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第5章の14「だから、もう泣くなっ」
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竜沢に圧倒され、敗北を認めようとしたブラックマスクの心を大きな闇が覆う。
それは今まで、自分の復讐のために利用してきた者達の影…ブラックマスク自身が負い目を感じている者達の幻影だった。
ブラックマスクはその幻影にのまれ、全てを見失う。己の肉体の限界までも見失っていた。傷を負っても急速に回復する竜沢と、傷を負っても痛みや恐れを凌駕するブラックマスクの戦いは、目を覆いたくなる程の修羅場(しゅらじょう)と化していた。
「気が付いたネ!」
「オ、オオ…良かった。」
「ブリオ、フォーター…深雪さん…」
深雪に抱きかかえられていた利住が目を覚ました。
ブリオとフォーターは先に目を覚ましており、自分達も満身創痍ではあったが更にダメージの大きい利住を見守るように囲んでいた。
「あ、あれは…」
利住はトレーニングルームの中央に立つ二つの影を見た。それはまるで、地獄の鬼が対峙しているかの様な光景だった。
「利住くん、大丈夫?」
「あ…あれは鬼…か?」
殴り合う二人の鬼…竜沢とブラックマスクは、お互いにノーガードだった。
「あの二人の間には、とても入れまセーン。」
ブリオが冷や汗を垂らす。
「俺達では止めること…出来ない。」
フォーターが細い目を開き、そう呟いた。
A階段の二階から三階途中。
七月達は複数の男達が倒れているのを目の当たりにし、その戦いの壮絶さを知る。三階へ向かって血の滴った跡が続いている。
「ご、ごめん、先に行くね!」
「私も!」
流香と七月は急いで三階へ向かった。
鏡、竜沢…二人を想うその二人の姿は、隆正と高瀬にとっては複雑であった。
「そら…しゃーないわな。」
「で、ござるな。」
そんな隆正を、担いだ左手でポンポンと叩く甲。
「甲…」
甲が慰めてくれている…隆正はそう思っていた。が…
「が、我慢…」
「大笑いの方がマシや!」
体を震わせて笑いを堪える甲に涙目でツッコミを入れる隆正。
「動いても大丈夫ですか?」
そんな甲と隆正に、つくしが声を掛ける。
「おう、いけるで!つくしちゃんのお陰やなっ。」
笑顔で答える隆正。
「隆正さん、お礼なんて…私が隆正さんにした事を考えたら、こんな…」
「ホンマ凄ぇなぁつくしちゃんは!助かったで!」
つくしの言葉を大きめの声で止める隆正。そんな隆正の優しさに触れ、思わず涙ぐむつくし。
「気にするだけ無駄だ。こいつは昨日の事も忘れる単細胞生物。」
「ラッパムシ?!」
つくしを元気付けようとして言った甲に、再びツッコミを入れる隆正。アメーバではなくラッパムシを選択するところがさすがである。
そしてつくしを筆頭に、塾生ら数人で道後達の傷を診る。
「ここは任せよう。私らは行くよ。」
学美を先頭に、甲と隆正が階段を上がって行く。
竜沢とブラックマスクの戦いを見ている事しか出来ない利住、ブリオ、フォーター。
「い、いや、駄目だ。このまま放っておけば二人ともただじゃ済まない。」
ダメージを押して立ち上がろうとする利住。
「待って…私が行くわ。」
利住を抑える深雪。
「さっきあなたも言ったわよね?あの人を止められるのは、私だけだって。」
「さ、さっきとは状況が違う!あの二人の中に割って入れば無事で済まない!」
「ふ、二人とも餅つきまショー!」
「落ち着き。」
「オー!そうとも言うネ!ヤーッハッハァ!」
深雪と利住が言い合っている周囲でうるさい奴。
「ぐおおおおおーっ!」
その時、ブラックマスクが一際大きく咆哮した!ビクッとする深雪達。
ブラックマスクが右拳を後ろに引き、小刻みに震え出す。力を溜めているのだ!
その時…A階段の扉が開く。
「りゅ、竜沢くん!」
A階段の扉を開けた鏡の目に、二人の姿が映る。
最大に力を籠めたブラックマスクの右拳が、竜沢の顔面にめり込んでいた。
思わず一歩前に出たが、若干よろける鏡。
「鏡くん!」
「流香さん?!」
鏡の背後から流香が駆け寄り、鏡を支える様にしがみついた。
「…し、神ちゃん?!」
流香に続いて入って来た七月は、直ぐに竜沢の姿が目に入った。
眼球がゆっくりと上を向いて白目になっていき、フラリフラリと数歩後方に下がる竜沢。気を失い、倒れる寸前である。
「ふぅ!ふぅ!」
息の荒いブラックマスク。よろける竜沢に追い打ちをかける動きは見えない。ブラックマスクもギリギリ持ち堪えているだけで、いつ倒れてもおかしくない状態だった。
「神ちゃん!」
竜沢の方へ走り出す七月。
「だ、駄目よ北神さん!」
ブラックマスクも普通ではない。近付く者全てに攻撃を仕掛ける可能性が高かった。深雪は七月の身を案じて走り出す。
「み、深雪さ、くっ…!」
深雪も例外じゃない。近付けば危ない。利住は深雪を止める為に駆け出そうとした…が足は一歩も前に出ず、その場に倒れてしまった。
「神ちゃん…神ちゃん…」
七月がブラックマスクの間合いに入ったのか…ブラックマスクの体がピクリと動いた。
「ふ…おおおおおおおおおおーっ!」
「七月ぃ!」
「七月さん!」
「北神さん!」
ブラックマスクが七月の方に向いて大きく吠え、流香、鏡、深雪が七月の名を叫ぶ。
「神ちゃ…神侍ぃー!」
「…な?…なつ…き?!」
泣きながら竜沢の名を呼ぶ七月に反応して意識が戻ったのか、眼球が元の状態に戻る竜沢。
我を見失い暴走したブラックマスクが七月に襲い掛かる!
「国雄(くにお)さん、駄目ぇ!」
深雪の叫びに、一瞬だが鳴尾国雄の意識が反応し、ブラックマスクが止まった。そこに意識を取り戻した竜沢の蹴りが入り、ブラックマスクは吹っ飛んで床に転げた。
「ブラックマスク!俺はまだここに居るぞ!」
「神ちゃん!」
七月の前に立つ竜沢は笑顔ではあるものの、怒りを露わにする吊り上がった眼をしていなかった。マッド状態ではない。
「七月…俺は大丈夫だ!だから、もう泣くなっ!」
「…うんっ!」
いつもの様にニカっと笑う竜沢の顔を見て、更に涙を流す七月だったが、その表情は思いっ切り笑顔だった。
そして、今までの全てをバルコニーから見ている男が居た。
「そうだ竜沢!復讐の鬼となってしまった化け物を、化け物となってねじ伏せてはいかん!愛を以て…人として、あいつを人に戻してくれ!あいつを…救ってくれ!」
祈る様に見守る白仮面。出て行きたい気持ちを抑えていたのだろう。白仮面の拳は力の入れ過ぎから血が滲んでいた。太ももにも、何度も殴った様な跡が付いていた。
「神侍!七月!」
A階段から学美が入って来た。
「神侍ぃ!」
「竜沢!」
隆正、甲も駆け付け、竜沢の名を呼ぶ。
「竜沢くん!」
声を揃える鏡と流香。
「竜沢先輩!」
つくしも叫ぶ。
「ぬ、ぬぅう…ぬおおおおおーっ!」
立ち上ったブラックマスクが拳を握り、竜沢目掛けて突っ走る!
「無駄だブラックマスク、今の俺は無敵だ。なんせ…みんなが居るからなぁ!」
急速な回復力を発動させつつ自我を保ち、自然な笑顔でブラックマスクの方に走り出す竜沢。
「ふうおおおおおおおー!」
「あんたを人間に…戻す!」
互いの拳が交差する。そして…ブラックマスクの顔面に竜沢の拳がヒットし、仮面が破れて宙に飛んだ。
「が…ぐ…」
素顔をさらけ出したブラックマスク…いや、鳴尾国雄はその場にゆっくりとくずおれた。
「はぁ、はぁ………ははっ、本気で心配してくれる人達が居てくれて良かったな。俺も、あんたも…。」
自分達に向かって走り寄って来る七月達を見ながら、竜沢は大きく息を吐き…軽く微笑んだ。
それは今まで、自分の復讐のために利用してきた者達の影…ブラックマスク自身が負い目を感じている者達の幻影だった。
ブラックマスクはその幻影にのまれ、全てを見失う。己の肉体の限界までも見失っていた。傷を負っても急速に回復する竜沢と、傷を負っても痛みや恐れを凌駕するブラックマスクの戦いは、目を覆いたくなる程の修羅場(しゅらじょう)と化していた。
「気が付いたネ!」
「オ、オオ…良かった。」
「ブリオ、フォーター…深雪さん…」
深雪に抱きかかえられていた利住が目を覚ました。
ブリオとフォーターは先に目を覚ましており、自分達も満身創痍ではあったが更にダメージの大きい利住を見守るように囲んでいた。
「あ、あれは…」
利住はトレーニングルームの中央に立つ二つの影を見た。それはまるで、地獄の鬼が対峙しているかの様な光景だった。
「利住くん、大丈夫?」
「あ…あれは鬼…か?」
殴り合う二人の鬼…竜沢とブラックマスクは、お互いにノーガードだった。
「あの二人の間には、とても入れまセーン。」
ブリオが冷や汗を垂らす。
「俺達では止めること…出来ない。」
フォーターが細い目を開き、そう呟いた。
A階段の二階から三階途中。
七月達は複数の男達が倒れているのを目の当たりにし、その戦いの壮絶さを知る。三階へ向かって血の滴った跡が続いている。
「ご、ごめん、先に行くね!」
「私も!」
流香と七月は急いで三階へ向かった。
鏡、竜沢…二人を想うその二人の姿は、隆正と高瀬にとっては複雑であった。
「そら…しゃーないわな。」
「で、ござるな。」
そんな隆正を、担いだ左手でポンポンと叩く甲。
「甲…」
甲が慰めてくれている…隆正はそう思っていた。が…
「が、我慢…」
「大笑いの方がマシや!」
体を震わせて笑いを堪える甲に涙目でツッコミを入れる隆正。
「動いても大丈夫ですか?」
そんな甲と隆正に、つくしが声を掛ける。
「おう、いけるで!つくしちゃんのお陰やなっ。」
笑顔で答える隆正。
「隆正さん、お礼なんて…私が隆正さんにした事を考えたら、こんな…」
「ホンマ凄ぇなぁつくしちゃんは!助かったで!」
つくしの言葉を大きめの声で止める隆正。そんな隆正の優しさに触れ、思わず涙ぐむつくし。
「気にするだけ無駄だ。こいつは昨日の事も忘れる単細胞生物。」
「ラッパムシ?!」
つくしを元気付けようとして言った甲に、再びツッコミを入れる隆正。アメーバではなくラッパムシを選択するところがさすがである。
そしてつくしを筆頭に、塾生ら数人で道後達の傷を診る。
「ここは任せよう。私らは行くよ。」
学美を先頭に、甲と隆正が階段を上がって行く。
竜沢とブラックマスクの戦いを見ている事しか出来ない利住、ブリオ、フォーター。
「い、いや、駄目だ。このまま放っておけば二人ともただじゃ済まない。」
ダメージを押して立ち上がろうとする利住。
「待って…私が行くわ。」
利住を抑える深雪。
「さっきあなたも言ったわよね?あの人を止められるのは、私だけだって。」
「さ、さっきとは状況が違う!あの二人の中に割って入れば無事で済まない!」
「ふ、二人とも餅つきまショー!」
「落ち着き。」
「オー!そうとも言うネ!ヤーッハッハァ!」
深雪と利住が言い合っている周囲でうるさい奴。
「ぐおおおおおーっ!」
その時、ブラックマスクが一際大きく咆哮した!ビクッとする深雪達。
ブラックマスクが右拳を後ろに引き、小刻みに震え出す。力を溜めているのだ!
その時…A階段の扉が開く。
「りゅ、竜沢くん!」
A階段の扉を開けた鏡の目に、二人の姿が映る。
最大に力を籠めたブラックマスクの右拳が、竜沢の顔面にめり込んでいた。
思わず一歩前に出たが、若干よろける鏡。
「鏡くん!」
「流香さん?!」
鏡の背後から流香が駆け寄り、鏡を支える様にしがみついた。
「…し、神ちゃん?!」
流香に続いて入って来た七月は、直ぐに竜沢の姿が目に入った。
眼球がゆっくりと上を向いて白目になっていき、フラリフラリと数歩後方に下がる竜沢。気を失い、倒れる寸前である。
「ふぅ!ふぅ!」
息の荒いブラックマスク。よろける竜沢に追い打ちをかける動きは見えない。ブラックマスクもギリギリ持ち堪えているだけで、いつ倒れてもおかしくない状態だった。
「神ちゃん!」
竜沢の方へ走り出す七月。
「だ、駄目よ北神さん!」
ブラックマスクも普通ではない。近付く者全てに攻撃を仕掛ける可能性が高かった。深雪は七月の身を案じて走り出す。
「み、深雪さ、くっ…!」
深雪も例外じゃない。近付けば危ない。利住は深雪を止める為に駆け出そうとした…が足は一歩も前に出ず、その場に倒れてしまった。
「神ちゃん…神ちゃん…」
七月がブラックマスクの間合いに入ったのか…ブラックマスクの体がピクリと動いた。
「ふ…おおおおおおおおおおーっ!」
「七月ぃ!」
「七月さん!」
「北神さん!」
ブラックマスクが七月の方に向いて大きく吠え、流香、鏡、深雪が七月の名を叫ぶ。
「神ちゃ…神侍ぃー!」
「…な?…なつ…き?!」
泣きながら竜沢の名を呼ぶ七月に反応して意識が戻ったのか、眼球が元の状態に戻る竜沢。
我を見失い暴走したブラックマスクが七月に襲い掛かる!
「国雄(くにお)さん、駄目ぇ!」
深雪の叫びに、一瞬だが鳴尾国雄の意識が反応し、ブラックマスクが止まった。そこに意識を取り戻した竜沢の蹴りが入り、ブラックマスクは吹っ飛んで床に転げた。
「ブラックマスク!俺はまだここに居るぞ!」
「神ちゃん!」
七月の前に立つ竜沢は笑顔ではあるものの、怒りを露わにする吊り上がった眼をしていなかった。マッド状態ではない。
「七月…俺は大丈夫だ!だから、もう泣くなっ!」
「…うんっ!」
いつもの様にニカっと笑う竜沢の顔を見て、更に涙を流す七月だったが、その表情は思いっ切り笑顔だった。
そして、今までの全てをバルコニーから見ている男が居た。
「そうだ竜沢!復讐の鬼となってしまった化け物を、化け物となってねじ伏せてはいかん!愛を以て…人として、あいつを人に戻してくれ!あいつを…救ってくれ!」
祈る様に見守る白仮面。出て行きたい気持ちを抑えていたのだろう。白仮面の拳は力の入れ過ぎから血が滲んでいた。太ももにも、何度も殴った様な跡が付いていた。
「神侍!七月!」
A階段から学美が入って来た。
「神侍ぃ!」
「竜沢!」
隆正、甲も駆け付け、竜沢の名を呼ぶ。
「竜沢くん!」
声を揃える鏡と流香。
「竜沢先輩!」
つくしも叫ぶ。
「ぬ、ぬぅう…ぬおおおおおーっ!」
立ち上ったブラックマスクが拳を握り、竜沢目掛けて突っ走る!
「無駄だブラックマスク、今の俺は無敵だ。なんせ…みんなが居るからなぁ!」
急速な回復力を発動させつつ自我を保ち、自然な笑顔でブラックマスクの方に走り出す竜沢。
「ふうおおおおおおおー!」
「あんたを人間に…戻す!」
互いの拳が交差する。そして…ブラックマスクの顔面に竜沢の拳がヒットし、仮面が破れて宙に飛んだ。
「が…ぐ…」
素顔をさらけ出したブラックマスク…いや、鳴尾国雄はその場にゆっくりとくずおれた。
「はぁ、はぁ………ははっ、本気で心配してくれる人達が居てくれて良かったな。俺も、あんたも…。」
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