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12 あなた、最低よ
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リビングのドアが開かれ、皆の視線が一点に集まる。そこに居たのは、帰った筈のフィーリアだった。後ろから慌てて両親が追いかけてきて、フィーリアの手を掴もうとする。だが、それよりも早く、フィーリアは声高らかに言葉を発した。
「その人が欲しい!」
何を言っているの? ティファニアを始め、全員が呆気に取られる。だが、そんな周りにお構いなしに、フィーリアはティファニアの前までくると、隣に居るイグニスを一瞥し、ティファニアに振り返った。
「お姉さまの婚約者なのでしょう? なら私に譲って!」
何を言っているのか、わからない。いや、わかりたくない。そもそも、フィーリアには私から奪ったアーデルがいるじゃない。震える唇をなんとか動かし、ティファニアは言葉をかける。
「フィーリア、何を言っているの? あなたにはアーデルがいるでしょう?」
そう言うと、フィーリアは唇に指を当て、うーん……と悩みだす。そして、にっこりと笑みを浮かべながら言葉を発した。
「代わりにアーデルさまを返すわ! だって、まだ好きなのでしょう?」
その言葉には、後ろにいるアーデルもリビングのドアのすぐ側にいる両親も、顔を青褪め言葉が出なかった。
「いい加減にして! 彼らは物ではないのよ!?」
「お姉さま、何故そんなに怒っているの? 私にはわからないわ」
怒りを露わにするティファニアを前に、フィーリアは何故怒っているのか本当にわからないのか、首を傾げるばかりだ。それ所か、ティファニアに詰め寄って不機嫌を露わにする。
「そんなことより! 姉なんだから妹が欲しがってるものは譲ってよ!」
逆ギレもいいところだ。私のものは何でも欲しがったフィーリア。まさかここまで酷いとは思わなかった。
「フィーリア……あなた、最低よ」
声を押し殺しながら、ティファニアは一言だけ告げた。
「フィーリア」
ふと、今まで傍観していたアーデルがフィーリアに話しかけた。フィーリアは微笑みながら、アーデルに振り替える。
「なんですか?」
「……君は、ティファニアのものならば何でも欲しがるのかい?」
そう、怒りを押し殺したような声で訊ねるアーデル。そんな彼の変化に気付くことなく、フィーリアはにこやかに「ええ!」と答えた。
それを聞いて、深く深呼吸すると、アーデルはリビングの出入り口にいる両親に振り向いた。
「フィーリアとの婚約を破棄します」
「な、何をいいだすんだね!?」
動揺する父に、アーデルは言葉を続ける。
「男でも強姦は成立します。体の関係を持ってしまった以上、仕方なく婚約に同意しましたが、薬を盛られて無理矢理強要されたことは事実です。このことを両親に報告し、然るべき措置を取らせていただきます」
言い放たれた言葉に、愕然とする両親。まさかフィーリアが薬を使ってまで事に及んでいたとは、露にも思わなかったのだろう。顔が青褪めていく両親を余所に、ティファニアに向き直るアーデル。彼の表情は、にこやかだった。
「さようなら、ティファニア。どうか幸せに」
そう告げられ、ティファニアは小さく微笑み、「さようなら、アーデル」と返事をする。
微笑むアーデルは、両親の横を通り過ぎ、静かに去って行った。
「その人が欲しい!」
何を言っているの? ティファニアを始め、全員が呆気に取られる。だが、そんな周りにお構いなしに、フィーリアはティファニアの前までくると、隣に居るイグニスを一瞥し、ティファニアに振り返った。
「お姉さまの婚約者なのでしょう? なら私に譲って!」
何を言っているのか、わからない。いや、わかりたくない。そもそも、フィーリアには私から奪ったアーデルがいるじゃない。震える唇をなんとか動かし、ティファニアは言葉をかける。
「フィーリア、何を言っているの? あなたにはアーデルがいるでしょう?」
そう言うと、フィーリアは唇に指を当て、うーん……と悩みだす。そして、にっこりと笑みを浮かべながら言葉を発した。
「代わりにアーデルさまを返すわ! だって、まだ好きなのでしょう?」
その言葉には、後ろにいるアーデルもリビングのドアのすぐ側にいる両親も、顔を青褪め言葉が出なかった。
「いい加減にして! 彼らは物ではないのよ!?」
「お姉さま、何故そんなに怒っているの? 私にはわからないわ」
怒りを露わにするティファニアを前に、フィーリアは何故怒っているのか本当にわからないのか、首を傾げるばかりだ。それ所か、ティファニアに詰め寄って不機嫌を露わにする。
「そんなことより! 姉なんだから妹が欲しがってるものは譲ってよ!」
逆ギレもいいところだ。私のものは何でも欲しがったフィーリア。まさかここまで酷いとは思わなかった。
「フィーリア……あなた、最低よ」
声を押し殺しながら、ティファニアは一言だけ告げた。
「フィーリア」
ふと、今まで傍観していたアーデルがフィーリアに話しかけた。フィーリアは微笑みながら、アーデルに振り替える。
「なんですか?」
「……君は、ティファニアのものならば何でも欲しがるのかい?」
そう、怒りを押し殺したような声で訊ねるアーデル。そんな彼の変化に気付くことなく、フィーリアはにこやかに「ええ!」と答えた。
それを聞いて、深く深呼吸すると、アーデルはリビングの出入り口にいる両親に振り向いた。
「フィーリアとの婚約を破棄します」
「な、何をいいだすんだね!?」
動揺する父に、アーデルは言葉を続ける。
「男でも強姦は成立します。体の関係を持ってしまった以上、仕方なく婚約に同意しましたが、薬を盛られて無理矢理強要されたことは事実です。このことを両親に報告し、然るべき措置を取らせていただきます」
言い放たれた言葉に、愕然とする両親。まさかフィーリアが薬を使ってまで事に及んでいたとは、露にも思わなかったのだろう。顔が青褪めていく両親を余所に、ティファニアに向き直るアーデル。彼の表情は、にこやかだった。
「さようなら、ティファニア。どうか幸せに」
そう告げられ、ティファニアは小さく微笑み、「さようなら、アーデル」と返事をする。
微笑むアーデルは、両親の横を通り過ぎ、静かに去って行った。
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