138 / 178
久留里街道
久留里城
しおりを挟む
バーベキューですよ、BBQ。
具材は基本的に宿泊先の「シアトルハウス」さんが(オプションで)用意してくれた、全部地のもの。
地産地消!
お値段に見合った最高級食材が、ずらりと並んでいる。
勿論主役は、お肉!
サシで真っ白に霜が降りてる分厚くステーキ牛!(かずさ和牛ってブランドらしい)
脂身で噛まずに飲めちゃう、というか脂身自体が美味しい豚さん!(芋豚は私も聞いたことある)
千葉地産地鶏のハーブ鶏(違いがわからん。あ、たまに食べる地鶏より柔らかい)。
更にはマトンでジンギスカンも出来るし、野菜は根菜とキノコ類が旬!
人参甘めぇ。
椎茸厚いぃ。
あ、ウチの馬鹿姉達は(特にお姉ちゃんは)鉄板が片付くまではお酒は控えめ。
「だって理沙ちゃん。こんな美味しいのに酔っ払って記憶やら味覚やらを無くしたくないもん。」
30(くらい)になってないもんもないもん。
それでも、知らぬ間に社長が用意していた木更津地ビールである「ソングバードビール」って言うビールには目の色を変えていた。
「ぷはぁぁぁぁ!」
て声を上げてる。
泡の髭を付けながら。
お酒大好きだけど極度に酔いやすいお姉ちゃんは、コップの底に少しだけ注いで、お肉と一緒に喉を湿らす事で今は我慢。
小さな工房だけに、ビール自体は大量生産が出来ないけど、南さん分と葛城家分は確保してくれているみたいで、家で飲めばいいって割り切ったみたい。
で、私は烏龍茶とか無糖炭酸水をお供に味わっているわけだけど、ウチの社長野郎はというと………
ベティナイフ(何処から持ってきた?)を持ち出して、編集者チームを拾いに行く前にスーパーマーケットで買い込んで来た、お安い食材の調理に余念がない。
ただでさえ、私を含めた女性陣が喰ってるだけで、肉一つ焼こうとしないのに。
適宜、塩胡椒を振って裏返して。
焼き上がった肉や野菜は、別に(社長が)保温用プレートに取り分けて。
炊いたご飯で、小さな焼きおにぎりを作ってる。
その傍ら、赤いウインナーをタコさんに細工(8本足に切り分けてるよぉ)しながら、カリカリベーコンを鉄板の端っこで作ってやがる。
どれだけカリカリベーコンが食べられ無くて、悔しかったんだろう。
カリカリベーコンくらい私が作ってあげるのに。(…作れるかなぁ)
更にシジミのお吸い物を、並行して作ってるよ。
今さっきスーパーで買ったものだよ?
なんでもう、砂抜き終わってるの?
「ん?貝が重ならない様に並べて、少し熱めのぬるま湯?って日本語は無いな。全盛期のダチョウ倶楽部の熱湯風呂くらいの温度に漬けておけば、故上島竜兵さんみたいにピューピュー吐いてくれるよ。学校で習わなかったかい?」
「習いません。」
「或いは母親から。」
「社長のお義母さんと、世間一般の主婦を一緒にしないで下さい。ウチのお母さんが可哀想です。」
あと、未来の私も。
「あとね、熱々おでんって、あれ実はカラクリがあるんだよ。」
「カラクリ?」
私達用に、ボロネーゼだかボロニアだか言う、お高いソーセージを焼きながら、何か言おうとしてるな。
って言うか、なんで多分、この4人の中で1番上席(編集者チームが接待しなきゃいけない関係性だよね)の社長がBBQ奉行やってんだろ。
私ら女どもは、何もしやがらない。
「あれさ。お汁はガンガンに熱くしてるけど、具は冷凍なんだ。あとは寺門ジモンがちょうどいい具合に煮たったら蓋を開けて、リーダーが竜ちゃんの口に茹で卵を入れて、竜ちゃんがリーダーの顔に吐き出してた。だから鍋の見た目は沸騰してるけど、おでん種は少し温め。」
「………それは、バラしていいんですか?」
「良いんじゃないかな。もう失われたネタだし、今は肥後リーダーが2人用のネタを盛んに作っているし。」
あぁ。
それ言われたら、何も言えないよぅ。
「そこらへんがわからない番組ADが、本物の熱々おでんを用意する様になっちゃったから、ジモンちゃんがチーム熱湯って専門チームを作ったんだ。熱湯風呂のマニュアルをきっちり作ってね。」
「あぁ、まぁ。命に関わりますもんね。でなきゃ、あのオッパッピーみたいに熱湯風呂なのに踊り出しちゃうし。」
「ただ、最後は竜ちゃんが熱いの嫌がって、温度を42度に設定するようになっちゃった。」
「社長、それ温めのお風呂…。」
「内さまのどこかで、出川哲朗がバラしてたから、多分リアルガチなんだろうね。」
「あぁね。」
「あとね。」
「まだあんの?」
「ヌルヌル坂の上に食材があって、坂の下にいるダチョウと出川が、坂を登って取った食材で鍋を作るってゲームがあった。」
「なんかいかにもな…。」
「審判は有吉弘行。」
「あははは。」
「で、確か出川が生きたタコをゲットして、鍋に入れたらジモンちゃんが激怒したことがある。」
「なんで?」
「お湯に浸ける前に、塩でぬめりを取らなかったから。」
「はあ?」
「リーダーは食べ物で遊んでいたから怒っちゃったって思ったそうだけどね。」
相変わらずというか、ジモンちゃんだけ異次元ですねってお話しでした。
締めのデザートがこれまたびっくり。
スーパーカップ(ラーメンじゃない方)のバニラなんて、日本全国何処でも売ってるドが付く定番品。
これをキンキンに冷やしたガラスの器に移して(交通事故駄洒落)、牛乳を掛け回しただけ。
お好みでコンデンスミルクを追加で。
しばらく置いとくとあなた、牛乳とアイスがシャーベット状になって、新食感よ。
って言うか、なんでこんな裏技知ってんの?
更に更に、スーパーカップのヨーグルト乗せ。
甘さと酸っぱさが舌に気持ちいいです。
社長。
8個買ったスーパーカップがたちまち売り切れました。
「ヤベェ。スーパーカップが新たな地平に飛び立ったわ。」
「ジューサーミキサーやフルーツを加えると、お手軽スムージーになるよ。」
「理沙ちゃん。」
「社長だったらあげないですよ。」
値上げして1個160円のアイスで、買収どころか嫁に来そうだそ。
この編集長。
★ ★ ★
翌朝。
珍しく、南さんもお姉ちゃんも早くから起きて来た。
「いやね。ほら、2日て20キロ歩いて、昨夜良い様にお酒呑んだでしょ。なんか久しぶりにぐっすり寝れたのよ。」
「寝れたのよは良いけど、社長がいるんだから、もう少しですね。」
朝は駄目なお姉ちゃん。
さすがに浴衣から片乳出してた醜態はないけど、ジーンズにパーカー1枚、しかも中途半端にジッパーを下ろしているので、(私にはあまりない)谷間が丸出しになっている。
この野郎。
「仕方ないでしょ、今お風呂入って来たとこだもん。服着てるだけ有り難く思え!」
「ウチの社長はアレでも男だぞ?」
「それなのよ。なんであの人、あんなに料理上手いの?時々事務所でご馳走してもらっていたけど、夕べなんか小麦粉からマカロニを作ってグラタンにしてたわよ?」
「昨日、お姉ちゃん達を迎えに行く前に寄ったスーパーで、小麦粉がキロ100円の特売セールやってたからね。お一人様2袋限定だったから、4袋買ってたもん。さっきカレーを作るって言ってたから、多分ナンでも焼いてんじゃないかな。今頃。」
「………まったく……。」
で、本当に奴は、フライパンでナンを焼いてやがった。
鼻歌混じりで。
………
さて、この取材旅行も最後。
久留里城です。
トンネルを潜った先に駐車場。
そこから先は、右にぐるりと曲がる尾根に向かってほぼ直坂に高さ90メートルを登って行きます。
いや、でも。
確かにこれ、ある程度元気じゃないときついわ。
社長がみんなにプレゼントしてくれたスニーカーがグリップをしっかりと効かせてくれてるのと、杖が置いてあるから助かる。
「傾斜角20度くらいらしいよ。」
なのにウチの社長は、息一つ切らさず、みんなの後ろから着いてくる。
大多喜城もそうだったけど、天守閣って行くの大変だぁ。
そう言えば、あの時は私達だけ天守閣に登って(しかも長期休館中)、あの野郎だけ麓の駐車場でニッキを買ってたな。
あのニッキで、生八ツ橋の皮を作っていた事を私は知っている。
お義父さんとお義母さんと4人で、美味しくいただきました。
…いつもの「お~い、お茶」で。
「まぁ天守閣なんか、普段はただの倉庫だから。確実に天守閣で寝泊まりしていたのは、織田信長だけって話もある。」
「ひぃひぃ。さすがはノッブ。」
「でも、何故、そんな事がわかるんですか?」
うわぁ、お姉ちゃん野郎。
息がまったくきれてない。
「信長公記や、フロイスの日本記には書いてある。実際、安土城をデータ再現してみたら、信長の寝室と思しき部屋の場所も解明したよ。まぁ、普通は毎日登城するのに、馬ですら登れない坂を往復しないでしょ。麓に御殿を作るのが当たり前だよ。」
「あら?安土城って、大手道の両端に勝家や秀吉の屋敷があったんですよね。確か。」
うぅ。
南さんも、この急坂を平気の平左で登ってくよ。
なんなんだよ。私。
「安土城は特殊でね。御殿が天守閣と並んで安土山の天辺にあった。しかも、見つかった図面がある有名な建物にそっくりだったんだ。」
「聞きましょう。」
「考えようよ。」
「聞きましょう。」
「はいはい。」
あれ?
南さん結構、余裕ない?
「清涼殿。」
「って、平安京の?」
「そ。鎌倉時代に焼失して、今の清涼殿は幕末に再建されたものだけど、形式は残っていたんで信長が再現してんだよ。」
「ほう。」
「南さん、なんか気がつかないかい?」
「はて、清涼殿って事は、天皇をお迎えする建物ですよね。確かに信長は皇室を大切にしていた武将ですし、安土城にお迎えするなら天守閣の側にあってもおかしくないですが….。」
「まぁ、それも正しい。たださ。」
「ただ?」
「安土山の天辺まで、天皇が登って来なきゃならないわけだ。公家が馬で登れる傾斜じゃないし、籠を使うにも中にいる陛下は大変な事になる。どうやって御招待したのかなぁって。」
「あっ!」
安土桃山時代の天皇陛下じゃなくて、令和時代の理沙ちゃんがヘコタレそうなんですけど。
具材は基本的に宿泊先の「シアトルハウス」さんが(オプションで)用意してくれた、全部地のもの。
地産地消!
お値段に見合った最高級食材が、ずらりと並んでいる。
勿論主役は、お肉!
サシで真っ白に霜が降りてる分厚くステーキ牛!(かずさ和牛ってブランドらしい)
脂身で噛まずに飲めちゃう、というか脂身自体が美味しい豚さん!(芋豚は私も聞いたことある)
千葉地産地鶏のハーブ鶏(違いがわからん。あ、たまに食べる地鶏より柔らかい)。
更にはマトンでジンギスカンも出来るし、野菜は根菜とキノコ類が旬!
人参甘めぇ。
椎茸厚いぃ。
あ、ウチの馬鹿姉達は(特にお姉ちゃんは)鉄板が片付くまではお酒は控えめ。
「だって理沙ちゃん。こんな美味しいのに酔っ払って記憶やら味覚やらを無くしたくないもん。」
30(くらい)になってないもんもないもん。
それでも、知らぬ間に社長が用意していた木更津地ビールである「ソングバードビール」って言うビールには目の色を変えていた。
「ぷはぁぁぁぁ!」
て声を上げてる。
泡の髭を付けながら。
お酒大好きだけど極度に酔いやすいお姉ちゃんは、コップの底に少しだけ注いで、お肉と一緒に喉を湿らす事で今は我慢。
小さな工房だけに、ビール自体は大量生産が出来ないけど、南さん分と葛城家分は確保してくれているみたいで、家で飲めばいいって割り切ったみたい。
で、私は烏龍茶とか無糖炭酸水をお供に味わっているわけだけど、ウチの社長野郎はというと………
ベティナイフ(何処から持ってきた?)を持ち出して、編集者チームを拾いに行く前にスーパーマーケットで買い込んで来た、お安い食材の調理に余念がない。
ただでさえ、私を含めた女性陣が喰ってるだけで、肉一つ焼こうとしないのに。
適宜、塩胡椒を振って裏返して。
焼き上がった肉や野菜は、別に(社長が)保温用プレートに取り分けて。
炊いたご飯で、小さな焼きおにぎりを作ってる。
その傍ら、赤いウインナーをタコさんに細工(8本足に切り分けてるよぉ)しながら、カリカリベーコンを鉄板の端っこで作ってやがる。
どれだけカリカリベーコンが食べられ無くて、悔しかったんだろう。
カリカリベーコンくらい私が作ってあげるのに。(…作れるかなぁ)
更にシジミのお吸い物を、並行して作ってるよ。
今さっきスーパーで買ったものだよ?
なんでもう、砂抜き終わってるの?
「ん?貝が重ならない様に並べて、少し熱めのぬるま湯?って日本語は無いな。全盛期のダチョウ倶楽部の熱湯風呂くらいの温度に漬けておけば、故上島竜兵さんみたいにピューピュー吐いてくれるよ。学校で習わなかったかい?」
「習いません。」
「或いは母親から。」
「社長のお義母さんと、世間一般の主婦を一緒にしないで下さい。ウチのお母さんが可哀想です。」
あと、未来の私も。
「あとね、熱々おでんって、あれ実はカラクリがあるんだよ。」
「カラクリ?」
私達用に、ボロネーゼだかボロニアだか言う、お高いソーセージを焼きながら、何か言おうとしてるな。
って言うか、なんで多分、この4人の中で1番上席(編集者チームが接待しなきゃいけない関係性だよね)の社長がBBQ奉行やってんだろ。
私ら女どもは、何もしやがらない。
「あれさ。お汁はガンガンに熱くしてるけど、具は冷凍なんだ。あとは寺門ジモンがちょうどいい具合に煮たったら蓋を開けて、リーダーが竜ちゃんの口に茹で卵を入れて、竜ちゃんがリーダーの顔に吐き出してた。だから鍋の見た目は沸騰してるけど、おでん種は少し温め。」
「………それは、バラしていいんですか?」
「良いんじゃないかな。もう失われたネタだし、今は肥後リーダーが2人用のネタを盛んに作っているし。」
あぁ。
それ言われたら、何も言えないよぅ。
「そこらへんがわからない番組ADが、本物の熱々おでんを用意する様になっちゃったから、ジモンちゃんがチーム熱湯って専門チームを作ったんだ。熱湯風呂のマニュアルをきっちり作ってね。」
「あぁ、まぁ。命に関わりますもんね。でなきゃ、あのオッパッピーみたいに熱湯風呂なのに踊り出しちゃうし。」
「ただ、最後は竜ちゃんが熱いの嫌がって、温度を42度に設定するようになっちゃった。」
「社長、それ温めのお風呂…。」
「内さまのどこかで、出川哲朗がバラしてたから、多分リアルガチなんだろうね。」
「あぁね。」
「あとね。」
「まだあんの?」
「ヌルヌル坂の上に食材があって、坂の下にいるダチョウと出川が、坂を登って取った食材で鍋を作るってゲームがあった。」
「なんかいかにもな…。」
「審判は有吉弘行。」
「あははは。」
「で、確か出川が生きたタコをゲットして、鍋に入れたらジモンちゃんが激怒したことがある。」
「なんで?」
「お湯に浸ける前に、塩でぬめりを取らなかったから。」
「はあ?」
「リーダーは食べ物で遊んでいたから怒っちゃったって思ったそうだけどね。」
相変わらずというか、ジモンちゃんだけ異次元ですねってお話しでした。
締めのデザートがこれまたびっくり。
スーパーカップ(ラーメンじゃない方)のバニラなんて、日本全国何処でも売ってるドが付く定番品。
これをキンキンに冷やしたガラスの器に移して(交通事故駄洒落)、牛乳を掛け回しただけ。
お好みでコンデンスミルクを追加で。
しばらく置いとくとあなた、牛乳とアイスがシャーベット状になって、新食感よ。
って言うか、なんでこんな裏技知ってんの?
更に更に、スーパーカップのヨーグルト乗せ。
甘さと酸っぱさが舌に気持ちいいです。
社長。
8個買ったスーパーカップがたちまち売り切れました。
「ヤベェ。スーパーカップが新たな地平に飛び立ったわ。」
「ジューサーミキサーやフルーツを加えると、お手軽スムージーになるよ。」
「理沙ちゃん。」
「社長だったらあげないですよ。」
値上げして1個160円のアイスで、買収どころか嫁に来そうだそ。
この編集長。
★ ★ ★
翌朝。
珍しく、南さんもお姉ちゃんも早くから起きて来た。
「いやね。ほら、2日て20キロ歩いて、昨夜良い様にお酒呑んだでしょ。なんか久しぶりにぐっすり寝れたのよ。」
「寝れたのよは良いけど、社長がいるんだから、もう少しですね。」
朝は駄目なお姉ちゃん。
さすがに浴衣から片乳出してた醜態はないけど、ジーンズにパーカー1枚、しかも中途半端にジッパーを下ろしているので、(私にはあまりない)谷間が丸出しになっている。
この野郎。
「仕方ないでしょ、今お風呂入って来たとこだもん。服着てるだけ有り難く思え!」
「ウチの社長はアレでも男だぞ?」
「それなのよ。なんであの人、あんなに料理上手いの?時々事務所でご馳走してもらっていたけど、夕べなんか小麦粉からマカロニを作ってグラタンにしてたわよ?」
「昨日、お姉ちゃん達を迎えに行く前に寄ったスーパーで、小麦粉がキロ100円の特売セールやってたからね。お一人様2袋限定だったから、4袋買ってたもん。さっきカレーを作るって言ってたから、多分ナンでも焼いてんじゃないかな。今頃。」
「………まったく……。」
で、本当に奴は、フライパンでナンを焼いてやがった。
鼻歌混じりで。
………
さて、この取材旅行も最後。
久留里城です。
トンネルを潜った先に駐車場。
そこから先は、右にぐるりと曲がる尾根に向かってほぼ直坂に高さ90メートルを登って行きます。
いや、でも。
確かにこれ、ある程度元気じゃないときついわ。
社長がみんなにプレゼントしてくれたスニーカーがグリップをしっかりと効かせてくれてるのと、杖が置いてあるから助かる。
「傾斜角20度くらいらしいよ。」
なのにウチの社長は、息一つ切らさず、みんなの後ろから着いてくる。
大多喜城もそうだったけど、天守閣って行くの大変だぁ。
そう言えば、あの時は私達だけ天守閣に登って(しかも長期休館中)、あの野郎だけ麓の駐車場でニッキを買ってたな。
あのニッキで、生八ツ橋の皮を作っていた事を私は知っている。
お義父さんとお義母さんと4人で、美味しくいただきました。
…いつもの「お~い、お茶」で。
「まぁ天守閣なんか、普段はただの倉庫だから。確実に天守閣で寝泊まりしていたのは、織田信長だけって話もある。」
「ひぃひぃ。さすがはノッブ。」
「でも、何故、そんな事がわかるんですか?」
うわぁ、お姉ちゃん野郎。
息がまったくきれてない。
「信長公記や、フロイスの日本記には書いてある。実際、安土城をデータ再現してみたら、信長の寝室と思しき部屋の場所も解明したよ。まぁ、普通は毎日登城するのに、馬ですら登れない坂を往復しないでしょ。麓に御殿を作るのが当たり前だよ。」
「あら?安土城って、大手道の両端に勝家や秀吉の屋敷があったんですよね。確か。」
うぅ。
南さんも、この急坂を平気の平左で登ってくよ。
なんなんだよ。私。
「安土城は特殊でね。御殿が天守閣と並んで安土山の天辺にあった。しかも、見つかった図面がある有名な建物にそっくりだったんだ。」
「聞きましょう。」
「考えようよ。」
「聞きましょう。」
「はいはい。」
あれ?
南さん結構、余裕ない?
「清涼殿。」
「って、平安京の?」
「そ。鎌倉時代に焼失して、今の清涼殿は幕末に再建されたものだけど、形式は残っていたんで信長が再現してんだよ。」
「ほう。」
「南さん、なんか気がつかないかい?」
「はて、清涼殿って事は、天皇をお迎えする建物ですよね。確かに信長は皇室を大切にしていた武将ですし、安土城にお迎えするなら天守閣の側にあってもおかしくないですが….。」
「まぁ、それも正しい。たださ。」
「ただ?」
「安土山の天辺まで、天皇が登って来なきゃならないわけだ。公家が馬で登れる傾斜じゃないし、籠を使うにも中にいる陛下は大変な事になる。どうやって御招待したのかなぁって。」
「あっ!」
安土桃山時代の天皇陛下じゃなくて、令和時代の理沙ちゃんがヘコタレそうなんですけど。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ご飯を食べて異世界に行こう
compo
ライト文芸
会社が潰れた…
僅かばかりの退職金を貰ったけど、独身寮を追い出される事になった僕は、貯金と失業手当を片手に新たな旅に出る事にしよう。
僕には生まれつき、物理的にあり得ない異能を身につけている。
異能を持って、旅する先は…。
「異世界」じゃないよ。
日本だよ。日本には変わりないよ。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
相馬さんは今日も竹刀を振る
compo
ライト文芸
大学に進学したばかりの僕の所に、祖父から手紙が来た。
1人の少女の世話をして欲しい。
彼女を迎える為に、とある建物をあげる。
何がなんだかわからないまま、両親に連れられて行った先で、僕の静かな生活がどこかに行ってしまうのでした。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる