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【ヤンデレβ×性悪α】 高慢αは手折られる
第九話
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フェナーラは寝室に着くと、そっと私をベッドの上におろす。私は姿勢を正しベッドサイドに腰掛けると、正面に立つフェナーラを無言で睨みつける。
「セラフ、睨みつけても可愛いだけだぞ」
フェナーラは私の頬に手を添え、顔を近づけてくる。私は近づいてくる顔を手のひらで押しのけた。
「何をしようとしているんですか。私はアルファ以外と、こういったことをするつもりはないと言ったはずでしょう?」
「はいはい。そうでしたねー。じゃあ、セラフが俺を求めてくれるまで、いい子にしてますー」
「待っても時間の無駄ですよ。それよりも着替えと言っていましたが、この服装のままで良いのでは?」
今の服装は首元まで隠れるブラウスにスラックスだ。この上にブレザーかショートコートを羽織れば王族関係者を迎えるのにも充分だとは思うのだが。不貞腐れていたフェナーラは溜め息を吐き出す。
「はぁ。全然ダメだ。その服装だと首元が見えないだろ。ネックガードを付けているのが分かる服装じゃなきゃダメだ」
「嫌です。…第一、この首輪は私の意思で付けている訳じゃありません!」
「ほぉ。じゃあ、客人の前でこのブラウスの首元を破かれるのと、いま自分の意思で着替えるのならどっちがいい?」
フェナーラが論外な選択肢を提示して、私のブラウスの首元を摘む。どちらも嫌だが拒否したところで、どちらかを強制されるのは目に見えている。それなら、精神的なダメージは少ない方がいい。
「…分かりました。着替えます……出て行ってもらえますか?」
フェナーラの手をやんわり避け、ベッドから降り、寝室に何故か準備されていた替えのブラウスを手に取る。そして部屋から出る気配が一切ないフェナーラに声をかけた。
「あぁ、着替えを手伝おうと思って。セラフ、一人で着替えるのにまだ慣れてないだろ?」
「最近は一人で着替えてますから、ご心配なく。さあ」
扉の方に手を向けフェナーラに出ていけと伝える。
「お互いの裸を見ているんだから、着替えくらい恥ずかしくないだろ?」
「あなたのそういう所が好きではありません。これ以上、あなたの好感度が下がったら嫌いになるしかないのですが?」
フェナーラは私の肩に腕を回すが、私はその手の甲を軽く摘む。いくら裸を見られていても素肌を見せるのは気恥ずかしいのだ。フェナーラのこういうデリカシーのない所が、私の神経を逆撫でる。だから本当に嫌いになれたら、きっと楽なのに。
「いたっ、わかったわかった!嫌われたくないから出るよ!」
フェナーラは私から離れ部屋を出ていく。あんなにゴネていたくせに、名残惜しさも残さずに出て行ってしまう。さっきまで感じていたフェナーラの温もりがなくなり、ほんの少し肌寒い気がした。
* * *
客人とはやはりこの男かと、目の前に腰掛ける端正な顔立ちを眺める。すると相手も艶やかな黒髪の間から見える赤い瞳をこちらに向ける。
「ここまで明からさまに睨みつけられると清々しくて、怒る気も失せるな」
面白そうに私を眺めるフィリアス卿が言う。
「セラフ、気持ちは分かるがアーシュを睨むな。こいつはセラフの仇かもしれないが、俺の親友なんだから」
「そうだな。にしてもフェナ、お前は相変わらず悪趣味だな」
フィリアス卿の視線は私の首元に向けられている。フィリアス卿とは反りが合わないと思っていたが、さすがにネックガードに関しては同一見解のようだ。
「悪趣味って、ひでー言い草だな。ネックガードはセラフが俺のものっていう証だから。で、アーシュ。今日はどんな要件なんだ?」
「証なら他にも方法があるとは思うが、まぁ、そいつにはいい経験だろうな。ああ、今日はアルファ用の発情抑制剤がないかを聞きに来た。バナト商会で取り扱いはあるか?」
「うーん。アルファ用の抑制剤ってことは、オメガのフェロモンで発情が誘発されないようにする薬だろ?多分そんな薬はどこも取り扱ってないぞ。だってアルファがオメガのフェロモンで発情して間違えて噛んでしまっても、アルファに不利益はほとんどないからな。なんでそんな薬が欲しいんだ?」
「王太子の伴侶の立場で、これから様々な外交をこなさなければならなくなる。もしかしたら相手方に発情期が近いオメガがいるかもしれないからな。万一噛んでしまったら外交問題になるだろ」
フィリアス卿が淡々と話す内容に、嘲笑が込み上げてくる。抑えきれず「ふんっ」と鼻で
笑うと、フィリアス卿がこちらに冷たい視線を向ける。
「何がおかしい?」
フィリアス卿は不愉快そうに私に問いかける。
「セラフ、睨みつけても可愛いだけだぞ」
フェナーラは私の頬に手を添え、顔を近づけてくる。私は近づいてくる顔を手のひらで押しのけた。
「何をしようとしているんですか。私はアルファ以外と、こういったことをするつもりはないと言ったはずでしょう?」
「はいはい。そうでしたねー。じゃあ、セラフが俺を求めてくれるまで、いい子にしてますー」
「待っても時間の無駄ですよ。それよりも着替えと言っていましたが、この服装のままで良いのでは?」
今の服装は首元まで隠れるブラウスにスラックスだ。この上にブレザーかショートコートを羽織れば王族関係者を迎えるのにも充分だとは思うのだが。不貞腐れていたフェナーラは溜め息を吐き出す。
「はぁ。全然ダメだ。その服装だと首元が見えないだろ。ネックガードを付けているのが分かる服装じゃなきゃダメだ」
「嫌です。…第一、この首輪は私の意思で付けている訳じゃありません!」
「ほぉ。じゃあ、客人の前でこのブラウスの首元を破かれるのと、いま自分の意思で着替えるのならどっちがいい?」
フェナーラが論外な選択肢を提示して、私のブラウスの首元を摘む。どちらも嫌だが拒否したところで、どちらかを強制されるのは目に見えている。それなら、精神的なダメージは少ない方がいい。
「…分かりました。着替えます……出て行ってもらえますか?」
フェナーラの手をやんわり避け、ベッドから降り、寝室に何故か準備されていた替えのブラウスを手に取る。そして部屋から出る気配が一切ないフェナーラに声をかけた。
「あぁ、着替えを手伝おうと思って。セラフ、一人で着替えるのにまだ慣れてないだろ?」
「最近は一人で着替えてますから、ご心配なく。さあ」
扉の方に手を向けフェナーラに出ていけと伝える。
「お互いの裸を見ているんだから、着替えくらい恥ずかしくないだろ?」
「あなたのそういう所が好きではありません。これ以上、あなたの好感度が下がったら嫌いになるしかないのですが?」
フェナーラは私の肩に腕を回すが、私はその手の甲を軽く摘む。いくら裸を見られていても素肌を見せるのは気恥ずかしいのだ。フェナーラのこういうデリカシーのない所が、私の神経を逆撫でる。だから本当に嫌いになれたら、きっと楽なのに。
「いたっ、わかったわかった!嫌われたくないから出るよ!」
フェナーラは私から離れ部屋を出ていく。あんなにゴネていたくせに、名残惜しさも残さずに出て行ってしまう。さっきまで感じていたフェナーラの温もりがなくなり、ほんの少し肌寒い気がした。
* * *
客人とはやはりこの男かと、目の前に腰掛ける端正な顔立ちを眺める。すると相手も艶やかな黒髪の間から見える赤い瞳をこちらに向ける。
「ここまで明からさまに睨みつけられると清々しくて、怒る気も失せるな」
面白そうに私を眺めるフィリアス卿が言う。
「セラフ、気持ちは分かるがアーシュを睨むな。こいつはセラフの仇かもしれないが、俺の親友なんだから」
「そうだな。にしてもフェナ、お前は相変わらず悪趣味だな」
フィリアス卿の視線は私の首元に向けられている。フィリアス卿とは反りが合わないと思っていたが、さすがにネックガードに関しては同一見解のようだ。
「悪趣味って、ひでー言い草だな。ネックガードはセラフが俺のものっていう証だから。で、アーシュ。今日はどんな要件なんだ?」
「証なら他にも方法があるとは思うが、まぁ、そいつにはいい経験だろうな。ああ、今日はアルファ用の発情抑制剤がないかを聞きに来た。バナト商会で取り扱いはあるか?」
「うーん。アルファ用の抑制剤ってことは、オメガのフェロモンで発情が誘発されないようにする薬だろ?多分そんな薬はどこも取り扱ってないぞ。だってアルファがオメガのフェロモンで発情して間違えて噛んでしまっても、アルファに不利益はほとんどないからな。なんでそんな薬が欲しいんだ?」
「王太子の伴侶の立場で、これから様々な外交をこなさなければならなくなる。もしかしたら相手方に発情期が近いオメガがいるかもしれないからな。万一噛んでしまったら外交問題になるだろ」
フィリアス卿が淡々と話す内容に、嘲笑が込み上げてくる。抑えきれず「ふんっ」と鼻で
笑うと、フィリアス卿がこちらに冷たい視線を向ける。
「何がおかしい?」
フィリアス卿は不愉快そうに私に問いかける。
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