幸運の招き猫は逆に幸運を得る

16 ルヴァインside

　帰宅する最中、ルヴァインは一人悩んでいた。
　頭の中にあるのは、保護しているリューイのことばかりだ。

　彼も漸く、心を開いてくれた。そして、屋敷に居させる名目で抱いたが、そのまま自分のものでいると言い出してしまっている。
　それが嬉しくもあり、悩みの種だったりする。

　今、ルヴァインの中にはリューイに対して芽生えた感情がある。
　それを彼に話して、受け入れてくれるだろうか……。
　いや、それを話したとしても、彼は「俺はお前のもんだ。好きにしろよ」と言い出し、自分の好きなようにしろと言い出しそうで困る。それが悩みだ。


　そんなことを思いながら門を潜ると、アランに「おや？」と声を掛けられる。
「ルヴァイン様、リューイさんは一緒ではないのですか？」
「どういうことだ」
　ルヴァインはアランに訝し気な表情を向ける。そんなルヴァインに、彼は言葉を続けた。
「いえ、昼間リューイさんがあなた様に会いに行くと言って出て行ったんですが……」
　その言葉を聞き、ルヴァインは一目散に屋敷に戻った。




「リューイ！」
　屋敷の扉を開けると、声を聞き付けたミアサとガルス、ジェニスが三人して慌てた様子で玄関に集まってきた。

「旦那様、リューイ様が、リューイ様が居ないのです……！」
「私が一緒に昼食をとろうと部屋にお邪魔した際には既に姿がなく……」
　ジェニスとミアサ、それにアランの意見を纏めると、リューイは昼前に街に出て行ったことになる。

「私が街を捜しに行きましたが、どこにも姿がありません」
　嗅覚の鋭いガルスでも見つけられなかったとすると、リューイは街の外にいることになる。
　
「騎士団に戻る。お前たちはこのまま待機していろ」
　ルヴァインはすぐさま踵を返し、街に戻る。騎士団に戻り、捜索をせねばならない。

　リューイ。無事でいてくれ……。

　そう思いながら、全力で走っていった。