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第5章の12「負ける訳が…無い!」
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塾長専用トレーニングルーム。
ブラックマスクの咆哮が響き渡り、深雪は悲しみに暮れ、竜沢は床面に転がっている。
「…っ?」
そんな深雪の背後に誰かが居る。深雪が気付くと、背後の男が囁いた。
「静かに…」
それは利住だった。バタフライマシンにつかまり、何とか立っている。
そして侵入の際、事務室から持ち出していたカッターナイフで深雪が括られている紐を切ろうとしていた。
目線は変えずにうつむいた状態のまま、小声で利住に声を掛ける深雪。
「利住くん、大丈夫なの?」
「そ、そう答えたいとこだけど…立ってるのがやっとだよ♪」
いつもの様に語尾にテンポをつけるが、それは精一杯の強がりだった。それでも手を止めない利住。
「だから…ごめん深雪さん。あんたに…重荷を背負わせる事に…なる。」
そして深雪の耳元で何かを伝える利住。
「そんな事が?…分かったわ。」
決意した瞳でそう答える深雪。
「紐を…お願い。」
「ふっ…任せてよ♪」
正直、かなりツラい利住。足もガクガク震え、手にも思う様に力が入らない。それでも必死に紐を切る。
深雪に託して…。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ…」
その時、ブラックマスクが深雪の方に振り返ろうと動いた。
「くっ…」
利住が見つかる…そう感じてビクッとする深雪だったが、そのブラックマスクの向こう側に立つ男が目に入った。
「そ!そんな…本当に…」
深雪は驚きを隠せない。
「ば、馬鹿な…」
気配に気付き、深雪の方に振り返るのを止めたブラックマスクは、その男と自分の拳を交互に見た。メリケンサックをはめた右拳が震える。
「何故…何故だ!何故立ち上がっている?!」
「はぁ、はぁ…」
竜沢だ!竜沢が立ち上がっていた!
「立てるようになったのは一歳になる少し前だった。」
ふざけた事を言いながら、鼻の下と口元に付いていた血の跡を拭う様に手で擦る竜沢。
それを見た利住は驚いた後、ほくそ笑んだ。
〝あいつの…高瀬の言った通りか。…ははっ、お前を助けるつもりだったのに逆にお前の負担になってしまうなんて…竜沢、すまない。けど…頼む〟
利住は深雪の右手を括っていた紐を切った。そしてカッターナイフを深雪に持たせると、ゆっくりと両膝を落としてバタフライマシンにもたれ掛かったまま気を失った。
「お、お前は何だー!」
「人間だー!」
間髪入れずにツッコミを入れる竜沢。
「ふぬぅおおーっ!」
ブラックマスクが再び竜沢に突っ込む。
「ちょ、ちょっと待て!そんなツッコミは…」
竜沢に走って来た勢いのままジャンピングニーパッドをぶち込むブラックマスク。両手でブロックはしたものの凄まじい破壊力だった為、ブロック越しに顔面を強打した上に吹っ飛ばされる竜沢。
「ふぅ、ふぅ、ど、どうだ!」
「……………ってぇなー。」
それでも上半身を起こす竜沢。
「また鼻血出ちまったじゃねぇか!」
鼻を拭きながら立ち上がる竜沢に、ブラックマスクは恐怖を感じつつあった。
「い、いったいこいつは…」
今までこれだけの攻撃を受けて立って来た者はいない…ブラックマスクは動揺している。
「何が起こっている?」
「人をバケモン扱いしてるけど、あんたの方がふぅおふぅお吠えてばっかで獣みたいじゃねーか。」
竜沢は正面からブラックマスを指差す。
「あんたと戦う理由は無い…けど、深雪先生を助けるにも、音根達を助けるにも、とにかくまずは暴走しているあんたを止める以外に方法は無いみたいだな。」
竜沢はブラックマスクに向けた人差し指を曲げ、握り拳に変えた。
「普通の人間に戻してやる!」
握った拳をブラックマスクに向けたまま言い放つ竜沢。
「く、ぬ…ぐぉほほほぉー!」
ブラックマスクは自分の中に産まれた『恐怖』という感情を払拭すべく、両拳で胸を何度も強く叩く。
「今ゴリラか?!人間まであと一歩!」
とりあえずボケを入れておく竜沢。
「…りゅ、竜沢、何故お前は…立ち上がれる?」
「…立たなきゃ誰も守れないだろ。」
「り、理解不能…。お前はここに来るまで仲間と呼べる者達を捨てて来た。誰も守れていない。」
「もう結果論?まだ何も終わってないのに?」
「なん…だと?」
「流香、学美、七月、甲、隆正、鏡…俺があいつ等を捨てて来たって?…脳みそはゴリラに及ばないな。」
竜沢がブラックマスクを睨む。
「俺は仲間が大事だからここに居る!仲間が大事だから立つ!仲間を守る為にお前を止める!それが分からないお前に、負ける訳が…無い!」
「り…理解不能ぉぉお―!」
大きく吠えたブラックマスク。そんなブラックマスクの腕を、背後から深雪がつかむ!
「深雪先生?!」
「ぬぅっ?!」
深雪の方を向くブラックマスク。
「戻って!昔のあなたに!」
「ぬ…ぬ、ぐ……は、離……せぇえぇぃ!」
腕を振り上げ、深雪を跳ね除けるブラックマスク。
「きゃあ!」
深雪は吹っ飛び、床に転がった。竜沢の目に…そのシーンが映り込む。
「…ふ…ふっ、くく…」
「…むぅ?!」
深雪を跳ね除けた後、竜沢の様子が変わった事に気付くブラックマスク。
「お…おん、なの人に…て、手を…くっくく…」
竜沢の額の傷が完全に塞がり、頬や鼻にあった傷も治り始めた。
「な、何が…」
今まで以上に驚愕するブラックマスク。
「くっくく…お、お前を、た、たお、す…」
竜沢の目と眉は吊り上がり、口元には笑みが浮かぶ。
マッド竜沢…発動。
ブラックマスクの咆哮が響き渡り、深雪は悲しみに暮れ、竜沢は床面に転がっている。
「…っ?」
そんな深雪の背後に誰かが居る。深雪が気付くと、背後の男が囁いた。
「静かに…」
それは利住だった。バタフライマシンにつかまり、何とか立っている。
そして侵入の際、事務室から持ち出していたカッターナイフで深雪が括られている紐を切ろうとしていた。
目線は変えずにうつむいた状態のまま、小声で利住に声を掛ける深雪。
「利住くん、大丈夫なの?」
「そ、そう答えたいとこだけど…立ってるのがやっとだよ♪」
いつもの様に語尾にテンポをつけるが、それは精一杯の強がりだった。それでも手を止めない利住。
「だから…ごめん深雪さん。あんたに…重荷を背負わせる事に…なる。」
そして深雪の耳元で何かを伝える利住。
「そんな事が?…分かったわ。」
決意した瞳でそう答える深雪。
「紐を…お願い。」
「ふっ…任せてよ♪」
正直、かなりツラい利住。足もガクガク震え、手にも思う様に力が入らない。それでも必死に紐を切る。
深雪に託して…。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ…」
その時、ブラックマスクが深雪の方に振り返ろうと動いた。
「くっ…」
利住が見つかる…そう感じてビクッとする深雪だったが、そのブラックマスクの向こう側に立つ男が目に入った。
「そ!そんな…本当に…」
深雪は驚きを隠せない。
「ば、馬鹿な…」
気配に気付き、深雪の方に振り返るのを止めたブラックマスクは、その男と自分の拳を交互に見た。メリケンサックをはめた右拳が震える。
「何故…何故だ!何故立ち上がっている?!」
「はぁ、はぁ…」
竜沢だ!竜沢が立ち上がっていた!
「立てるようになったのは一歳になる少し前だった。」
ふざけた事を言いながら、鼻の下と口元に付いていた血の跡を拭う様に手で擦る竜沢。
それを見た利住は驚いた後、ほくそ笑んだ。
〝あいつの…高瀬の言った通りか。…ははっ、お前を助けるつもりだったのに逆にお前の負担になってしまうなんて…竜沢、すまない。けど…頼む〟
利住は深雪の右手を括っていた紐を切った。そしてカッターナイフを深雪に持たせると、ゆっくりと両膝を落としてバタフライマシンにもたれ掛かったまま気を失った。
「お、お前は何だー!」
「人間だー!」
間髪入れずにツッコミを入れる竜沢。
「ふぬぅおおーっ!」
ブラックマスクが再び竜沢に突っ込む。
「ちょ、ちょっと待て!そんなツッコミは…」
竜沢に走って来た勢いのままジャンピングニーパッドをぶち込むブラックマスク。両手でブロックはしたものの凄まじい破壊力だった為、ブロック越しに顔面を強打した上に吹っ飛ばされる竜沢。
「ふぅ、ふぅ、ど、どうだ!」
「……………ってぇなー。」
それでも上半身を起こす竜沢。
「また鼻血出ちまったじゃねぇか!」
鼻を拭きながら立ち上がる竜沢に、ブラックマスクは恐怖を感じつつあった。
「い、いったいこいつは…」
今までこれだけの攻撃を受けて立って来た者はいない…ブラックマスクは動揺している。
「何が起こっている?」
「人をバケモン扱いしてるけど、あんたの方がふぅおふぅお吠えてばっかで獣みたいじゃねーか。」
竜沢は正面からブラックマスを指差す。
「あんたと戦う理由は無い…けど、深雪先生を助けるにも、音根達を助けるにも、とにかくまずは暴走しているあんたを止める以外に方法は無いみたいだな。」
竜沢はブラックマスクに向けた人差し指を曲げ、握り拳に変えた。
「普通の人間に戻してやる!」
握った拳をブラックマスクに向けたまま言い放つ竜沢。
「く、ぬ…ぐぉほほほぉー!」
ブラックマスクは自分の中に産まれた『恐怖』という感情を払拭すべく、両拳で胸を何度も強く叩く。
「今ゴリラか?!人間まであと一歩!」
とりあえずボケを入れておく竜沢。
「…りゅ、竜沢、何故お前は…立ち上がれる?」
「…立たなきゃ誰も守れないだろ。」
「り、理解不能…。お前はここに来るまで仲間と呼べる者達を捨てて来た。誰も守れていない。」
「もう結果論?まだ何も終わってないのに?」
「なん…だと?」
「流香、学美、七月、甲、隆正、鏡…俺があいつ等を捨てて来たって?…脳みそはゴリラに及ばないな。」
竜沢がブラックマスクを睨む。
「俺は仲間が大事だからここに居る!仲間が大事だから立つ!仲間を守る為にお前を止める!それが分からないお前に、負ける訳が…無い!」
「り…理解不能ぉぉお―!」
大きく吠えたブラックマスク。そんなブラックマスクの腕を、背後から深雪がつかむ!
「深雪先生?!」
「ぬぅっ?!」
深雪の方を向くブラックマスク。
「戻って!昔のあなたに!」
「ぬ…ぬ、ぐ……は、離……せぇえぇぃ!」
腕を振り上げ、深雪を跳ね除けるブラックマスク。
「きゃあ!」
深雪は吹っ飛び、床に転がった。竜沢の目に…そのシーンが映り込む。
「…ふ…ふっ、くく…」
「…むぅ?!」
深雪を跳ね除けた後、竜沢の様子が変わった事に気付くブラックマスク。
「お…おん、なの人に…て、手を…くっくく…」
竜沢の額の傷が完全に塞がり、頬や鼻にあった傷も治り始めた。
「な、何が…」
今まで以上に驚愕するブラックマスク。
「くっくく…お、お前を、た、たお、す…」
竜沢の目と眉は吊り上がり、口元には笑みが浮かぶ。
マッド竜沢…発動。
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