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5話
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夕食を終えた私は身支度をして王様の待つ部屋へと向かう。
鈴の音が鳴り…
王様の待つ部屋へと入るとそこには真っ白な布団に枕が2つ並んでいた。
目の当たりにしたその現実に思わず私はたじろぐ。
「どうした?」
王様の低く響く声がまるで私を追い詰めるような感覚になり手が震えだす。
そして、私は足元がふらつき…
そのままバタンっと大きな音を立ててその場に座り込みジラが慌てて私の横に来た。
「触るな!!その者に…触るな…」
王様は突然、そうジラに叫ぶとジラの動きはピタっと止まり、王様のお付きであるニカヤが難しい顔をしてジラを睨みつけた。
すると、王様が私のそばにまで来てそっと優しく私の腕を掴んだ。
「大丈夫か?」
T「はい…」
王様に支えられながら部屋に入ると、ジラはチラッと私の方を確認するように見つめ、王様のお付きであるニカヤはジラの視線を遮るようにそっと扉を閉め出て行った。
ろうそくの火がゆらゆらと揺れ、私はゆっくりと王様の手によって座らされると、王様はそっと私を包み込むように抱きしめた。
その温もりが今朝まで感じていた温もりと違うことに私は涙が溢れ震えだす。
王様は私の涙に気づくとそっと親指で私の涙を拭いた。
「許してくれ…俺をどうか…許してくれ…」
そう言った王様を見上げると王様の目にも涙が揺らいでいて、驚いた私は思わず王様の胸を突き飛ばし離れた。
ハッと我に返った私は手をつき王様に頭を下げる。
T「…王様…大変申し訳…ございません…」
「かまわん…」
王様はそう言うと自ら布団の中へと入る。
私はじっと見つめていると王様は鼻で笑いながら言った。
「朝までそこに座ってるつもりか?風邪引くぞ…」
そう言われた私は仕方なく…
震える身体で距離を取りながら王様と同じ布団の中へと入った。
王様にグイッと抱き寄せられた私は弾みで王様の胸の中に顔を埋める。
「ユラトと…呼んでくれ…」
王様は私を包み込み震えた声でそう言った。
T「え…?」
Y「俺の名だ。王様ではなく…俺の名はユラトだ…」
T「ユラト様…」
私がそう呼ぶと王様は目を閉じたまま微笑み私を抱きしめ直した。
そっと私のおでこに唇を押し当て優しく何度も何度も私の頬を撫でると、王様の目は悲しそうに影を落とす。
私の脳裏にはコハクの顔が見え隠れし、思わず耐えかねて目を閉じると王様は私の首筋に顔を埋めた。
そっと身体をなぞるように撫でられるその手はコハクとは違いか細い。
私の目尻からは涙が伝い落ちると…
その手はピタッと…止まった。
「すまない…」
王様はそう呟き、私がゆっくりと目を開けると王様は私から目を逸らし私に背を向けて眠った。
私はそんな王様に驚いたものの…
抱かれなかった事にほっと胸を撫で下ろした。
その夜から私は毎晩のように王様の元に呼ばれたが王様が私を抱く事は一度もなかった。
王様はただ、たまにギュッと私を抱きしめては何かを考え込み…名を呼んでくれそう呟く。
そして、どこかに埋めることの出来ない虚しい感情と向き合うようにいつも寂しそうな目をしていた。
つづく
鈴の音が鳴り…
王様の待つ部屋へと入るとそこには真っ白な布団に枕が2つ並んでいた。
目の当たりにしたその現実に思わず私はたじろぐ。
「どうした?」
王様の低く響く声がまるで私を追い詰めるような感覚になり手が震えだす。
そして、私は足元がふらつき…
そのままバタンっと大きな音を立ててその場に座り込みジラが慌てて私の横に来た。
「触るな!!その者に…触るな…」
王様は突然、そうジラに叫ぶとジラの動きはピタっと止まり、王様のお付きであるニカヤが難しい顔をしてジラを睨みつけた。
すると、王様が私のそばにまで来てそっと優しく私の腕を掴んだ。
「大丈夫か?」
T「はい…」
王様に支えられながら部屋に入ると、ジラはチラッと私の方を確認するように見つめ、王様のお付きであるニカヤはジラの視線を遮るようにそっと扉を閉め出て行った。
ろうそくの火がゆらゆらと揺れ、私はゆっくりと王様の手によって座らされると、王様はそっと私を包み込むように抱きしめた。
その温もりが今朝まで感じていた温もりと違うことに私は涙が溢れ震えだす。
王様は私の涙に気づくとそっと親指で私の涙を拭いた。
「許してくれ…俺をどうか…許してくれ…」
そう言った王様を見上げると王様の目にも涙が揺らいでいて、驚いた私は思わず王様の胸を突き飛ばし離れた。
ハッと我に返った私は手をつき王様に頭を下げる。
T「…王様…大変申し訳…ございません…」
「かまわん…」
王様はそう言うと自ら布団の中へと入る。
私はじっと見つめていると王様は鼻で笑いながら言った。
「朝までそこに座ってるつもりか?風邪引くぞ…」
そう言われた私は仕方なく…
震える身体で距離を取りながら王様と同じ布団の中へと入った。
王様にグイッと抱き寄せられた私は弾みで王様の胸の中に顔を埋める。
「ユラトと…呼んでくれ…」
王様は私を包み込み震えた声でそう言った。
T「え…?」
Y「俺の名だ。王様ではなく…俺の名はユラトだ…」
T「ユラト様…」
私がそう呼ぶと王様は目を閉じたまま微笑み私を抱きしめ直した。
そっと私のおでこに唇を押し当て優しく何度も何度も私の頬を撫でると、王様の目は悲しそうに影を落とす。
私の脳裏にはコハクの顔が見え隠れし、思わず耐えかねて目を閉じると王様は私の首筋に顔を埋めた。
そっと身体をなぞるように撫でられるその手はコハクとは違いか細い。
私の目尻からは涙が伝い落ちると…
その手はピタッと…止まった。
「すまない…」
王様はそう呟き、私がゆっくりと目を開けると王様は私から目を逸らし私に背を向けて眠った。
私はそんな王様に驚いたものの…
抱かれなかった事にほっと胸を撫で下ろした。
その夜から私は毎晩のように王様の元に呼ばれたが王様が私を抱く事は一度もなかった。
王様はただ、たまにギュッと私を抱きしめては何かを考え込み…名を呼んでくれそう呟く。
そして、どこかに埋めることの出来ない虚しい感情と向き合うようにいつも寂しそうな目をしていた。
つづく
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