落ちるよ、何処までも

亜黒

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こ、こんなはずでは……。

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さて、衝撃の事実については目を背け、文字通り新世界を探索してみよう!ということになった。まずは、先程から見えてる生物を見に行ってみる。

ちょっと近づいたお陰で、のんびりしている生物の全容が見えてきた。形で言うと、長い耳をした小型生物ーーウサギっぽいフォルムのヤツがいた。だけど、地球のと少し違って、額に角が生えてたり、首が2つだったり、羽根が生えてたりと様々だった。

…うわぁ、まさしくファンタジーな光景。羽根とか角はまだ良いけど、首2つとかはちょっと…。

しかも、赤い口元から牙っぽいの見えてるし。こいつ、ウサギなのに肉食なのか?

若干引きつつ、まずは近づいてみる。

草原をテクテク歩いて行くと、さっきまでのんびりしてたのがどこへいったやら、皆一様に一瞬で警戒して一斉にざっ!と此方から距離を取るウサギ達。

……あれ?

テクテク。ざっ!テクテク。ざっ!テクテク。ざっ!テクテク。ざっ!テクテク。ざっ!テクテク。ざっ!

………全然近づけない。近くで見たいのに、一定の距離で皆逃げてしまう。

「……こうなったら!」ダッ!

『ビクゥ!』ダダダダッ!

軽く走ったら、皆まるで天敵に見つかってしまった!とばかりに凄い必死(マジでがピッタリな)の形相で逃げ出してしまった。……何故に!?

ダダダダッ……コケッ!?『キャウ!?』

「あ、転けた」

途中で転けたらしいウサギ(羽根あり)なんかは、近づいた僕を見て、絶望の表情で恐怖からかひっくり返って失神してるし。

え、なにこれ。ピクピクしてるし…そんなに僕が怖いの!?ちょっとショックです。

「…コッコさん、僕ってそんなに怖い?」

《ピィ。大丈夫、大丈夫、怖くないでしゅよ。ただ単に、相手が悪いだけでしゅから。こいつらは『クリティラビット』っといって、凄く臆病なんでしゅ。特にキミは、この辺では見たことがない生物でしゅからね。だから、見慣れないキミを見て逃げたんでしゅよ》

えー、近づいただけで気絶するとか、臆病にも程があると思うんだけど。

《ちなみに、クリティラビットは目がとても良いでしゅから、遠くから仲間がどうなるか見てましゅよ。ここでザックリ倒しちゃうと、二度と近づけないでしゅね》

「何言ってんですか、コッコさん。いくら僕のテンション高いからって、倒したりしませんよ!僕は、ただ見たかっただけなんです。だから、このまま逃がしますよ!コッコさんも倒そうとしないでくださいね!」

だって、目の前に気絶してるのは、クリティラビットの中でも可愛い羽根ありだし。そんな愛玩動物を虐待なんかしません!

全力で拒否したら、コッコさんは何故か柔らかく微笑んだ。

《そうでしゅか。やっぱり優しいでしゅね。キミならそういうと思ってたでしゅよ。でも…》

「でも?」

首を傾げると、コッコさんは翼で気絶したクリティラビットを指して言った。

《こいつらのお肉って凄く美味しいでしゅから、ちょっと残念でしゅ》

「はい!コッコさん向こう行こう!うん、そうしよう!いやー、僕、向こうも見てみたかったんだー」

よ、予想外。お肉が美味しいって…コッコさんって雑食なんですね。

結局、その後、クリティラビットを介抱することも出来ずに、残念がるコッコさんを気絶したクリティラビットから遠ざけるべく奮闘することになった。

仲良くなりたかったのに。可愛かったのに。

こ、こんなはずでは…。
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