?』と思っていた竜沢達であった。

そんな竜沢達の目に、正門までの直線ラインが徐々に開いていくのが見えた。

 〝もう少しだ…〟

構える竜沢達。

 「はっ!」

七月の回し蹴りが女塾生に炸裂。しかし、蹴りを放った後の隙をついて男塾生の上段蹴りがきた!

 「ぐっ!」

見えていたが避ける事が出来ず、それでも咄嗟に体を捻って肩で受けた七月だったが、態勢が不十分だった事もあり横方向へ飛ばされた。

 「おっと!」

態勢が崩れた七月の体を支えたのは学美。そしてここで…

 「行くよ?」
 「おうっ!」

テンポ良く言葉を交わした後、七月の体を男塾生の方に強く突き飛ばす学美。

 「うらぁ!」

七月はその勢いを利用して、蹴りのお返しとばかりに自分に蹴りを入れた男塾生の顔に右上段蹴りをくらわした。学美に突き飛ばしてもらった為スピードと威力が上がり、蹴りをくらった男塾生はもんどり打って倒れた。
学美は七月を突き飛ばした後、振り向き様にトンファーを構えて近付いてきた男塾生の横腹に蹴りを入れ、顎に掌底を放つ。男塾生は後方に倒れた。
学美と七月は塾生達を正門から右側へ押して離れて行き、左側は流香が一人で押していたが、少し押し返されていた。

 〝ここで踏ん張らないと…〟

ここで流香は真・花柳の構えを変えた。右手で柄の末端を握り、両腕を左右に広げた。

 〝母さん…〟

流香の脳裏に母・天野舞香(まいか)の言葉が浮かぶ。


 「流香、あなたの剣は強過ぎるのよー。」

それは、天野一刀流道場での一幕。流香が会得したい奥義の一つ『流転残花(るてんざんか)』を母親に教わっていた時の事だ。
袴姿の二人の周囲には、木製人形が五体並べられている。流香の持つ木刀の先端には赤い塗料が付けられており、木製人形二体の顎部分にはその赤い塗料が付いていたが、他の三体には額部分や肩部分にしか付いていない。

 「強くて当たり前でしょ?相手を倒す技なんだから。」
 「ん~…この奥義は人を想う心、慈しむ心が大事なの。」
 「ふぅ~、母さんの言ってる事はいつも抽象的で分からない。」
 「あらまぁ。」

舞香はフワッとしたボブカットの髪の上から指を頬に当て、首を傾げる。
そんなフワフワした温和な性格の舞香だが、天野一刀流の師範代である。父親から引き継いだこの道場は守り抜くと誓っており、その思いは強くて一途。そんな温和でありながら強さを併せ持つ舞香は、全ての奥義を三年で会得した天才剣士であり、正統後継者と呼ぶに相応しい女性なのだ。
ちなみに…そんなギャップに惚れた流香の父親・輝一(きいち)は、財閥の御曹司でありながら親の反対を押し切って婿養子になっている。
※後にその事が元で『流香誘拐事件』に発展したのだが、その時初めて会った竜沢と鏡の活躍で流香は救い出され、事無きを得たという出来事があった。

 「まぁでもそんなものよ~?」

人差し指を立ててほわ~っと言う舞香。
そして舞香は持っていた木刀の末端を握り、両腕をゆっくりと広げた。舞香の木刀の先には青い塗料が付けられている。無言で舞香から離れる流香。

 「すぅ~…」

舞香が息を吐くと、周囲の空気が張り詰めた。そして次の瞬間、舞香が動く!
その動きは剣技と言うより舞踊。見惚れていた流香が我に返ると、五体の木製人形全ての顎に青い塗料が付いていた。

 「あ…」
 「分かった?流香。」
 「ふぅ~…全然分かんなかった。」
 「あらまぁ。まぁ今はそれでいっか。お茶にしよっ。」

人差し指を立ててほわ~っと言う舞香。


 〝今なら母さんの言ってた事も分かる。だから…〟

 「すぅ~…」 

流香が息を吐く。流香の奇妙な構えに塾生達は一瞬怯んで立ち止まっていたが、さすが喧嘩慣れしている連中である。すぐにガラ空きの腹部目掛けて木刀、三段ロッド、トンファーで打撃を入れにきた。

 「流香?!」

学美が気付き、声を出した…その瞬間、流香が舞った。
素早く、且つしなやかに肩、肘、手首を動かしながら回転し、華麗に真・花柳を振った。

 「うっ!」
 「がっ?!」
 「え?」
 「げっ!」
 「ぐ…」

流香を狙って前に出た塾生五人が全員、顎に軽く痛みを感じたと思ったら立っていられなくなり、崩れ落ちた。

 「な、何だ?」
 「足が…」

大したダメージも感じていないのに、足がガクガクして立ち上がる事が出来ない塾生達。

 「す、すげ…」

目玉飛び出しそうな学美。学美や七月を含め、他の塾生達も一瞬目を奪われて動きが止まる。
そして、ここで正門までの直線コースが完全に開いた!
流香の奥義『流転残花』に目を奪われる事なく、神経を研ぎ澄ましていた隆正が吠える!

 「行くで!続け!」

隆正が全力でダッシュ。その後、間髪入れず鏡が続く。更に竜沢が行き、甲がしんがり。
それに気付いた一人の男塾生が六尺棒を構え、正門までの直線上に入った。正門まで数メートルの位置で、六尺棒を隆正目掛けて振り下ろす男塾生。だが、隆正の走りは振り下ろすスピードより早い!

 「急に止まれんで!」

ギプスで固められた左腕を前にし、そのまま突っ込んで男塾生を跳ね飛ばした!

 「ぐぎゃあぁぁ!」
 「くっ!」

男塾生を吹っ飛ばしはしたが、隆正もそのまま地面に転げてスライディング。その横を走り抜けて正門に到達する鏡、竜沢。最後の甲は、走りながら隆正に手を差し出す。

 「隆正!」
 「お、おう!」

倒れたまま甲に向けて手を上げる隆正。甲はその隆正の手を取った。

 「ぬぅん!」

走って来た勢いのまま隆正を引っ張り上げる甲。凄まじい力だ。隆正の体が若干宙に浮いた瞬間に手を放す甲。隆正は膝を曲げて着地し、その反動で正門へジャンプした。

 「甲くん、門を!」
 「ふんっ。」

鏡に言われるまでもなく、素早く正門の門扉を閉じている甲。そして閂を掛けながら、流香、七月、学美の方を見て、軽くうなずいた。

こうして竜沢達四人は、黒点塾の正門を通り抜けた。
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