スパダリ様は、抱き潰されたい

きど

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はじまりは、あの日

28.りょうへい

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そのは、俺に向けられたものなのか、それとも、に向けられたものなのか思案していると

「田浦君、こいつははたけ。俺の同期で、今は秘書課の主任。」

俺の後ろにいた川奈さんから、そう紹介される。

「と言うことは、川奈さんの秘書の方ですか?」

「あ、はい。そうです。ちなみに名前は、りょうへいじゃなくて、幸助です。
たうら君は、川奈の友達?」

「多分…そうです。最近仲良くしてもらってます。田浦一臣といいます。」

それを皮切りに、互いに自己紹介をするが手探りのため、どこかぎこちない。
よく見ると畠さんも茶髪のスポーツカットが似合うイケメンだった。イケメンの周りにはイケメンしかいないのだろうか。ただ、少し酔っているみたいで顔が赤らんでいてアルコールの臭いがする。

「今日は先約があるから、泊められない。」

「えっ⁈川奈に断られたら他に行くとこないんだよ!頼むよー!」

川奈さんが俺の後ろから顔を出して言うと、畠さんは本当に困った様子で、川奈さんを拝みたおしている。二人の口ぶりから何度か泊まっていることが分かり少し複雑だ。

「ホテルに泊まればいいだろ。」

「家、追い出されたから財布ない。電子マネーもさっきやけ酒したら、すっからかんになっちゃった。」

「なんでそう計画性がないんだ。それならもう、彼女に許してもらえる様に土下座で謝り倒すしかないだろ。」

「無理無理!追い出される前、ものすごく怒ってたもん!戻ったら、ただじゃ済まされないよ!」

川奈さんは呆れた様子で見ていて、いっぽあの畠さんは、戻った場合の惨状を想像したのか、青くなる。畠さんの荷物が少ないと思っていたら、追い出されたから持って来れなかったのか。さすがに可哀想になったのと、これ以上は近所迷惑になるて考え俺は後ろを振り向く。

「ご近所から苦情きちゃうと大変なので、とりあえず家にあがってもらった方がいいと思います」

「…うん。畠もあがれよ。」

「川奈ありがと!田浦くんも、ありがとね!」

川奈さんは一瞬躊躇ったが、畠さんを招き入れる。畠さんの反応から泊まる気だと分かった。

* * *

「で、彼女を怒らせた原因は何なの?」

ソファに沈んでる畠さんに水を手渡し、川奈さんが聞く。俺はダイニングの椅子に腰掛けて二人のやりとりを見守る。

「いつもの、『私と結婚する気あるの⁉︎』ってやつだよ。」

「またそれか。もう付き合い長いんだから結婚すればいいだろ。」

「そうは言ってもさー。これから先の彼女の人生を俺が縛ってもいいのかって悩むわけなんよ。」

「向こうが結婚を望んでいるんだから、いいんだろうよ。」

結婚に煮え切らなくて、彼女さんを何度か怒らせている様だった。川奈さんも事情を知っているみたいで二人の関係の深さが垣間見える。

「そうなのかなぁ。そういう川奈は、結婚したいって思ったことあるの?」

あ、畠さん。それ絶対に聞いちゃダメな話題。

「俺の話じゃなくて、どうやったら彼女に許してもらえるか考えるのが先だろ。」

畠さんの悪意のない質問を川奈さんがかわす。

「いいや、俺は気になる!
そういえば田浦君知ってる?川奈ってば、意外と恋愛体質なんだよ!」

「それは、今話すことじゃないだろ!」

畠さんの口を川奈さんが手で塞ごうとする。
畠さんはそれをひらりとかわし話を続ける。

「俺らが社会4年目くらいのときかな?川奈が、心配になるくらいに痩せた時期があってさ。どうした?って理由を聞いたら、フラれたって言ってさ。こんなイケメンで何でも器用にこなす奴でもフラれたら、こんなボロボロになんのかって思ったのよ。うぐっ」

「もう、それ以上はいいから!」

「あ!川奈さん、それ以上は畠さんが危ない!」

畠さんは川奈さんから逃げながら概ね話したところ、川奈さんに後ろから羽交締めにされる。さすがに締まっていたので川奈さんをとめに入る。

でも、この話は以前聞いた元彼に振られた時なんだと分かってしまった。川奈さんがボロボロになるほどの大失恋。多分いまだに川奈さんの心に居座り続ける、その男こそ、りょうへいなんだろう。何故かそう直感が訴えていた。









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