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瀬戸井街道
大宝八幡宮
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「すみません先生。宝田さんが亡くなられたそうなので、誠に失礼ですが、これで中座させていただきます。あ、あとこちらを。」
「はぁ…宝田さん?ってどなた?あ、言っちゃった。」
お姉ちゃんに、カリカリベーコンと赤ウインナーが朝ご飯の献立に付いて''いなかった(おいおい)''事を、南さんが会計をしているうちにロビーで確認してたら、鈴木さんが真っ青な顔をして帰ってしまった。
因みに、鈴木さんの宿代をお姉ちゃんが払おうとしたら、3万円分の旅行券を鈴木さんから押し付けられたそうな。
多分、あらかじめ支給される社の出張費なんだろう。
鈴木さんの分はお姉ちゃんの会社で払う事は決めているので(ただし、鈴木さんに送る分の領収書と併せて2枚領収書を貰ってる。お姉ちゃん、悪人!)
「別に脱税にならないからいいのよ。」
本当かね。
「ね。先生。これ、要る?」
「要らない。」
「お姉ちゃん、社長に金券押し付けても拒否するに決まってるよ。」
「よねぇ。金券ショップにでも売ろうかしら。」
「お姉ちゃんが使えば良いじゃん。」
「額が中途半端なのよねぇ。都心のホテルじゃ若干足りないし。地方で2人で泊まるには微妙な額だし。」
「普段はどんなに遅くなっても帰ってくるくせに。」
「私、嫌なのよ。家に帰れる時の外泊って。翌日も仕事だったら気分が切り替わらないじゃない。」
まぁ、それはウチの瑞稀さんもそうだ。
実家の直ぐ側に仕事場のマンションを買って実家から通っているのは、仕事モードとプライベートモードを切り替える為だ。
あれ、そうすると。
私が嫁に入った後どうすんだ?
お義父さんには、今の仕事場に住むって言ってたよね?
………
後日、瑞稀さんに聞いてみたら
「あぁ、須賀原洋行さんって漫画家は、同じマンションの別部屋を仕事場として買っていたなぁ。そうしようかね。」
「また知らない人が出て来たよ?」
「週刊モーニングなんかで4コマ漫画を連載していた人だな。奥さんのよしえサンって人の個性が面白過ぎて、途中から奥さん観察漫画、お子さんが産まれてご家庭漫画に切り替わって行った。週刊青年誌にはほのぼのし過ぎていて画風が合わないから、講談社の色々な雑誌を点々としてたな。」
「してた?」
「よしえサンが脳腫瘍で早くに亡くなられてしまい、その闘病記を漫画にした後、今はどこで何を描かれているか知らない。確かお酒のドキュメント漫画を描いていたんじゃないかなぁ。本人とその周りの人達だけだとキャラ的に地味だから、狂言回しによしえサンを漫画の中だけで生き返らせて。」
「…あまり聞きたい話じゃなかった。」
「事務所じゃなくて、実家に確かコミックあるよ。」
ネタ被りを知る事が怖くて、他人のフィクションを積極的に読む人じゃないからなぁ。
「そうか。1階の別部屋が空いていたら買おうか。」
「別に反対はしないし、そのくらいのお金も、私がお掃除する余裕もあるけど、今ガレージを建てている事を忘れてない?あと、やっぱり1階なんだ。」
「あっちに常時詰めているのもなぁ。」
「何か問題でも?」
ご近所さんは、社長があそこに要る事を歓迎するって言ってるよ?
この爺転がし婆転がしが。
「今なら歩いて5分かからない自販機とローソンが、2~3分も遠くなる。」
待てコラ。
………
閑話休題。
とりあえず旅行券はお姉ちゃんが持ち帰ります。
「ま、お父さん達に、箱根以外の場所に行ってもらいましょう。もう1~2万買い足して娘からのプレゼントって事で。」
「ウチのお父さん。要らないって言いそう。お前が婿候補と一緒に行けとか。」
「よねぇ。どうして私達の周りの男は、適当に小金持ちな連中ばかりなのかしら。」
「贅沢な話よねぇ。」
「あ、鈴木さんに夕べの事を確認するの、忘れた。」
「社長、行きましょう。さっさと。」
多分、その宝田さんが夕べのあの人だと思うけど、確認したくないぞ。
だってそしたら、私達心霊体験をしたって事じゃないの。
しかも怖くもなんともないじゃない。
鈴木さんが泥酔して寝惚けていたから、瑞稀さんのとこに化けて出たって。
どれだけほっこりした霊体験なんだよ。
あと、隣に居る私は迷惑だ。
★ ★ ★
瀬戸井街道を巡る取材な事をすっかり忘れていた。
今日は下妻に行って古河でゴール。
の、予定。
国道125号線を走ってれば1時間で着いちゃう、瑞稀さん曰く
「走った事あるけど、単なる田舎街道でつまらないよ。」
だ、そうです。
…ウチの人は、何故そんな道を走った事あるんだろう。
千葉県民が茨城の平野部の北の端を繋ぐ国道を車で走破してるのよ?
「ん?取材でね。鷲宮から古河行って下妻行って龍ヶ崎に行った事がある。別に鉄道でも行けたんだけど、茨城県内のダイヤが薄くて辞めた。で、モコで行ったんだけど、途中で疲れて石下あたりのビジネスホテルに飛び込んだ。」
「石下って、あのお城で講演したとこよね。…妙に駐車場所とかコンビニとか詳しいと思った。」
て言うか、あんなところにビジネスホテル?
「筑波サーキットに1番近いホテルって言うのが売りみたいだけど、宿泊客見たらブルーカラーの方っぽい人が多かったから、多分そう言う人向けじゃないかな。」
「そんなとこ泊まったんだ。」
「朝ご飯はバイキングだったけど、ベーコンじゃなくてハムステーキだったし、普通のウインナーだから食べませんでした。」
「知らんがな。」
………
「また来て下さいね。伊弉諾様もお待ちしてますよ。」
謎の見送りを仲居頭さんから受けて、この取材が最後になるモコは出発します。
散々文句を言ったし、新しい車買え!と言って来たけど、いざサヨウナラとなるとちょっと悲しい。
なので朝は私が運転します。
一応、お姉ちゃんのレジュメには幾つかの史跡が取り上げてありますが。
ぁぁぁぇぇぇぇと。
朝っぱらから言いにくいなぁ。
社長、説明をば。
「ん?川崎の若宮八幡宮でお馴染み、かなまら祭りの御神体があちこちにある、でいいかな。」
「余計わからない。」
「私、知ってるのよねぇ。」
南さんが余計な事言い出した。
早い話が、子宝祈願の為の、大きなちん◯んが、そこら中にあるのよ。
「子宝ちんこすこう。」
「誰よ。社長にあんな馬鹿土産を持って来た人は!」
ちんすこう自体、似た形してるけど。
このちんすこうはエロ駄洒落付きと言う、沖縄で1番阿保でお下劣なお土産。
「まぁ陰陽石は、その昔は大切な御神体だったし。」
「まぁ、調べたの私だし。」
お姉ちゃんも積極的には行きたくないみたい。
「愛知には間々観音ってお寺もあるよ。」
「社長、だから陰陽石関連はですねぇ。」
「陰陽石ではないなぁ。おっぱいだから。」
「社長、それセクハラ…
「知ってる知ってる。絵馬がおっぱいなのよね。」
しまった。
南さんが1度はっちゃけると、瑞稀さん以上に滅茶苦茶になる人だった。
「お、おっぱい?」
「お母さんにとっては、おっぱいが出る出ないは死活問題でしょ。陰陽石信仰で子宝を授かったあとは、子育てが大切になる。昔はおっぱいが出ないお母さんは、乳母を雇うか離縁されたのよ。」
「はぁ。」
朝から何言ってんだ?この車。
「因みに、ここの手水場はおっぱいから水が出るよ。」
「それもうネタやんけ。」
普通は男性と女性が居れば、下ネタは控えるものだろうけど。
このメンツだと女性の方が強いのと、私達と言うエサがあるし。
ウチの社長は割とノる人なので、もうこんなになっちゃいます。
まったくもう。
★ ★ ★
この辺は何故か社長が詳しいと言う事で。
下妻は社長の案内です。
しかし凄かったなぁ。
筑波山からこっち、本当に何にもない真っ平らな地形が広がっていたよ。
お父さんの言う通りだった。
ここを歩こうと計画していた私達が馬鹿だった。
…って、瑞稀さんは歩くんだよなぁ。
なんとか効率的なお手伝いできないかなぁ。
「この先にブックオフがあるから寄ろう。」
「何故社長は、日本全国のブックオフを知ってるの?」
「行った事があるから。」
簡単に言いやがって。
って言うか、作家なんだから古本より新刊を買うべきでは?
「最近は簡単に増刷がかからないし、新刊書店も大型店舗に行かないと売り場面積なくて欲しいものが見当たらないだろ。」
あ。
お姉ちゃん達がバツの悪そうな顔してる。
基本的に純編集者のお姉ちゃん達はともかく、営業さんは新刊売り場の確保に大変なんだよね。
頼みますよ。
ウチの社長の新刊。
「さぁ、なんでもいいから買ってちょうだい!領収書の為に!」
あ、お姉ちゃん、誤魔化してる。
………
私的には特に欲しいものはなかった。
本に対する執着が少ないのに、作家の秘書や女房が務まるのだろうか?
ただでさえ、色々偏っている作家だと言うのに。
そんな社長はと言うと。
木原浩勝・中山市朗のメディアファクトリー版新耳袋全巻と、ギンティ小林の角川文庫版新耳袋殴り込み全巻を買っていた。
「事務所の書庫に無かったっけ?」
「ああ、本家は角川文庫版で揃えてあるけど、メディアファクトリー版には文庫で割愛された心霊写真がついているのと、ギンティの方は洋泉社版にはなかった裏話が書き足してあるから。」
「…まぁ、倉庫が完成すれば、書庫も作れるからいいけど。」
相変わらず妙なこだわりを持つ人ですこと。
土地とか女とかに財産を注ぎ込まないからいいけど。
………
「むう。あんまり金額稼げなかったぁ。」
お姉ちゃんが数万円しか行かなかった領収書を見てブー垂れてるけど、社長が必死になって買ってたんだぞ。
「Amazonプライムの、もうすぐ見放題が終わる番組に内村さまぁ~ずが入っているからDVDで揃え直そうと思ったんだけどね。さっき確認したら終了リストから消えてた。まぁ、のんびりと揃えていくかな。」
なんかぶつぶつ言っているけど。
とりあえず買ったものをモコに入れて、私達は裏の公園に行く。
ただの公園かと思いきや、ここは城址だと言う。
「多賀谷氏って言って、元は室町初期の下野国守護、小山氏の末裔の本城だったんだ。」
瑞稀さんの案内で公園内を散策すると、僅かながらも(空)堀や土塁の跡が見受けられる。
私とお姉ちゃんは、社長にすっかり躾られているので、こういった中世城址の遺構に興味津々だ。
(南さんは、さっきブックオフで買った講談社なかよし版キャンディキャンディのコミック2巻・1980円也を見つけて、缶コーヒーを買ってベンチで目をハートマークにしてる)
「中世。この辺は湿地帯だったから、微高地は貴重な前線基地になったんだよ。その頃の常陸南部や下総北部はずっと戦乱が絶えなかったからね。鎌倉公方や古河公方の跡目争いでね。」
「ふむふむ。」
あ、大宝八幡宮に着かなかった。
次回を承前にしよう。
「はぁ…宝田さん?ってどなた?あ、言っちゃった。」
お姉ちゃんに、カリカリベーコンと赤ウインナーが朝ご飯の献立に付いて''いなかった(おいおい)''事を、南さんが会計をしているうちにロビーで確認してたら、鈴木さんが真っ青な顔をして帰ってしまった。
因みに、鈴木さんの宿代をお姉ちゃんが払おうとしたら、3万円分の旅行券を鈴木さんから押し付けられたそうな。
多分、あらかじめ支給される社の出張費なんだろう。
鈴木さんの分はお姉ちゃんの会社で払う事は決めているので(ただし、鈴木さんに送る分の領収書と併せて2枚領収書を貰ってる。お姉ちゃん、悪人!)
「別に脱税にならないからいいのよ。」
本当かね。
「ね。先生。これ、要る?」
「要らない。」
「お姉ちゃん、社長に金券押し付けても拒否するに決まってるよ。」
「よねぇ。金券ショップにでも売ろうかしら。」
「お姉ちゃんが使えば良いじゃん。」
「額が中途半端なのよねぇ。都心のホテルじゃ若干足りないし。地方で2人で泊まるには微妙な額だし。」
「普段はどんなに遅くなっても帰ってくるくせに。」
「私、嫌なのよ。家に帰れる時の外泊って。翌日も仕事だったら気分が切り替わらないじゃない。」
まぁ、それはウチの瑞稀さんもそうだ。
実家の直ぐ側に仕事場のマンションを買って実家から通っているのは、仕事モードとプライベートモードを切り替える為だ。
あれ、そうすると。
私が嫁に入った後どうすんだ?
お義父さんには、今の仕事場に住むって言ってたよね?
………
後日、瑞稀さんに聞いてみたら
「あぁ、須賀原洋行さんって漫画家は、同じマンションの別部屋を仕事場として買っていたなぁ。そうしようかね。」
「また知らない人が出て来たよ?」
「週刊モーニングなんかで4コマ漫画を連載していた人だな。奥さんのよしえサンって人の個性が面白過ぎて、途中から奥さん観察漫画、お子さんが産まれてご家庭漫画に切り替わって行った。週刊青年誌にはほのぼのし過ぎていて画風が合わないから、講談社の色々な雑誌を点々としてたな。」
「してた?」
「よしえサンが脳腫瘍で早くに亡くなられてしまい、その闘病記を漫画にした後、今はどこで何を描かれているか知らない。確かお酒のドキュメント漫画を描いていたんじゃないかなぁ。本人とその周りの人達だけだとキャラ的に地味だから、狂言回しによしえサンを漫画の中だけで生き返らせて。」
「…あまり聞きたい話じゃなかった。」
「事務所じゃなくて、実家に確かコミックあるよ。」
ネタ被りを知る事が怖くて、他人のフィクションを積極的に読む人じゃないからなぁ。
「そうか。1階の別部屋が空いていたら買おうか。」
「別に反対はしないし、そのくらいのお金も、私がお掃除する余裕もあるけど、今ガレージを建てている事を忘れてない?あと、やっぱり1階なんだ。」
「あっちに常時詰めているのもなぁ。」
「何か問題でも?」
ご近所さんは、社長があそこに要る事を歓迎するって言ってるよ?
この爺転がし婆転がしが。
「今なら歩いて5分かからない自販機とローソンが、2~3分も遠くなる。」
待てコラ。
………
閑話休題。
とりあえず旅行券はお姉ちゃんが持ち帰ります。
「ま、お父さん達に、箱根以外の場所に行ってもらいましょう。もう1~2万買い足して娘からのプレゼントって事で。」
「ウチのお父さん。要らないって言いそう。お前が婿候補と一緒に行けとか。」
「よねぇ。どうして私達の周りの男は、適当に小金持ちな連中ばかりなのかしら。」
「贅沢な話よねぇ。」
「あ、鈴木さんに夕べの事を確認するの、忘れた。」
「社長、行きましょう。さっさと。」
多分、その宝田さんが夕べのあの人だと思うけど、確認したくないぞ。
だってそしたら、私達心霊体験をしたって事じゃないの。
しかも怖くもなんともないじゃない。
鈴木さんが泥酔して寝惚けていたから、瑞稀さんのとこに化けて出たって。
どれだけほっこりした霊体験なんだよ。
あと、隣に居る私は迷惑だ。
★ ★ ★
瀬戸井街道を巡る取材な事をすっかり忘れていた。
今日は下妻に行って古河でゴール。
の、予定。
国道125号線を走ってれば1時間で着いちゃう、瑞稀さん曰く
「走った事あるけど、単なる田舎街道でつまらないよ。」
だ、そうです。
…ウチの人は、何故そんな道を走った事あるんだろう。
千葉県民が茨城の平野部の北の端を繋ぐ国道を車で走破してるのよ?
「ん?取材でね。鷲宮から古河行って下妻行って龍ヶ崎に行った事がある。別に鉄道でも行けたんだけど、茨城県内のダイヤが薄くて辞めた。で、モコで行ったんだけど、途中で疲れて石下あたりのビジネスホテルに飛び込んだ。」
「石下って、あのお城で講演したとこよね。…妙に駐車場所とかコンビニとか詳しいと思った。」
て言うか、あんなところにビジネスホテル?
「筑波サーキットに1番近いホテルって言うのが売りみたいだけど、宿泊客見たらブルーカラーの方っぽい人が多かったから、多分そう言う人向けじゃないかな。」
「そんなとこ泊まったんだ。」
「朝ご飯はバイキングだったけど、ベーコンじゃなくてハムステーキだったし、普通のウインナーだから食べませんでした。」
「知らんがな。」
………
「また来て下さいね。伊弉諾様もお待ちしてますよ。」
謎の見送りを仲居頭さんから受けて、この取材が最後になるモコは出発します。
散々文句を言ったし、新しい車買え!と言って来たけど、いざサヨウナラとなるとちょっと悲しい。
なので朝は私が運転します。
一応、お姉ちゃんのレジュメには幾つかの史跡が取り上げてありますが。
ぁぁぁぇぇぇぇと。
朝っぱらから言いにくいなぁ。
社長、説明をば。
「ん?川崎の若宮八幡宮でお馴染み、かなまら祭りの御神体があちこちにある、でいいかな。」
「余計わからない。」
「私、知ってるのよねぇ。」
南さんが余計な事言い出した。
早い話が、子宝祈願の為の、大きなちん◯んが、そこら中にあるのよ。
「子宝ちんこすこう。」
「誰よ。社長にあんな馬鹿土産を持って来た人は!」
ちんすこう自体、似た形してるけど。
このちんすこうはエロ駄洒落付きと言う、沖縄で1番阿保でお下劣なお土産。
「まぁ陰陽石は、その昔は大切な御神体だったし。」
「まぁ、調べたの私だし。」
お姉ちゃんも積極的には行きたくないみたい。
「愛知には間々観音ってお寺もあるよ。」
「社長、だから陰陽石関連はですねぇ。」
「陰陽石ではないなぁ。おっぱいだから。」
「社長、それセクハラ…
「知ってる知ってる。絵馬がおっぱいなのよね。」
しまった。
南さんが1度はっちゃけると、瑞稀さん以上に滅茶苦茶になる人だった。
「お、おっぱい?」
「お母さんにとっては、おっぱいが出る出ないは死活問題でしょ。陰陽石信仰で子宝を授かったあとは、子育てが大切になる。昔はおっぱいが出ないお母さんは、乳母を雇うか離縁されたのよ。」
「はぁ。」
朝から何言ってんだ?この車。
「因みに、ここの手水場はおっぱいから水が出るよ。」
「それもうネタやんけ。」
普通は男性と女性が居れば、下ネタは控えるものだろうけど。
このメンツだと女性の方が強いのと、私達と言うエサがあるし。
ウチの社長は割とノる人なので、もうこんなになっちゃいます。
まったくもう。
★ ★ ★
この辺は何故か社長が詳しいと言う事で。
下妻は社長の案内です。
しかし凄かったなぁ。
筑波山からこっち、本当に何にもない真っ平らな地形が広がっていたよ。
お父さんの言う通りだった。
ここを歩こうと計画していた私達が馬鹿だった。
…って、瑞稀さんは歩くんだよなぁ。
なんとか効率的なお手伝いできないかなぁ。
「この先にブックオフがあるから寄ろう。」
「何故社長は、日本全国のブックオフを知ってるの?」
「行った事があるから。」
簡単に言いやがって。
って言うか、作家なんだから古本より新刊を買うべきでは?
「最近は簡単に増刷がかからないし、新刊書店も大型店舗に行かないと売り場面積なくて欲しいものが見当たらないだろ。」
あ。
お姉ちゃん達がバツの悪そうな顔してる。
基本的に純編集者のお姉ちゃん達はともかく、営業さんは新刊売り場の確保に大変なんだよね。
頼みますよ。
ウチの社長の新刊。
「さぁ、なんでもいいから買ってちょうだい!領収書の為に!」
あ、お姉ちゃん、誤魔化してる。
………
私的には特に欲しいものはなかった。
本に対する執着が少ないのに、作家の秘書や女房が務まるのだろうか?
ただでさえ、色々偏っている作家だと言うのに。
そんな社長はと言うと。
木原浩勝・中山市朗のメディアファクトリー版新耳袋全巻と、ギンティ小林の角川文庫版新耳袋殴り込み全巻を買っていた。
「事務所の書庫に無かったっけ?」
「ああ、本家は角川文庫版で揃えてあるけど、メディアファクトリー版には文庫で割愛された心霊写真がついているのと、ギンティの方は洋泉社版にはなかった裏話が書き足してあるから。」
「…まぁ、倉庫が完成すれば、書庫も作れるからいいけど。」
相変わらず妙なこだわりを持つ人ですこと。
土地とか女とかに財産を注ぎ込まないからいいけど。
………
「むう。あんまり金額稼げなかったぁ。」
お姉ちゃんが数万円しか行かなかった領収書を見てブー垂れてるけど、社長が必死になって買ってたんだぞ。
「Amazonプライムの、もうすぐ見放題が終わる番組に内村さまぁ~ずが入っているからDVDで揃え直そうと思ったんだけどね。さっき確認したら終了リストから消えてた。まぁ、のんびりと揃えていくかな。」
なんかぶつぶつ言っているけど。
とりあえず買ったものをモコに入れて、私達は裏の公園に行く。
ただの公園かと思いきや、ここは城址だと言う。
「多賀谷氏って言って、元は室町初期の下野国守護、小山氏の末裔の本城だったんだ。」
瑞稀さんの案内で公園内を散策すると、僅かながらも(空)堀や土塁の跡が見受けられる。
私とお姉ちゃんは、社長にすっかり躾られているので、こういった中世城址の遺構に興味津々だ。
(南さんは、さっきブックオフで買った講談社なかよし版キャンディキャンディのコミック2巻・1980円也を見つけて、缶コーヒーを買ってベンチで目をハートマークにしてる)
「中世。この辺は湿地帯だったから、微高地は貴重な前線基地になったんだよ。その頃の常陸南部や下総北部はずっと戦乱が絶えなかったからね。鎌倉公方や古河公方の跡目争いでね。」
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