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86話

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ジョウキside

俺はハヤセくんの話を聞いているうちに気づいたらスタジオまで走っていた。

だから、あの時監督の名前を聞いてからアナの様子がおかしかったんだ。

息を切らしながらスタジオに入るとスタッフが俺たちに挨拶をし、俺とトウヤくんは軽く頭を下げ息を整えながらセットの方へと歩いていく。

そして、セットの中にふと目をやると監督がアナの手首を掴み、だらしない体をアナにくっ付けていた。

なにやってんだあいつ!

俺が怒りから駆け寄ろうとしたその時!

アナが大きな声で叫んだ。

A「離して!!気持ち悪い!」

アナが腕に力を込め振り払おうとしたその瞬間、監督はイタズラに手首をパッと離し、バランスを崩したアナは後ろの本棚にぶつかり床に倒れ込んだ。

そして、鈍い音の方を見ると本棚がユラユラと揺れてアナの方へ倒れてくるではないか!!

J「危ないっ!!!アナ…!!」

俺の大声が響き渡りアナの方へと走り出そうとした瞬間、俺よりも先にアナの元へ駆け寄るトウヤくんの背中が走馬灯のように見えた。

がしかし、トウヤくんはわずかに間に合わず、重い本棚は小さなアナの体の上に大きな音を立てて倒れこんだ。

俺は呆然とし…その場に立ちすくむ…

スタジオはただならぬ雰囲気になり、スタッフの叫び声や救急車を呼べという叫び声が響き渡る。

トウヤくんは必死にアナを隠してしまった本棚を一人で動かそうとしていた。

俺はその姿をみて我に返り、慌ててアナの元へと行きトウヤくんと一緒に本棚を持ち上げようとした。

しかし…セットにもこだわった俺たちの提案で置いたアンティークの本棚は想像よりもはるかに重い。

J「誰か!!早く手を貸してくれ!!」

俺の言葉でスタッフが駆け寄り、男5人でやっとその本棚は動きアナの姿が見えた。

横に本棚を移動させるとアナが青白い顔をして横たわっている。

マジかよ…嘘だろアナ…

頼むよ…目を開けてくれよ…

気づけば俺の全身が震え出していた。

T「アナ!アナ!」

トウヤくんがアナの耳元で呼びかけるが反応がなくグッタリとしている。

J「おいっ!救急車はまだかよ!!」

俺はアナにジャケットをそっと掛け、出血しているおでこにタオルを押し付けて止血した。

すると事態を聞きつけたメンバーが駆け寄り、取り乱したユナがアナに抱きつこうとするのを俺は止めた。

Y「アナ!!?アナ…!!」

J「ユナ!頭打ってるかもしれないから動かしちゃダメだ!」

ユナはその場で泣き崩れ、マハロくんがユナに寄り添い体を支えた。

スタッフ「救急車が到着しました!!」

その声と同時に救急隊員が到着しそのままアナは病院へと運ばれた。

そして問題の監督は気づいた時にはもうこの場にはいなかった。


つづく
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