二人の王子様はどっちが私の王様？

159話

アナside

冷静に話すヒスイの声が頭の中で響き、うまく理解しようとしても…できない。

私…このままだと死んじゃうの？

取り戻した記憶がまたなくなるの…？

記憶障害？身体に障害？

身体が震えるような言葉ばかりが並んで頭がパニックになる。

その時、頭の中にジョウキが一瞬浮かんだ。

もしかして、昨日みたあの悲しい夢はもしかして…夢じゃなかった？

ジョウキに好きな人ができたってのは…現実なの…？

そう思うと心が押しつぶされるようで息の仕方さえもわからなくなりそうだった。

ジョウキがいないのにこのまま生きたとしても私には一体、何が残るんだろう…？

大切なジョウキやみんなとの想い出がもし、なくなってしまったら…私は何を糧にして生きていくだろ？

記憶がなくなる事の寂しさや孤独は私が1番知っている。

それをまた、味わうのかもしれないと思ったらどうしようもない恐怖に襲われた。

ジョウキがいない人生なんてなんの意味があるのだろうか…

それならばいっそこのまま…私は震えながらそう思った。

A「しない…」

「え…？」

A「手術しないから…」

私の言葉にヒスイは一体、何を思っただろう？

ヒスイの目は今までに見たことのない悲しい目をしていた。

自分で言った言葉でありながらそれが、本心なのかも分からない。

生きたい…生きたい…だけど…

頭の中が一気にかき乱されるようにぐちゃぐちゃになり、私は涙を流しながらベッドへ倒れ込んだ。

ふとテーブルに目をやるとそこにはお腹にJの文字が入ったウサギのキーホルダーが置かれてある。

私はゆっくりとそのキーホルダーを手にとりぎっと握りしめた。


つづく