スパダリ様は、抱き潰されたい

きど

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はじまりは、あの日

45.君が好き Side.K

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「…何言ってるんですか。川奈さんは元彼さんとヨリを戻したんでしょ?今更、俺を揶揄わないでください」

田浦君は困惑した表情をしたが、それも一瞬ですぐにあしらう様な口調に変わる。田浦君が俺に触れる前は少しでもからかうと、こんな風にあしらわれていた。でも今は揶揄っている訳じゃなくて、本当の気持ちをただ伝えたいだけ。

「良平からヨリを戻して結婚しようと言われた。でも、すぐに返事できなかった。ずっと、ずっと良平が俺の元に戻ってくるのを待っていたはずだったのに」

このマンスリーマンションに到着した時に、良平にヨリを戻すことは出来ないと連絡をした。
良平は納得していない様子で「まさか、田浦君お友達の彼がずっと真斗だけを愛してくれるって夢みてないよな?」と聞いてきた。変わらない愛情があるなんて夢をみられるほど純粋ではない。でも、好きな人を忘れるために割り切って付き合えるほどスレていない。

「いつの間にかさ、良平のことなんて忘れてた。だって、田浦君が俺の一番になってたから」

「元彼さんとヨリを戻していないのは分かりました。俺が好きとか、一番とか言っていますけど、俺を振ったのは川奈さんじゃないですか?いまさら、そんなこと言われても困ります」

田浦君に冷たく言われ胸が締め付けられて目頭が熱くなる。泣くな。自分が傷つきたくないからと今まで散々、田浦君の気持ちを踏み躙ってきた結果なのだから。きちんと受け止めて前を向くしかないじゃないか。

……そう頭では分かっているのに。田浦君を失いたくないと心がワガママに叫ぶ。

「……どうしたらいいの?」

「え?」

田浦君の顔を見たままだと泣いてしまいそうだから、涙を堪えるために下を向く。これで田浦君の表情はわからなくなったけれど、俺の呟きに困っているのは感じた。それでも、もう止めることができなくて、思いが溢れ出る。

「田浦君が…すき。どうしたら…うっ…もう一度、んぐ…好きになってくれる?」

「……」

結局泣いてしまい、嗚咽まじりに縋り付く様に言う。泣くのを堪えることすら出来ない自分が恥ずかしくなり膝を抱えダイニングチェアの上で三角座りの姿勢をとる。
きっとこんな姿を晒す俺に田浦君は呆れてる。自分は何度も田浦君を振って傷つけた癖に、いざ自分が振られたら、たった一回でこのざまだ。

「うっ…」

「……川奈さん」

田浦君の声が頭上から聞こえた。そして脇の下に手を差し込まれ、軽々と抱き上げられる。そのまま、床に座った田浦君の膝の上に乗せられる。

「川奈さん、顔あげて」

「ひくっ…」

「こんなに泣いて…」

田浦君に言われるがまま顔を上げる。膝に目を押し付けていたせいで、視界がチカチカして田浦君の顔がはっきり見えない。そんな俺の目元を指でなぞり、涙をすくいあげられる。視界のハーレーションは収まり、涙がこぼれる一瞬にはっきりと田浦君の表情が見えた。

「素面の川奈さんが泣いているところ初めて見た。不謹慎かもしれないけど、俺すごく嬉しい」

「うぅっ…もう、ダメなんだって…思ったから」

「そっかぁ。俺が好きって言って泣くなんて思わなかった。ねぇ川奈さん、俺のこと好き?」

田浦君に愛おしそうに見つめられ頬を撫でられる。その表情が嬉しくて、田浦君をもっと感じたくて首に手を回し膝の上で向き合う姿勢になる。そして田浦君の顔をまっすぐ見て

「田浦君が…んぐ…好き。もう…離れたくない。」

素直な気持ちを告げる。

世間体とか、未来の不安なんて今はどうでもいい。好きな人ただ一緒にいたい。だって、今がなきゃ未来なんてやってこないのだから。

俺の言葉を聞いた田浦君が、優しく微笑み

「俺も好きだよ。ずっと一緒にいてくれる?…真斗さん」

俺に愛を囁いく。さっきまでクールだったのに俺の名前を呼んだとたんに照れて真っ赤になる。
そんな姿がたまらなく愛おしくて、俺は彼の温もりを感じたくて、体をさらに密着させる。そして彼の耳元に口を寄せて

一臣かずおみ君と…ずっと…一緒にいたい」

彼の名前を囁き彼に愛を誓った。
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