悲恋 (一部BL要素含む)

樺純

文字の大きさ
7 / 14

7話

しおりを挟む
ある日

私はあの夜の王様のことが気になり、次の日、ジラとニカヤが部屋の前からいなくなると王様に話を切り出した。


T「王様が王様じゃなかったら良かったのにな…」


いつものように私は笑いながらそう言うと王様は眉をクイッとあげてお酒を飲み干した。


Y「そんなこと…俺が今まで何度も思ったことだ…」


そう言ってまた、悲しそうな目をするから…


私は問いかけた。


T「なんで…私を選んだんですか?」


そう問いかけると王様は下を向いて少し苦笑いをする。


Y「俺を…憎んでるか?」

T「え?」

Y「想い人がいると知りながらお前を側室にしたこと…憎んでいるだろ?いいんだぞ…俺を憎め…」


そう言われて私の胸が痛むのはまだ、コハクのことが忘れられず毎晩のようにコハクを思い出しているから。


なのに何故か私は王様を憎みたくても不思議と憎むことなんて出来なかった。


T「憎んでないですよ…でもなんで私だったのかな…って…王様と私は…そういう事もしないのに…」


私がそう言うと王様は下を向いたまま悲し気に微笑み自分で酒を注ぐ。


Y「お前が羨ましいかったんだ…」

T「え?」

Y「あの男に愛しそうに見つめられ愛されているお前が羨ましかった…」

T「それだけで…私を選んだんですか…?」

Y「…そうだ…だから俺を憎めばいいんだよ。」


王様の身勝手で残酷な理由で私とコハクは別れ離れ離れとなったのに…


私は目の前にいるそんな王様に胸が痛くなり…なぜだか泣きたくなった。


T「ジナタさんとユラトさんは愛し合っていたんですね……」


突然、私が口にした名前に王様は固まり私の方を驚いた目で見つめた。


T「ユラトさんの愛するお方は…私と同じ町に住む島流しにされた…ジナタさんでしょ?」


私がそういうと王様は優しく微笑みながら頷いた。


Y「あぁ…そうだよ。」

T「やっぱり…」

Y「小さい頃…俺はよくこの王宮を抜け出して町へと遊びに出掛けたんだ…そこでジナタと俺は出会い…いつしかジナタも役人達の目を盗み王宮に忍び込むようになった…」

T「私もジナタさんから王宮に行ったことがあるとは聞いたことあるけど…ジナタさん忍び込んでたの…!?」

Y「あぁ…俺たちは性格は真逆だったけど気が合って一緒にいることが当たり前で居心地がよくて…同性だというのに愛し合ってしまった……それが大罪だというのに…」

T「大罪…」

Y「この国の王が同性を愛してしまっただなんて前代未聞。絶対にあってはいけない事。王宮の人間が必死で隠したがっている事実であり、王である俺が男を愛し子孫を残せないだなんて王族の血が途絶えてしまう。だから…ジナタは…」

T「ジナタさんと一緒になることを阻まれ別れさせられてたんだね…王宮の人たちに…」

Y「あぁ…。役人達は俺とジナタの関係を知った後、俺の知らない間にジナタを島流しの刑した…そして、女をあらゆる所からかき集め毎晩のように俺に抱かせようとした…でも、俺は抱くことが出来なくて…心が疲れ切った時にたまたまお前達を見かけて…俺は愛し合うお前たちを妬み…僻み…お前たちを…こんな目にあわせたんだ…だから俺のせいなんだよ…」


王様の悲しそうな目の理由がやっと分かった気がした…


ジナタさんを語る王様の目は今までに見たことないほど甘くて優しい。


この2人は心から愛し合っていたんだなと私は思った。


T「ユラトさんだって苦しんでるじゃん…ユラトさんはジナタさんじゃなきゃダメなんでしょ?私がコハクじゃなきゃダメなように…だからあの日の私とコハクに嫉妬したんでしょ…?」


私のその言葉に王様は答えることはなくただ申し訳なさそうに眉を下げ、微笑みながらお酒グイッと飲み…


私はそんな王様を見るとまるで、自分の事のように悲しく胸が痛かった。

つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

処理中です...