Doll Master

亜黒

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【Doll Master】⑨

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隣の者の声すら聞きづらい程の拍手喝采の中で、しかしその鈴の音は酷くはっきりと聞こえた。

瞬間。

「――っ!?」

「あ、れ?」

あれだけ鳴っていた拍手音が――消えた。


いや、厳密にいえば『鳴らすことが出来なくなった』といった方が正しいだろう。

「な、何だ…?」

「え?体が、動かない?」

何故なら、観客は皆一同に、その拍手の形のまま、体の動きを奪われていたから。客達は、拍手の形のまま全く微動だにしない――まるで、あらかじめそうなるように作られていた蝋人形のようだ。

「ふんぬぬ…くそっ!全然動かねぇ!」

「嘘っ!何で?何で動かないの!?」

「うーん…これも何かのマジックかな?」

「ふざけんな!」

自分達の体が突然動かなくなるという異常事態に、店内は先程と打って変わって騒然となった。客達は何かの演出なのかと困惑している者、体が動かないことに激怒している者、不安そうにしている者と反応は其々だ。


そんな中。


パチパチパチ。


「いや、素晴らしい。遥々、こんな小国に来た甲斐があったよ」

「っ!?」

惜しみ無く拍手を送りながら、悠然と歩いていく者が一人。


「―――Doll Master…っ!」


そこには、目元を隠した仮面を付け、真っ黒なスーツを着た男――『Doll Master』が、楽しげに笑っていた。

 「くそっ、やられた!」

「誰か、動ける者はいないか!?」

「久神君!」

そんな警部たちの必死の声を嘲笑うかのように、Doll Masterはゆっくりとその側を通り抜けていく。そして、ステージにいる快斗の目の前までやって来た。

「やぁ、久神快斗君。今宵は素晴らしいショーを有り難う。私の事は知っているかな?」

「へっ!知ってるさ。俺にあの気色悪いラブレターをくれた人だろ?俺なんかにどうも!」

あまりに流暢な日本語に少し驚きながらも、快斗が挑発と皮肉を込めて言うと、Doll Masterはさも可笑しげに笑った。

「ふふふ。君は他の『doll』達とは違うようだね。私が誰か分かっていて、それでも今回のショーを行う――その度胸の良さが気に入った」

そこまで言って、Doll Masterはその瞳を更に怪しく光らせた。

「やはり、君は私のコレクションに相応しい」

(っ!こいつ、何ていう目をしやがる…)

まるで、極上の獲物を見つけた捕食者のような――そんな眼に、思わずゾクッとする。

その対峙する二人の緊迫した空気に、口々に叫んでいた観客達はいつの間にか誰一人話す事が出来なくなっていた。

 
 
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