墓守の仕事

ゆきつき

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1章 勇者編

2話 突然の出来事

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 あの騒動のせいで、街に入る為の行列はなくなり、すんなり街に入ることが出来た。ラッキーだった。
 しかも街に迫る脅威を退けてくれたとかなんとかで感謝され、若干の報酬が出た。びっくりだった。
 あと倒したイノシシも、持って行って良いとの事だった。3メートル弱もある巨大イノシシだ。率直に言って邪魔。換金?が出来るとかなんとか言っていたが、そこまでこの巨大なのを運ぶのは俺なんだが?邪魔すぎる。

「ま、問題なく街に入れたし、いい、のか?いや良い。そういうことにしておこう」

 そういう風に思っておかないと。こう、悲しくなる。

「ところでミカさん。なんかやけにさけられてる気がするのだけれども」
「そ、そうですか?」
「いやだって、俺の視界の半分ぐらいはイノシシで埋まってるけど、もう半分は嫌そうな顔して俺をさけてく人ばかり映るんだけど。あと反応的にミカさんも嫌がってない?」
「それは皆さんがぶつからないようによけてくれてるんですよ。さけてるんじゃなくて。あと私はごにょごにょ」

 ふーん。嫌そうな顔してるのは俺の気のせいかな。これが普通かもしれないしな。
 あとミカさんなんだって?

「ところで。これ、どこに持ってけばいいの?肉屋?」
「普通だと冒険者ギルドですけど、ギルド会員じゃないと買い取ってくれないなんて聞いた事もありますし」
「ま、こんなに大きな獲物だ。肉屋でなんとかなるだろ」
「いや、魔物の売買は、」
「いざ、肉屋へ!」





 いやー。なんとかなった。あんな邪魔なものがずっとあるとか、考えたくもないぐらい最悪だからな。

「にしても、ミカさんのおかげで助かったよ。なんだっけ?証明書?があったおかげで、あのでかぶつを売り飛ばせた」
「いや、感謝されるような事はしてないですよ」

 いやでも、うーん?

「ま、なんでもいいや。はい報酬」
「え?」
「俺ひとりだとどうにもならなかったし。ちゃんと働いたらちゃんとした報酬がないとな」

 やる気がなくなるよね。俺は一年近く休みなく働く事を強いられてブちぎれした。親父と大喧嘩。暴力沙汰にまで至って、親父に負けた。ちなみにその時の傷が右腕に刻まれている。治りきらなかった。とまあ、俺の話はいらないな。

「いや、流石に多いんじゃ?」
「あ、そうなの?まあさっきの通りだし、そのぐらい受け取ってもらわないと。それこそ0か100、売れるか腐らせるかの二択だったんだし」
「いやでも、討伐の手伝いとか一切してないのに、半分も貰うのは」

 そうは言われてもな。そもそもとして、報酬の分配とかよくわかんないし。ついでに言えば、金の価値もいまいち理解してないし。

「まあ良いんだよ。それよか、この後どうするんだ?」

 よくわからないので、話を逸らす事にした。

「街まで一緒に行くって話だったけど、もう到着してるし。なんだかんだで面倒見てくれたけど、もう一緒に居る必要はないじゃん?あ、悪気があって言ってるんじゃなくて、こう、目的は街まで一緒に行く、だからさ。知らない人と一緒に行動し続けるなんて、そっちが辛いだろ?そういう意味合いで受け取ってもろて」
「……。どうしましょう?」
「どうしましょう、て。考えてなかったんかい」
「いえ、私もほとんど街に行く事が無かったので」

 まあわかる。俺なんて家から出る事すら珍しいから、ちょっと遠くの森に行くだけでも、ワクワクしたものだ。計画を立ててる時が一番楽しいまである。まあ結局計画通りの事はしない訳だけど。

「とりあえずは、ご飯でも食べるか。何も喰ってないから腹ぺこぺこだわ」
「昼からずっと並んでましたもんね」
「あいや、盗賊に荷物取られてからだから、3日、いや4日?」
「餓死寸前!?」

 まあ水だけは適切に補給できるのが幸いだ。満腹感も得られるし。

「ご飯となると、食事処を探さないといけないわけだけど」
「この辺りで美味しいお店があるってきいたことあります!」
「へえ。案内お願いしてもいい?」
「もちろんです!」

 心なしか、さっきまでよりイキイキしている気がする。まあ食欲は人間の三大欲求だからね。しょうがないよね。

「ふふっ、おいしいパン。楽しみだなぁ」

 楽しみなのはわかったのだが、そんなに楽しみにしている場所に、俺みたいな見知らぬ人と一緒で良いのだろうか?どう考えても知人と来た方が楽しめるだろうに。
 なんて適当な事を考えてると、いやはや街は恐ろしい。彼女の鞄にてを伸ばす不届き者がいるではないか。

「ちょっとお兄さん。そのお金は俺がミカさんにあげたのであって、あなたにくれてやる訳ではないのだが?」
「え、え?」
「ははは。言いがかりはよしてくれ」
「ふーん。じゃあその手に持ってるものを見せてくれたらいい。そうするだけで、俺の言ってる事の真偽がわかる。ああそれとも、先に彼女の鞄の中を確認した方がいいか?まだ財布が盗られた事すら気づけてないんだし」
「え、ちょ、ちょっと待ってくださいね。……本当だ、私の財布がない!」
「それでお兄さん、その手に持ってるものは、一体なんですかね?俺の予想だと、女性ものの財布だと思うんだけど」
「くそっ、バレたならしょうがねえ、お前らやるぞ!」

 なんとびっくり!その手に持っていたのは財布ではなくナイフだった!
 というのは置いといて。どーもやる気らしい。面倒くさい。

「ミカさんは俺の隣にいて。遠くに行くと守れないから」
「は、はい」
「お前、よく見るとこの前の鞄の持ち主か」
「え、え?」

 俺、盗賊の知り合いとかいないよ?
 ……。
 あ。あの時の盗賊かな?あの時はお世話になりました。廃品回収。

「よくも俺達をこけにしてくれたな!ぶっ殺してやる!」
「なんだよ、俺が何したって言うんだ。盗んだのはそっちだろ。沸点低すぎだし」
「おらっ!」

 真正面からナイフを構えて突っ込んできた。どっちかと言うと、ナイフを携えて突進してきた、の方が正しいかも。

「突進するならもっと足速くあれよ」

 すれすれ、なんてものではない。マジでガチで、余裕をもってかわした。

「は、引っ掛かったな阿呆が!」
「んなバレバレな連携に引っ掛かるわけないだろ」

 かわした先に仲間が待ち構えていた。いや、かわした先、というのはちょっと語弊があるな。かわした方向目掛けて、盗賊のお仲間がこれまた突進。こっちもナイフ持ってるんだから、もっとやりようがあるだろ。
 見え見えの罠、遅すぎる動き。雑な連携。嫌になるね。ちょっと真面目に相手しようと思った俺がバカに思えてくる。
 ので。
 相手の額目掛けてデコピンをする。ナイフ?そんなの当たらない。当てさせない。けどまあ念のため、ミカさんに当たらないよう、適当な方向へ蹴り飛ばす。

「痛ッ!」
「よくも兄貴を!」
「もっと我慢しろよ」

 魔力でいくらでも察知できるし、なんならこの騒ぎのおかげで人がはけているから、どこにいるのか探しやすいのに。ちょーっと蹴りを入れた程度で、カッとなって飛び出してくるなんて。折角の人数有利を捨ててるだけじゃん。

「まあ、兄弟想いはいいんじゃない?」

 その程度で怒るのがこいつだけかもしれないが、せっかくだし試してみよう。

「ほれ捕まえた」
「なっ!」

 びっくりしているようだが、簡単な話。相手の後ろに行って、両手を拘束。それだけ。

「さてさて。弟を返して欲しいのなら、さっさと盗んだ財布を返せ」

 こいつらは指名手配さてれいる盗賊の可能性が高い。なら、あと一人、隠れている奴がいるはず。けどまあ、あえてこの事は言わない。隙を晒している方が、有利に働くと見た。
 今、赤髪の奴を拘束し、青髪の奴は痛さでうずくまっていて、黄色の髪してる奴は気を窺っている。
 ……。ん?えっと、こいつら全員兄弟なのか?

「なあ。お前らって、全員兄弟なのか?」
「そうだが、それがどうした」
「え、じゃあ、血は繋がってるの?」
「?」
「?」
「?」

 この場にいる全員が多分、俺が何を言っているのかわかってないと思う。俺も急に何言ってんだこいつ、と思っている。でもしょうがないじゃん。気になっちゃったんだし。

「絶対、は言い過ぎか。おそらく、お前ら兄弟、どっかで両親が代わってるだろ」
「は、何を言ってる!」
「えいやだって。詳しい事は知らんけどさ。両親が同じなら、赤と青と黄色の髪色は生まれてこないだろ」

 この三色は原色だったか?そんなのだから、例え両親が色々な遺伝子を持ってたとしても、生まれてこないのでは?それこそ、どっかで別のが混ざったら話は変わると思うけど。

「さっきから何が言いたいんだ!」
「いやだから、お前らの親のどっちかが、浮気?してた事にならない?え?」
「なん、だと……」
「そんな、馬鹿な」
「嘘、だろ?僕たちは、兄弟じゃない?」

 あ、なんかごめん。複雑な事情とかあったかもしれないのに、ずばずば入り込んでごめん。

「油断したな?」
「あ」

 まあ油断してたと言えばしてたけど。一応言い訳をさせてもらう。こうやって油断する事によって、いるであろうもう一人を釣る為の作戦だったのだ!

ガチャ
「なあ、俺の気のせいじゃなければ、これって手錠か?」
「そうですね」
「知らないのなら教えるけど、今襲われてるのはこっちで、盗賊は向こうだぞ?」
「そうですね。知っています」
「あっそう。じゃあ言わせてもらうけど。なんで俺が捕まえられないといけないんだ?」
「そうですね。とにかく来てください」
「あっそ。こっちの質問には答えてくれないのか」

 これ以上変な騒ぎを起こしたくないし、言われる通りにして、連行されよう。
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