6 / 22
6話
しおりを挟む朝
俺はいい匂いと共に目が覚めた。
重い体を起こし少し痛むお尻に昨日、起きた筋肉ウサギとのことは夢じゃなく現実だったんだと改めて思い知らされる。
眠い目を擦り目を開けると…
J「おはよう。朝ごはん作ったから食べよう。」
昨日、公園で拾い俺を散々犯した変態ウサギが俺のために朝ごはんを作ってくれていた。
T「ん……」
俺はヨタヨタと歩きお腹を掻きながらリビングに向かい座ると、綺麗に焼かれた目玉焼きとトースト、そして俺の大好きなホットココアが出された。
T「なんで俺がホットココア好きって知ってんの!?」
J「これしかなかったら。」
T「あ……なるへそ……」
俺が思っていたよりもこの変態ウサギは色々と出来る男なのかもしれない。
俺のために朝からご飯を作ってくれるのだから(単純)
しかし、俺はパンの耳が硬くて嫌いだ。
綺麗に隅々まで塗られたバタートーストの耳を指でちぎっていると、ジレンは大きな口を開けてパンを食べながらそれをチラッと見る。
J「そんなことしたらパンの耳がもったいない。」
T「じゃ、ジレンが食べれば~」
俺がそう言ってジレンの皿にパン耳を入れると、ジレンは少し呆れたような顔をしてパンの耳をもぐもぐと口の中に放り込む。
J「俺のご主人様は見た目よりお子ちゃまですね。」
ジレンはそう言ってなに食わぬ顔でトーストを食べてるので、俺は横でイーッ!!となりながら朝食を食べた。
朝食を終え俺が洗い物をしているとジレンが部屋の中を行ったり来たりして何かを探している。
T「なに探してんの?」
J「俺のネックレス…ウサギの姿だった時、俺の身体に巻きついてなかった?」
T「あぁ…箱の中に落ちてたからポケットに入れて持って帰ってきたよ。お風呂場にある服のポケットだ。」
ジレンにそう言うとジレンはお風呂場へと向かい、俺は洗い物を終え手を拭き、自分のアクセサリーケースからチェーンを取り出した。
T「あった?」
J「うん。」
ジレンが持ってきたネックレスからプレートを取り外し、俺のチェーンに付けて俺は向かい合ってジレンの首に手を回しネックレスをつける。
T「チェーンの留め金が壊れてたみたいだから取れちゃったんだろうね。」
そう話しながらジレンにネックレスを付けようとするが、うまくネックレスが付けれなくて手間とっていると、ジレンはクンクンと俺の首筋の匂いを嗅ぎ…背中やらお尻やらに手を這わせて笑っている。
T「おい!そんなことされたらくすぐったくて余計に付けられないだろ!!」
J「だってタケルくんいい匂いなんだもん。」
スーッと俺の脇腹を撫でて、慣れた手つきで俺のTシャツに手を忍び込ませるジレンに集中出来ず、ネックレスが付けられない俺はイライラして諦めた。
T「もう自分で付けろ。」
少し離れてジレンにそう言うとジレンは俺の顔を覗き込むようにして言った。
J「俺ウサギだからネックレスなんて付けられないよーーーーだ。」
チュッと俺の唇を掬い上げるようなキスに俺は顔が熱くなり、気まずくて視線を逸らすとジレンは笑う。
J「昨日、何度もキスしたのになんで今更そんな顔すんの。」
T「なんかむかつく!!なんなんだよ!?ウサギの世界からしたらキスなんて挨拶なのかもしれないけど!!俺にしたらキスは!!」
J「特別だよ?」
T「え?」
J「俺だってキスは特別…ウサギの姿であっても人間の姿であっても…誰にでもしてるわけじゃないよ?しかも昨日…俺に先にキスしたのは…そっちだからね?」
そう言ってジレンは俺の腰を引き寄せ深い口付けを落とす。
俺から…キス…したっけ?
ジレンの言葉を聞いて俺はジレンのキスに溺れそうになりながら昨日のことを思い出す。
仕事終わりに買い物に行ってジレンを見つけてジレンを抱き上げた…
そして俺の家に来るかと聞いて…
キス…
したわ…
全部俺から誘ってるわ…
俺の瞼はジレンのキスに集中する様にそっと閉じられ、ジレンのキスに応えてしまう。
頭ではダメだと分かっているのに身体が言うことを聞かず、ジレンの手の動きにピクピクと反応してしまう。
俺がジレンのTシャツをギュッと掴むと、ジレンは俺から離れてニコッと笑うが、それすらももどかしくて俺は自らジレンの頭を引き寄せジレンの唇を塞いだ。
唇を重ねるその音は次第に激しくなり、俺の芯が疼き出すのにジレンは息をするタイミングで俺からのキスを避けた。
J「彼女……いるんじゃないの?」
ジレンは笑いながら意地悪な顔をして俺にそう問いかけるが、俺は昨日、味わったばかりの快感を思い出し、ジレンの頬をなでまた唇を重ねようとしたその瞬間…
ピンポーン
俺たちの甘い時間を邪魔する音が入った。
つづく
5
あなたにおすすめの小説
死に戻り騎士は、今こそ駆け落ち王子を護ります!
時雨
BL
「駆け落ちの供をしてほしい」
すべては真面目な王子エリアスの、この一言から始まった。
王子に”国を捨てても一緒になりたい人がいる”と打ち明けられた、護衛騎士ランベルト。
発表されたばかりの公爵家令嬢との婚約はなんだったのか!?混乱する騎士の気持ちなど関係ない。
国境へ向かう二人を追う影……騎士ランベルトは追手の剣に倒れた。
後悔と共に途切れた騎士の意識は、死亡した時から三年も前の騎士団の寮で目覚める。
――二人に追手を放った犯人は、一体誰だったのか?
容疑者が浮かんでは消える。そもそも犯人が三年先まで何もしてこない保証はない。
怪しいのは、王位を争う第一王子?裏切られた公爵令嬢?…正体不明の駆け落ち相手?
今度こそ王子エリアスを護るため、過去の記憶よりも積極的に王子に関わるランベルト。
急に距離を縮める騎士を、はじめは警戒するエリアス。ランベルトの昔と変わらぬ態度に、徐々にその警戒も解けていって…?
過去にない行動で変わっていく事象。動き出す影。
ランベルトは今度こそエリアスを護りきれるのか!?
負けず嫌いで頑固で堅実、第二王子(年下) × 面倒見の良い、気の長い一途騎士(年上)のお話です。
-------------------------------------------------------------------
主人公は頑な、王子も頑固なので、ゆるい気持ちで見守っていただけると幸いです。
楽な片恋
藍川 東
BL
蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。
ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。
それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……
早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。
ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。
平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。
高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。
優一朗のひとことさえなければ…………
すみっこぼっちとお日さま後輩のベタ褒め愛
虎ノ威きよひ
BL
「満点とっても、どうせ誰も褒めてくれない」
高校2年生の杉菜幸哉《すぎなゆきや》は、いつも一人で黙々と勉強している。
友だちゼロのすみっこぼっちだ。
どうせ自分なんて、と諦めて、鬱々とした日々を送っていた。
そんなある日、イケメンの後輩・椿海斗《つばきかいと》がいきなり声をかけてくる。
「幸哉先輩、いつも満点ですごいです!」
「努力してる幸哉先輩、かっこいいです!」
「俺、頑張りました! 褒めてください!」
笑顔で名前を呼ばれ、思いっきり抱きつかれ、褒められ、褒めさせられ。
最初は「何だこいつ……」としか思ってなかった幸哉だったが。
「頑張ってるね」「えらいね」と真正面から言われるたびに、心の奥がじんわり熱くなっていく。
――椿は、太陽みたいなやつだ。
お日さま後輩×すみっこぼっち先輩
褒め合いながら、恋をしていくお話です。
染まらない花
煙々茸
BL
――六年前、突然兄弟が増えた。
その中で、四歳年上のあなたに恋をした。
戸籍上では兄だったとしても、
俺の中では赤の他人で、
好きになった人。
かわいくて、綺麗で、優しくて、
その辺にいる女より魅力的に映る。
どんなにライバルがいても、
あなたが他の色に染まることはない。
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
抱けない東くんと抱かれたい西くん
橋元 宏平
BL
受けを大事にしすぎるあまり、抱けなくなってしまった攻め
VS
攻めに抱かれたくて頑張ったのに、盛大に空回りしてしまう受け
幼馴染みの歳の差カップルが、お互いに好きすぎるあまり、空回りしちゃうラブコメディ。
攻めは33歳、受けは21歳。
ふたりとも、努力の方向音痴。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
本当に悪役なんですか?
メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。
状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて…
ムーンライトノベルズ にも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる