回り道した1つの愛

樺純

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4話

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エマside

ジュンが帰ったあと部屋の掃除や洗濯をして過ごしていると、慌ただしくスマホが鳴り響いた。


そして、私はスマホの液晶に表示されている名前をみて大きなため息をつく。


しかし、その着信を取らなければ後々、私はもっと大変な事になると思い恐る恐る着信をとった。


*「もしもし…」

「このバカ姉!!!!なに勝手に人のタバコの銘柄変えてんだよ!!」


鼓膜が破れそうなほどの大声で怒鳴り散らしているのは可愛い可愛い私の実の弟…キヨト。


*「キヨト…ごめん…」

K「あのさ?自分の浮気がバレるのが怖いからって弟を使うか普通!?」


怒らせるとヤバいのはよく知っている…

私がいつもキヨトを怒らせてる張本人だから。


*「だって…キヨト以外にタバコ吸ってる知り合いいないし…」

K「こんなこと言いたくないけどさ?いい加減はっきりしろよ。いつまでもテルキくんとジュンくんの間をふらふらして。我が姉ながらマジで最低女だわ。」


そんなことキヨトに言われなくても自分自身が1番よく知ってる。


なのにこの関係にケジメがつけれないのは、決断を下した時点でテルキもジュンも私の元から離れてしまうんじゃないかと、自分の事だけを考えてしまうような最低な女だから。


*「ごめん…」

K「とりあえず、ジュンくんには上手く話し合わせておいたから。で、テルキくんは変わらず前のヤツと同じの吸ってんの?」

*「うん…」

K「なら、ジュンくんと会う時はそれで合わせておくわ。あ…あとさ?ユマねぇと最近連絡とってる?」

*「取るわけないじゃん…」

K「だな。まぁ~ほんと馬鹿な姉を持つと弟が苦労するわ!!ちょっとはユマねぇを見習えよ!!じゃ、そういうことで!!」

*「ありがとう…バイバイ…」


唯一、私とテルキとの関係を知っていて、私とユマの橋渡しをしようとするのが実の弟であるキヨトというのが申し訳ないのだけれど…


同じ大学に2年あとに入学してきたキヨトはテルキやジュンとも仲が良く、ジュンはいつも文句を言いながらも、上手く話を合わせてくれるから私は可愛い弟につい頼ってしまうんだ。


私は1人寂しく休日を過ごし、日も落ち始めた頃、メールが届いた。


【メール:クマちゃん】
YES or NO


「クマちゃん」


それはもし万が一、ジュンにスマホを見られてもその相手がテルキだと言うことがバレないように私がつけたテルキの別名。


そして、テルキはメールでいつもYESかNOだけいつも送ってきて、これは今から行っていいのかどうかというメッセージだ。


【メール:エマ】
YES


そう返事をすれば10分ほどで来たことを知らせるインターホンがなる。


私は軽い足取りで玄関に向かうとニコッと笑うテルキが立っていた。


T「来ちゃった。」

*「どうぞ。」


私がそう言えばテルキはギュッと私の後ろから抱きしめて肩に顎を乗せ、そのまま靴を脱いでヨイショヨイショと掛け声をしながら部屋の中へ入っていく。


*「歩きにくいでしょ?w」

T「いいじゃん別にw」


ヨタヨタとテルキにギュッと後ろから抱きしめられたままリビングに向かい、ソファに座ると少し不思議そうにテルキは私の顔を覗き込む。


T「なんかあった?」


いつも通りにしてるつもりだったのにテルキは私の些細な変化にいつも気付いてしまう。


*「ないよ。」

T「あぁ~分かった~朝、俺が勝手に帰ったの怒ってんだ?ごめんね?急に仕事呼び出されて慌てて行ったから…」

*「怒ってないから…」

T「じゃ、どうしたんだよそんな顔して。」


テルキは私のほっぺを優しくつねり顔を覗き込む。


*「テルキさ…ユマと上手くいってるの?」


ジュンにバレたかもしれないとなかなか言い出すことのできない私は、テルキとユマの今の関係に探りをいれるずるい女。


T「急になに?俺とユマのこと聞くなんて。」


テルキは私と目を合わせる事なく、微かに鼻で笑いながらそう言った。


*「うまくいってるのかな…と思って。」

T「そんなことエマに関係ねぇだろ?」


さっきまで優しい顔をしたテルキはいなくなり、私の目の前にいるテルキはイライラと貧乏ゆすりをし始めた。


*「ごめん…」

T「マジでなんなの?嫌な気分になりたくないんだけど?言いたい事あるならはっきり言えよ…」

*「ないって…ごめん…」


私はグッと自分の本音を隠すようにテルキの身体にギュッと抱きつく。


T「ってかさ?俺が帰ってからジュン…来たんだ?」

*「え…?」


テルキの視線を辿るとジュンが大学の時から着けている腕時計がソファの横にあるサイドテーブルに置いてあった。

いつの間に…


*「あぁうん…すぐ帰ったけどね…」

T「シて帰ったの?」

*「え?シてないし…本当にすぐ帰ったんだって…」

T「じゃなんで腕時計外してんの?すぐ帰ったのに腕時計外すっておかしいじゃん。」

*「本当だってば!!」

T「……はぁ…ごめん…。」


テルキは自分の頭を荒っぽく掻くと、軽く私の肩を押して離れ、そのままタバコを持ってベランダへと出て行った。


本当なのに…


私はベランダの扉の前でしゃがんでテルキが部屋の中に入ってくるのをジッと待つ。


カラカラっと音を立てて入ってきたテルキはしゃがむ私を見下げてタバコとライターをソファに投げた。


T「俺が悪かった…。エマとジュンがそう言うことしても俺には責める権利なんてないのに…ごめん…どうかしてた…。」


テルキはそう言って私に手を差し出し、引き揚げるように立たせると私の腰に手を回してギュッと抱きしめる。


*「本当にシてないんだってば…」

T「ふふふw もう、分かったから…でも、今から確認する…エマの言ったことが本当か…嘘か…」


テルキはいつもの優しい顔に戻り、私の唇に啄むようにチュッ…チュッとキスを落とす。


私はそのキスに弱い。


テルキにキスをされただけで全身が熱く火照り疼きだすから。


テルキは私のシャツの中に手を入れて背中を撫でながらベッドへと移動する。


ベッドに着く頃にはもう、私のシャツは脱がされていて、私がベッドに倒れ込むとテルキがブラの上から顔を埋め、私の呼吸は早くなり心臓が煩くなる。


*「くすぐったい…」

T「可愛い…」


テルキはイタズラに笑い、私のホックを外して自分のパーカーも脱ぎ捨て、私はテルキの気が済むまで抱かれ続けるんだ。

抱かれ疲れた重い身体を撫でながら、テルキを起こさないようにベッドを降り服を着替えてキッチンに立つ。


*「おはよう。」

T「ん~おはよう~!!」


朝ご飯のサンドイッチを作っていると、寝起きのテルキが背伸びをしてあくびをしながらリビングのソファに座る。


*「ホットココアでいい?」

T「んー。ねぇ、俺結局昨日泊まっちゃったけどさ?今日、ジュンと会わないの?」


テルキは寝起きの一服と言わんばかりにタバコに火をつけて、テルキのためだけにある灰皿にそっと灰を落とす。


*「え?今日?私は休みだけどジュンは仕事なんじゃない?会う約束とかはしてないけど…なんで?なんか言われた?」

T「いや…そうじゃないけど…今日、エマの誕生日じゃん…?」


そう言われて自分の誕生日にハッと気づく。


自分でも忘れてたのにテルキは私の誕生日を覚えてくれていたんだ…それがつい嬉しくて口元が緩んでしまう。


*「誕生日だって事…忘れた。」

T「自分の誕生日忘れるとか相変わらずマヌケ~」

*「テルキにだけは言われたくありませーん!!」


ソファに座るテルキの前にサンドイッチを出すと、慌ててタバコを消して私の顔の前にグイっと顔を近づけてくる。


*「な…何よいきなり…近いんだけど…」

T「誕生日おめでとう…幸せになれよ…」


テルキはそう言って私の唇に啄むようなキスをした。


幸せになれよ…


その言葉がどこか第三者の言葉のようで私の胸は痛む。


*「ありがとう…」

T「そんな顔するなって。まぁ彼氏のジュンじゃなくて俺にお祝いされても嬉しくないよな。」

*「そんな事ないし!嬉しいし!ジュンは忙しいから私の誕生日なんて忘れてるよ。」

T「あのサプライズ大好きなジュンが?んなわけないだろ。」

*「本当に会う約束もしてないんだって。だから私は1人寂しく~洗濯して~掃除して~買い物して~平凡な誕生日を過ごすんですよ~」


私は少しふざけながらそう言ってサンドイッチを口の中に放り込んだ。

つづく
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