高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど

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第二十七話

「俺が会いに行く前に来たってことは、何かあったの?」

察しのいいアーシュに図星をつかれる。

「うん。……カリーノの様子を見に行った時にレトア卿と揉めてしまって。レトア卿が僕を嫁がせる様に父上に進言すると言っていた。折角アーシュがおじさんを説得してくれたのに、それを無駄にしてごめん」

「そうだったんだ。気にしなくて大丈夫だよ、ヴィル。レトア卿がそう出るなら、こちらも別の方法を考えればいいだけだから。そういえばカリーノ殿下はどんな様子だった?」

アーシュは僕を抱きしめ優しく囁く。カリーノのことを正直に話すべきなのだろうか?でも、僕からはあんな内容を言いたくない。

「アーシュ。僕がリドールに嫁がないなら、カリーノが代わりに行くしかないのか?この縁談自体を断ることはできないのか?」

「大国のリドール相手に断ることはできない。リドールとの繋がりができれば、周辺諸国が易々とエステートに手出しできなくなる。この縁談は、リドールよりもうちの方がメリットがあることはヴィルも分かっているでしょ?」

「うん。でも僕の代わりにカリーノが望まない結婚をするのは嫌なんだ」

「ヴィル…」

アーシュは僕の顔を覗き込み、駄々をこねる幼子を諭す様な口調で僕に語りかける。

「カリーノ殿下の幸せを願う気持ちは分かるよ。それならなおのこと、今後を考えると彼女はリドールに嫁いだ方が幸せだと思う。嫁がずにエステートに留まれば、レトア卿と番にされるか、周辺諸国に嫁ぐことになる。それなら、大国の第一王子の元に行くのが一番いいと思わない?」

僕は今回の縁談のことばかり考えていたが、今回は回避出来ても僕とカリーノは決められた相手と番になるか別の政略結婚の駒になる運命は変えられない。アルヴィならカリーノを大切にしてくれそうだが、仮にも王族がベータに嫁ぐことはあり得ない。

「アーシュの言う通りだな。リドールの王子は優しいからカリーノもきっと好きになるはずだ」

僕がそう言うと、さっきまで優しい笑顔を浮かべていたアーシュの表情が曇る。そして口元しか笑っていない明らかな作り笑いを浮かべる。目は剣呑に光り僕を見下す。

「ヴィル、いい度胸だね。俺の腕の中にいるのに他の男を褒めるなんて」

「へ?…アーシュ!王子を褒めた訳ではなくて、えっと」

「うん。言い訳はベッドでゆっくり聞くから。昨日無理させたから、今日は何もしないつもりだったのに。でもヴィルが俺を煽ったのだから仕方ないね」

危険を察知してアーシュの腕から逃れようとした僕は肩に担がれ逃げ道がなくなる。アーシュはそのまま歩き始め僕の意見も聞かずに自己完結している。アーシュが嫉妬しているのは嬉しいが、この後のことを考えると非常にマズイ。なんとかアーシュを思いとどまらせなきゃ。

「アーシュ、仕事は?僕の分もやってくれてたなら、まだ終わってないだろ?」

「あぁ、それなら終わらせてあるよ。ヴィルに早く会いに行きたかったから頑張ったんだ。だから、その分も労ってね」

僕の悪あがきは意味をなさなかった。むしろ変なオプションが追加された気がする。あぁ、明日も半日はベッドから起き上がれなさそうだ。僕は数分後の自分の身を案じた。

* * *
部屋に着いた時はまだ明るかったはずなのに、いつの間にか日が暮れている。事後特有の生暖かい空気が部屋の中を漂う。

「ヴィル、体は大丈夫?」

昨日も同じことを聞かれたな。なんなら状況も全く一緒だ。唯一違った点は、僕が意識を飛ばさなかった所くらいだ。それは別に前回より抑えめだった訳じゃなく、わざと焦らして僕が果てる回数を減らしたからだ。なんなら今回の方が体は疲れている気がする。

「もう今日は休ませて。今日抱かれたから、流石に腹上死する気がする」

「流石に二日連続はキツかったよね。でも腹上死って。それは俺に乗っかってくれるってこと?」

「いや!違うから!本当に、そういう意味じゃないから!」

アーシュが笑いながら、僕の背中を撫でる。素肌が触れ合う感覚を心地よく感じるが、またしても墓穴を掘った!言葉責めの次は、騎乗位なんてたまったものじゃない!

「分かってるよ。ヴィルのイヤイヤは、好きってことだもんね?次はきちんとご期待に添える様にするからね。今日はお風呂入って、もう寝るよ」

アーシュに都合のいい様に解釈され丸めこまれる。そしてアーシュはまだ汗ばむ僕の体を横抱きにする。そこで僕はあることに気づく。

「今日は帰らないで一緒に居てくれる?」

前回はアーシュが帰ってしまい寂しかった。だから今回は朝まで一緒に居て欲しい。

「そんな可愛いお願いされたら、帰れないよ。…朝まで愛し合おうね」

どうやら僕はアーシュの変なスイッチをまた押してしまったらしい。でもアーシュが独占欲を見せるのも、何度も求めるのも僕だけ。そう思うと、僕の独占欲も満たされた気がした。

* * *
微睡のなか、小鳥のさえずりが遠くに聞こえる。その心地よさに深い眠りにまた入りそうになった時に扉が勢いよく開く音で覚醒した。

「兄様!またアーシュとイチャついて!」

「カリーノ殿下、何度も言っていますが、扉はノックしてください」

カリーノがやっかんでくる。今日は前回と違って服をきていたからまだ良かった。僕と一緒に眠っていたアーシュが体を起こしカリーノをたしなめる。

「そんなことは今はどうでもいいの!アーシュがここに居るってことは、おじさまからまだ話は聞いてないのでしょ?」

「父からは何も一体何の話ですか?」

カリーノは注意された事など気にせず話を続ける。それにしてもアーシュの父からの話とは一体なんのことだ?昨日レトア卿が進言すると言っていたことと関係はあるのか?

「それはね、リドール帝国の王子の誕生日パーティーでエスコートする相手についてよ」

カリーノが少し勿体振るが、普通に考えたらアーシュが僕をレトア卿がカリーノをエスコートするのでは?

「レトア卿は兄様をエスコートするから、私はアーシュにエスコートしてもらうことになるの。よろしくね。アーシュ」

「はぁっ⁈」

予想外の内容に僕は思わず飛び起きた。









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