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疑問
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何時も思っていたが、この世界は俺の知っているものが多く存在する。
例えば食材だ。日本名の食材が山のように存在する。というより、『日本のもの』が多い印象だ。例えば玉ねぎ。俺が住んでいた世界だと、当たり前だが使う言語が違うように国ごとに呼び名が違う。だが、この世界では玉ねぎという名で存在している。味も見た目も、そのまんま玉ねぎだ。他にも、同様に日本名で存在する食材が数多く存在している。何故だ?
最初は「自分の世界との共通点しているんだ」なんて呑気に考えていたが、この世界に来てもうすぐ一月が経つ。自然と周りに目を向けることが出来るようになってきたからか、些細な疑問が湧いてくるようにもなってきた。
「この世界で、玉ねぎが玉ねぎと呼ばれるようになった時期……?」
食事の用意をしつつ、何気なくミルファリアに訊ねてみる。ミルファリアは考え、悩み、言葉を捜しているようだった。
「私がもの心つく時から、玉ねぎと呼ばれているけど」
「そっか、ありがと」
ミルファリアの返事を聞き、タクマは食事の際にサイファ達にも聞いてみることにした。
「玉ねぎが玉ねぎと呼ばれるようになった時期? んだそりゃ?」
サイファは首を傾げる。それもそうだ。自分だってそんなことを聞かれれば首を傾げる。だが、気になってしまった以上、知りたいのだ。
「んなこと言われてもなあ……」
「玉ねぎは玉ねぎでしょ? え、私の年? 殴るわよ」
長寿と言われるエルフのアイシャに訊ねれば何かわかるかと思ったが、殴られそうになったのでやめた。何処の世界でも、女性に年齢を聞くのは駄目だと知った。
「主さん。主さんなら、知ってるよな?」
タクマは黙々と食事を続けるフェリに視線を向ける。フェリは食事の手を止め「何故、気になる」と訊ねてきた。
「なんで、って……気になったから……」
「何故、気になった」
「そりゃあ、この世界が俺の世界と共通するところが多いから、何でかって気になったんだよ」
そうタクマが答えると、フェリは盛大に溜息を吐いた。何故、フェリは溜息を吐いたのだろうか。
「知ってどうする」
「え?」
思わぬ返しに、タクマは瞬きを一つする。そんなタクマに、フェリはもう一度同じ言葉を投げかけてきた。
「知ってどうすると言うんだ。そんなこと、些末なことだろう」
「逆に聞くけど、些末なことなら答えてくれてもいいだろ」
フェリの言葉にムッとして、タクマは反論する。フェリはじっとタクマを見つめ、再び溜息を吐いた。
「それは好奇心か」
今日のフェリはよく話すと思いながら、タクマは主の言葉に頷く。するとフェリは席を立ち、流し目でタクマを見た。
「好奇心はいずれ己を殺す。それを肝に銘じておけ」
そう言うと、フェリは部屋へと戻って行ってしまった。タクマはフェリの最後の言葉に憤慨する。
「何だよ。好奇心でもこの世界を知りたいって思うことの何処が悪いんだよっ」
「タクマ、落ち着いて」
ミルファリアに宥められながら、タクマは目の前の卵焼きをフォークでぶすりと突き刺す。斜め向かいで「あたしの卵が!」と叫ぶアイシャは放っておき、突き刺した卵焼きを口に放り込む。
「タクマ、落ち着きなさい」
今まで無言だったガイアスが、言葉を発する。
「ガイアスさんも、俺にお説教ですか?」
フェリの番として、彼も同じ意見なのだろうか。そう思い卵焼きを咀嚼し口を開くと、彼は首を横に振った。
「フェリの意見に賛同するつもりではないけれど、あの子は君を怒らせるつもりで言ったんじゃないよ」
「……」
確かに、そうかもしれない。でも、漸くこの世界に慣れてきたんだ。この世界で生きる以上、この世界のことをもっと知りたい。そう思うのはいけないことなのだろうか……。そう、思ってしまったのだ。
「あの子はコミュニケーションが苦手だからね……さっきも君にきつくあたった訳ではないんだ。そこはわかってくれ」
「……わかりました」
ガイアスの言葉に、素直に頷く。ガイアスは微笑むと、「さて」と言い椅子にきちんと座り直した。
「君の質問に答えようか」
「……え?」
まさか、答えてくれるとは思わず目を見開くタクマ。ガイアスは「ん?」と言い首を傾げた。
「君は知りたいんだろう?」
「いや、でも……知ってるんですか?」
タクマだけでなく、他の三人も同様の態度だ。ガイアスはそんな四人に、にこりと微笑んだ。
「好奇心は確かに度が過ぎれば危険なものにもなるだろう。でも、それを私は否定しないよ。好奇心は良いことだ」
ガイアスはそう言い、語り始める。この世界の疑問を。この世界の成り立ちを。
例えば食材だ。日本名の食材が山のように存在する。というより、『日本のもの』が多い印象だ。例えば玉ねぎ。俺が住んでいた世界だと、当たり前だが使う言語が違うように国ごとに呼び名が違う。だが、この世界では玉ねぎという名で存在している。味も見た目も、そのまんま玉ねぎだ。他にも、同様に日本名で存在する食材が数多く存在している。何故だ?
最初は「自分の世界との共通点しているんだ」なんて呑気に考えていたが、この世界に来てもうすぐ一月が経つ。自然と周りに目を向けることが出来るようになってきたからか、些細な疑問が湧いてくるようにもなってきた。
「この世界で、玉ねぎが玉ねぎと呼ばれるようになった時期……?」
食事の用意をしつつ、何気なくミルファリアに訊ねてみる。ミルファリアは考え、悩み、言葉を捜しているようだった。
「私がもの心つく時から、玉ねぎと呼ばれているけど」
「そっか、ありがと」
ミルファリアの返事を聞き、タクマは食事の際にサイファ達にも聞いてみることにした。
「玉ねぎが玉ねぎと呼ばれるようになった時期? んだそりゃ?」
サイファは首を傾げる。それもそうだ。自分だってそんなことを聞かれれば首を傾げる。だが、気になってしまった以上、知りたいのだ。
「んなこと言われてもなあ……」
「玉ねぎは玉ねぎでしょ? え、私の年? 殴るわよ」
長寿と言われるエルフのアイシャに訊ねれば何かわかるかと思ったが、殴られそうになったのでやめた。何処の世界でも、女性に年齢を聞くのは駄目だと知った。
「主さん。主さんなら、知ってるよな?」
タクマは黙々と食事を続けるフェリに視線を向ける。フェリは食事の手を止め「何故、気になる」と訊ねてきた。
「なんで、って……気になったから……」
「何故、気になった」
「そりゃあ、この世界が俺の世界と共通するところが多いから、何でかって気になったんだよ」
そうタクマが答えると、フェリは盛大に溜息を吐いた。何故、フェリは溜息を吐いたのだろうか。
「知ってどうする」
「え?」
思わぬ返しに、タクマは瞬きを一つする。そんなタクマに、フェリはもう一度同じ言葉を投げかけてきた。
「知ってどうすると言うんだ。そんなこと、些末なことだろう」
「逆に聞くけど、些末なことなら答えてくれてもいいだろ」
フェリの言葉にムッとして、タクマは反論する。フェリはじっとタクマを見つめ、再び溜息を吐いた。
「それは好奇心か」
今日のフェリはよく話すと思いながら、タクマは主の言葉に頷く。するとフェリは席を立ち、流し目でタクマを見た。
「好奇心はいずれ己を殺す。それを肝に銘じておけ」
そう言うと、フェリは部屋へと戻って行ってしまった。タクマはフェリの最後の言葉に憤慨する。
「何だよ。好奇心でもこの世界を知りたいって思うことの何処が悪いんだよっ」
「タクマ、落ち着いて」
ミルファリアに宥められながら、タクマは目の前の卵焼きをフォークでぶすりと突き刺す。斜め向かいで「あたしの卵が!」と叫ぶアイシャは放っておき、突き刺した卵焼きを口に放り込む。
「タクマ、落ち着きなさい」
今まで無言だったガイアスが、言葉を発する。
「ガイアスさんも、俺にお説教ですか?」
フェリの番として、彼も同じ意見なのだろうか。そう思い卵焼きを咀嚼し口を開くと、彼は首を横に振った。
「フェリの意見に賛同するつもりではないけれど、あの子は君を怒らせるつもりで言ったんじゃないよ」
「……」
確かに、そうかもしれない。でも、漸くこの世界に慣れてきたんだ。この世界で生きる以上、この世界のことをもっと知りたい。そう思うのはいけないことなのだろうか……。そう、思ってしまったのだ。
「あの子はコミュニケーションが苦手だからね……さっきも君にきつくあたった訳ではないんだ。そこはわかってくれ」
「……わかりました」
ガイアスの言葉に、素直に頷く。ガイアスは微笑むと、「さて」と言い椅子にきちんと座り直した。
「君の質問に答えようか」
「……え?」
まさか、答えてくれるとは思わず目を見開くタクマ。ガイアスは「ん?」と言い首を傾げた。
「君は知りたいんだろう?」
「いや、でも……知ってるんですか?」
タクマだけでなく、他の三人も同様の態度だ。ガイアスはそんな四人に、にこりと微笑んだ。
「好奇心は確かに度が過ぎれば危険なものにもなるだろう。でも、それを私は否定しないよ。好奇心は良いことだ」
ガイアスはそう言い、語り始める。この世界の疑問を。この世界の成り立ちを。
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