落ちるよ、何処までも

亜黒

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普通ってどこ行ったんだろう?

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辺りは見渡す限り一面の草原。建物は見当たらず、遠くで何かの生き物が動いてるのがわかる。のんびりしているから、多分、草食動物かそれに類似する生き物だろう。別世界なのだから、モンスターとかかもしれない。危険がないのであれば、是非とも後で近くで見てみなければ。しかし、それより大切なことがある。

「…地面だ」

そう、これは待ちに待った焦がれて焦がれて…何度でも言うが、焦がれて焦がれ続けたーー地面なのだ。

《そうでしゅね。いやぁ、久しぶりに明るいところに出たでしゅ。太陽が眩しいでしゅね。あ、もう降りてもいいでしゅから、どうぞ?》

コッコさんの言葉に小さく頷き、僕は慎重に、慎重に地面へと足を伸ばす。だって、喜び勇んで飛び降りて『幻でした!』って足元が抜けたら泣くもの。大の男がみっともなく大泣きする自信ある。

そんな僕の心配を他所に、僕の足は普通に地面に着いた。そして、コッコさんから数歩離れ、両の足でしっかりと地面を踏みしめるように立てる。

そこまでが、僕の限界だった。

「いっ……」

《い?》

「いやっほぅー!!!地面だ、地面だ、地面だー!!立ってる、僕、地面の上に立ってる!もう、もう、もう二度と立てないと思ってた地面に……世界は違うけどでも遂に……!うわぁぁぁん!」

《ピィ!?》

そのまま崩れ落ち、地面を抱き締めるように大の字で倒れる。ちょっと顔に草がチクチク当たって痛いけど、そんなの気にしてられない。僕は、僕は地面に辿り着けたんだ!

いきなり倒れたことに慌てていたコッコさんだったが、おいおいと泣くそんな僕の様子に、まるで聖母の如き微笑みで静かに優しく見守ってくれた。(ニワトリver.)

………僕の感激は、いい加減長いとコッコさんに止められるまでそれから約五時間は続いた。

《ピィ。落ち着いたでしゅか?》

「グスッ。うん、まだまだ泣きたいけど、結構落ち着いたよ。ありがとう、コッコさん」

《それは良かったでしゅ。キミが地面と同化しちゃうんじゃないかと思う勢いで泣いてたから、ちょっと心配したでしゅけど…》

「あはは…。でも、やっぱり足元があって、落ちないって良いね。地面、最高!…あ。今さらだけど、ここって空気とか太陽とか重力とかその他諸々どうなってるの?」

今まで全く気にしてなかったけど、地球と違う世界なのだから、当然色々あっちと違う筈だし。今は普通に呼吸とか大丈夫でも、実は僕には毒でしたとかないよね?

《ピィ。そこは若干違いましゅが、キミには善神様達の御加護がありましゅから、仮に何かあっても大丈夫でしゅよ。極端な話、環境による害は殆ど無効と思ってもらって良いでしゅ》

「え」

ちょっ、やめてよ。何さ、環境による害は殆ど無効とか。僕、いつの間に人間辞めたみたいになってるの!?ゲームとか小説の中だけなら、面白くて便利だなとは思うけど、自分が『はい、なりました』ってなると困る!

血相を変えて詳しく話を聞くと、今回の事態が納まるまではという期間限定的なものらしい。流石にそういうものは、本人の善行やら功績やらを考慮して慎重に行わないといけないとか。………良かった。問答無用でやられても困るもの。

とか安心してたら、コッコさんいわく、『善神様達の加護だけじゃなくて、悪神様達の執着もありましゅけどね』って言われた。

………そういえば、称号にあった気がする。

加護と執着の対決って、絶対終わらない気が…僕が普通になるのはまだまだ先になりそうです。

泣きそう!
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